計画経済
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計画経済の原型はウラジーミル・レーニンゴエルロ計画ヨシフ・スターリンによる第一次五か年計画期ソ連だった。複雑極まりない経済動態を当局者(ソ連ではゴスプランと呼ばれた)が完全に把握し、需要と供給を調整したりするのは極めて難しく、コンピュータを用いてこれを解決しようという試みもあった(経済計算論争)。また計画経済システムの内在的な欠陥を市場メカニズムの導入により解決しようという試みがコスイギン改革やハンガリーにおいて進められたが、結果的に失敗した。

当時は世界恐慌の影響を全く受けず非常に高い経済成長を達成したため、世界各国が大きな影響を受けた。特に枢軸国への影響は顕著だった。例えば、

満洲国は、満洲産業開発五カ年計画などを採用した。詳細は「満洲産業開発五カ年計画#同計画の具体的内容」および「満鉄調査部事件#経緯」を参照

日本も、企画院事件などで不発に終わったものもあったが、経済新体制確立要綱では計画経済を目指すことが明記された。官僚はソ連の計画経済に感化されていた。詳細は「経済新体制確立要綱#内容」および「基本国策要綱#内容」を参照「日本の経済史#二度の世界大戦」および「企画院事件#経緯」も参照

ナチス・ドイツでは、私的所有権は保護されたものの、四カ年計画が作成された。詳細は「ナチス・ドイツの経済#四カ年計画」および「四カ年計画#第二次四カ年計画」を参照

イタリアは、第二次世界大戦が勃発する1939年まで国有企業が占める割合がソ連に次いで最も高く[1]、事実上ソ連の経済体制とほとんど変わらなくなった。詳細は「ファシズム#経済政策」および「ベニート・ムッソリーニ#経済政策の転換」を参照「コーポラティズム#国家コーポラティズム」も参照

第二次世界大戦後

戦後も中華人民共和国ベトナムのように社会主義を標榜する国以外でも、大韓民国マレーシアなど開発独裁下の東南アジアで五カ年計画が採用された。しかし、もともとその運用はソ連や東欧諸国に比べて弛緩していたため、皮肉にも経済改革(市場経済化)がスムーズに実行できる要因となった。特に中華人民共和国では毛沢東時代から既に経済の分権化が進んでいたと指摘される。詳細は「漢江の奇跡#詳細」および「開発独裁#開発独裁と共産主義」を参照「四つの近代化#周恩来の宿願としての「四つの近代化」」および「毛沢東#中華人民共和国建国」も参照

現在の中国では「五ヵ年規画」という言葉が使われており、当局が予め目標を定めて経済をそれに誘導しようと試みるものの、価格設定など仔細な点まで立ち入らず、目標にも固執せず柔軟に対応している。したがって後者に近いと考えられるが、「社会主義市場経済」という言葉が用いられる。なお、中国語の「規画」は「計画」より自由なニュアンスだが、実態として依然、国進民退などに象徴されるように党の指導性が強いことから、日本語の「計画」に訳される場合が多い。詳細は「五カ年計画#その他の国の経済計画」、「中華人民共和国の経済#改革開放以前」、および「改革開放#開放政策」を参照
特徴
利点

国家主導で物品の生産量や種類、労働者の労働時間などを計画的に管理するため、格差が発生しにくい。

外国発の世界的不況や外国からの
経済制裁の影響を受けにくい。

欠点詳細は「マルクス経済学への批判#計画経済」を参照

格差が発生しにくく、企業同士の競争も緩やかになる分、労働者の労働意欲が低下するため、経済成長率が下がる。

ごく少数、または一個人主導で生産計画を立てなければならず、生産の自由が失われるため、国家指導者の誤算が発生すると生産に無駄が生じてしまい、損失が大きくなる。

崩壊の要因

経済学者野口旭は「社会主義経済が崩壊したその根本的原因は、市場経済と比較して効率の悪さ・生産性の低さにある。社会主義最大の問題点は、計画経済よりもむしろ『分配と所有の不平等が存在しない社会』を標榜することで経済の効率化を望む人々のインセンティブを阻害してしまったことにある」と指摘している[2]
参考文献

Jose Harris(柏野健三訳)『ウィリアム ベヴァリッジ その生涯(中)』ふくろう出版、1997年
脚注^ Patricia Knight, Mussolini and Fascism, Routledge (UK), ISBN 0-415-27921-6, p. 65
^ 野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、117-118頁。

関連項目

市場経済

戦時共産主義

アレクセイ・スタハノフ

サイバーシン計画 - テレックス網とコンピュータオペレーションズ・リサーチによるサイバネティックス理論による計画経済運用の試み。


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