訓民正音
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全濁音字 - ?, ?, ?, ?, ?, ?

その他 - ?, ?(諺解本)


合用並書 - 異なる初声字母を2、3字並べること。当時の文献に現れる合用並書は以下の通り。通説では?系は硬音を、?系は二重子音を、?系は?+硬音の二重子音を表したと考えられている。

?系 - ?, ?, ?, (?)

?系 - ?, ?, ?, ?, ?

?系 - ?, ?



連書 - 唇音字の下に喉音字?を連ねること。唇が軽くしか触れずに発音される音を表す。実際の朝鮮語音の表記に使われたのは?のみであり、後は漢字音表記にしか使われなかった。また合字解には舌が軽くしか触れない?が設けられているが、実際に使われた例は見あたらない。

唇軽音字 - ? ? ? ?

(半舌軽音字 - ?)


中声

陰陽象形基本字初出字再出字
陽性天??, ??, ?
陰性地??, ??, ?
中性人?  


二字合用字 - ?, ?, ?, ?

?相合字

一字 - ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?

二字 - ?, ?, ?, ?


???声 - ?, ?)

このうち ?, ?, ?, ? の四字は『東国正韻』の漢字音表記に使われただけで、朝鮮語音の表記には使われなかった。また合字解に ? [j?], ? [j?] が設けられているが、国語で用いられることはなく、方言や子供の言葉に現れる場合があると書かれている。
終声

終声のためだけに別に字母が作られることはなく初声字がそのまま運用された。終声への字母の運用には以下の2つの相反する原則がある。

終声復用初声 - 例義篇に書かれている。2つの意味があり、制字上は初声字をそのまま用いて別に字母を作ることがないという原則であり、運用上はすべての初声字を終声に用いることができるという原則である。現在の
ハングル正書法はこれに従う。

8終声可足用 - 解例篇の終声解に書かれている。終声に用いる字母は?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?の8つで足りるという運用上の原則である。終声の音価に対して表音主義的な表記法であり、朝鮮語綴字法統一案1933年)以前はこちらが使われることが多かった。

なお合用並書には、?, ?, ?, ?, ?, ?が当時の文献に現れている。
合字

附書 - 初声字への中声字の付け方をいう。

下書法 - ?, ?, ?, ?, ?, ?は初声字の下に付す。

右書法 - ?, ?, ?, ?, ?は初声字の右に付す。


成音 - 1音節を表す1つの文字として組み立てること。

凡字必合而成音 - 例義に書かれている規則。すべての字母は他の字母と結合しなければ音を表さないという原則を表す。

初中終三声合而成字 - 解例の合字解に書かれている規則。初・中・終の3声が結合されて1つの字が作られるという原則を表す。なお終声字は初中を合わせた字の下に置かれた。終声が存在せず、音節が母音で終わる場合、終声字は省略されるのが通常であるが、『
東国正韻』の漢字表記では?が用いられた。


加点 - 傍点と呼ばれる点を字の左横につけ、声調(中国音韻学からの借用語であるが、中国語と違って中期朝鮮語においては高低アクセントを表したと考えられる)を表す。

声調傍点訓民正音性質合字解の例
平声なし安而和、春、万物舒泰低調?(弓)
上声二点和而挙、夏、万物漸盛低高調:?(石)
去声一点挙而荘、秋、万物成熟高調・?(刀)
入声一定せず促而塞、冬、万物閉蔵/?, ?, ?, ?/で短く終わる音節?(柱) : ?(穀) ・?(針)

歯頭音・正歯音を表す特殊字母

中国語漢字音の歯音には朝鮮語にない歯頭音(舌先と上歯茎で調音される歯音)と正歯音(舌先を下歯茎につけたまま盛り上げた舌と上歯茎で調音される歯音)の区別があった。『訓民正音』では歯音字の字形に差異を持たせることでこれを表記しようとした。この部分は諺解本にのみ言及があり、解例本には記載されていない。これらの字母は崔世珍の『四声通解』(1517年)で使用されている。訓民正音の歯頭音と正歯音の項目も参照。

歯頭音 - ?, ?, ?, ?, ?

正歯音 - ?, ?, ?, ?, ?

特殊字母

方言音や外来音を表記する場合には、以上のような制字原理に従わずに字母が組み合わされることがあった。中声字(母音)において陽母音と陰母音を組み合わせたり、短棒の数がちがうものを組み合わせることはできないが、その原則に反して?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?, ?といったものが使われることがあった。また外来語の子音表記において特殊な字母の組み合わせが作られる場合があり、古くは満州語の表記に?が使われたり、近代では英語の[f]や[v]を表すために?や?が使われたりした。
版本
解例本

解例があることから「解例本」と呼ばれる。解例本は1940年慶尚北道安東郡臥龍面周下洞李漢杰家で発見されたという経緯が最も知られているがこれにはなお異論がある。全?弼が旧蔵していたことより全氏本とも呼ばれた。

はじめの2帳が欠落しており、全?弼が購入する前にすでに世宗実録の記述などにより補写され復原されていたという。しかしながら、この補写にはいくつかの誤りが指摘されており、また、第8帳裏には落書きと見られる筆写がある。なお、この『訓民正音解例本』は1962年韓国の国宝第70号に指定され、1997年にはユネスコ世界の記憶に登録されている[8]

全33張1冊/木版本/横20 cm×縦29 cm/板匡 横16.8 cm×縦23.3 cm/本編7行11字、解例8行13字。現在は澗松美術館所蔵[9]

執筆 鄭麟趾、申叔舟、成三問、崔恒、朴彭年、姜希顔、李?、李善老[10]

解例本は長らくこの澗松美術館所蔵本のみが伝わってきたが、2008年に慶尚北道尚州市の骨董品店からの盗品として一冊が新たに発見された。しかし、2014年現在に至っても犯人の黙秘により本の所在は不明となっている。
異本(漢文のもの)
実録本
世宗実録の1446年9月の条に本文と鄭麟趾序が収録されている。
排字礼部韻略本
排字礼部韻略本
(1679年)巻5に本文が収録されている。
列聖御製本
李朝歴代国王の詩文集列聖御製(17世紀)の巻2に本文が収録されている。これは注記により、実録から写したものであることが分かる。
経世訓民正音図説本
経世訓民正音図説(17世紀)の冒頭に本文が収録されている。
諺解本

解例本の本編の部分に関し、漢文の原文を提示した後にそれを朝鮮語訳し諺文で提示した形式の書籍である。解例本の解例の部分は付いていないが、諺解本には本文の末尾に中国語音を表す字である歯頭音字と正歯音字についての記述が付け加えられている。
西江大本
1459年刊行の初刊本月印釈譜
巻1の巻頭に本文が収録されており、原刊本である。「世宗御製訓民正音」の内題がある。
喜方寺本
慶尚北道の喜方寺本において1568年に覆刻された月印釈譜巻1の巻頭に本文が収録されている。字句は西江大本と同一だが、覆刻の際の誤刻がいくつか認められる。(本記事の写真)
朴勝彬氏旧蔵本
朴勝彬が所蔵していた本で、現在は高麗大学校亜細亜問題研究所六堂文庫所蔵。原刊本とされるが第1帳が欠落のため補写され、その他にも部分的に補写が見られる。割注と諺解の文言は西江大本とは異なる。
宮内庁本
日本宮内庁書陵部が所蔵する18世紀ごろの写本。戦前にこの本を筆写したものがソウル大学校中央図書館に所蔵されており、また、この本の写真版本がやはりソウル大学校中央図書館に所蔵されているという。朴勝彬氏旧蔵本の模写とされる。
金沢庄三郎氏旧蔵本
金沢庄三郎が所蔵していた写本で、現在は駒澤大学図書館濯足文庫所蔵。字句は西江大本に一致する[11]
訓民正音解例本の誤訳

ユネスコ記憶遺産に登録する必要から訓民正音は公式に英訳されたが、そこに誤訳があったという主張がある。

解例本の「全C之聲凝則爲全濁也」などで凝の字は従来、平音が「凝固して濃くなる」と解されていたため英語でもそのように訳された。また、解例本には獅フ字が何箇所も使われているが、これは従来「激しい」と解されていたため strong と訳された。それぞれの形容する音を濃音、激音と呼ぶことがあるのはまさに凝と獅フ漢字をこのように解釈したことに由来する。ちなみに解例本は全濁音を「最不氏vとも形容しているため、この部分は weakest sound と訳された。

これらが誤訳であるという主張では、獅ヘ「速い」の意味であるとし、逆に凝は「遅い」の意味であるとする。この主張によれば濃音、激音という呼び名も不適切であり、訓民正音全体を誤読することにもなるという[12]
関連項目

大王世宗 - 韓国歴史ドラマ。訓民正音を創製する世宗と官僚達の奮闘と苦悩が描かれている。

パスパ文字 - ハングルは元朝のパスパ文字を参考にして考案されたという説がある。

ハングルの書体:「訓民正音」に使用された書体を「板本体」といい韓国国璽などに使用されている。


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