言語
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公用語を複数制定する例ではスイスが典型的であり、それまでドイツ語のみであった公用語が1848年の憲法によってドイツ語・フランス語・イタリア語の三公用語制となり[24][25]、さらに1938年にはロマンシュ語国語とされた[26][25]。この傾向が特に強いのはインドであり、1956年以降それまでの地理的な区分から同系統の言語を用いる地域へと州を再編する、いわゆる「言語州」政策を取っている[27]
公用語、共通語、民族語「公用語の一覧」も参照

国家における言語の構造は、公用語-共通語-民族語(部族語、方言)の三層の構造からなっている。もっとも、公用語と共通語、また三層すべてが同じ言語である場合はその分だけ層の数は減少する。

日本を例にとれば、各地方ではその地方の方言を使っている。つまり、同じ地方のコミュニティ内で通用する言語を使用している。これが他地方から来た人を相手にする場合となると、いわゆる標準語を使用することとなる。日本では他に有力な言語集団が存在しないため、政府関係の文書にも日本標準語がそのまま使用される。つまり、共通語と公用語が同一であるため、公用語-方言の二層構造となっている。

公用語と共通語は分離していない国家も多いが、アフリカ大陸の諸国家においてはこの三層構造が明確にあらわれている。これらの国においては、政府関係の公用語は旧宗主国の言語が使用されている。学校教育もこの言語で行われるが、民族語とかけ離れた存在であることもあり国民の中で使用できる層はさほど多くない。この穴を埋めるために、各地域においては共通語が話されている。首都がある地域の共通語が強大化し、国の大部分を覆うようになることも珍しくない。しかし文法の整備などの遅れや、国内他言語話者の反対、公用語の使用能力がエリート層の権力の源泉となっているなどの事情によって、共通語が公用語化はされないことがほとんどである。その下に各民族の民族語が存在する[28]
言語の生物学

詳細は心理言語学及び、神経言語学を参照

言語機能は基本的にヒトに固有のものであるため、言語の研究には少数の例外を除き動物モデルを作りにくい。そのため、脳梗塞などで脳の局所が破壊された症例での研究や、被験者に2つの単語を呈示しその干渉効果を研究するなどの心理学的研究が主になされてきたが、1980年代後半より脳機能イメージング研究が手法に加わり、被験者がさまざまな言語課題を行っているときの脳活動を視覚化できるようになった。
言語に関する脳の領域

古典的なブローカ領域ウェルニッケ領域のほか、シルヴィウス裂を囲む広い範囲(縁上回角回一次・二次聴覚野一次運動野体性感覚野、左前頭前野、左下側頭回)にわたっている。脳梗塞などで各部が損傷されると、それぞれ違ったタイプの失語が出現する。例えば左前頭前野付近の損傷で生じるブローカ失語は運動失語であり、自発語は非流暢性となり復唱、書字も障害される。左側頭葉付近の障害で生じるウェルニッケ失語は感覚失語であり自発語は流暢であるが、言語理解や復唱が障害され、文字による言語理解も不良である。

ほとんどの右利きの人では、単語、文法、語彙などの主要な言語機能は左半球優位である。しかし声の抑揚(プロソディ)の把握、比喩の理解については右半球優位であると言われている。

文字の認識には左紡錘状回、中・下後頭回が関与するが、漢字(表意文字)とひらがな(表音文字)で活動する部位が異なると言われている。
ヒトの発達における言語機能の獲得

これも多方面から研究されている。個人の言語能力は、読字障害ウィリアムズ症候群自閉症などのように全体的な知的能力とは乖離することがあり、個体発生やヒトの進化における言語の起源などにヒントを与えている。また、ヒトは環境の中で聴取する音声から自力で文法などの規則を見出し学習する機能を生得的に備えているため、特に教わらなくても言語を学習できるとする生得論という考えも存在する。

最近の近赤外線分光法を用いた研究において、生後2から5日の新生児が逆再生よりも順再生の声を聞いたほうが、あるいは外国語より母国語を聞いたときの方が聴覚皮質の血流増加が大きかったと報告されており、出産前から母体内で言語を聴いていることが示唆される。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 自然言語の持ついくつかの性質を全く削いだ、形式言語として設計されている人工言語も一部にはある(ログランなど)。
^ (言語学の用語に沿って)「動物のコミュニケーションの体系」も「言語」と呼ぶこともある、という主張がある。しかし、チョムスキー理論では「普遍文法」などの概念において、言語は人間のものという大前提があり、どういう意味で「言語学の用語に沿って」なのかは不明確である。

出典^ a b c d e f g 山本 昭. “ ⇒情報知識学会第6回研究報告会講演論文集 専門コミュニケーションにおける言語と非言語・ターミノロジーの視点から”. 情報知識学会. 2022年4月5日閲覧。
^ a b c d e 広辞苑 第六版「げんご(言語)」
^ 大辞泉「げんご(言語)」
^ 『日本大百科全書』(ニッポニカ)、言語
^ a b c d ブリタニカ百科事典「言語」
^ 「物語 エルサレムの歴史」p166 笈川博一 中央公論新社 2010年7月25日発行
^ a b 「消滅する言語」p108-111 デイヴィッド・クリスタル著 斎藤兆史・三谷裕美訳 中公新書 2004年11月25日発行
^ https://www.afpbb.com/articles/-/3024935 「経済成長で少数言語が失われる、研究」AFPBB 2014年09月03日 2017年2月6日閲覧
^ https://www.afpbb.com/articles/-/2691446?pid=5282181 「最後の話者が死亡、消滅危機言語が絶滅 インド・アンダマン諸島のボ語」AFPBB 2010年02月06日 2017年2月6日閲覧
^ https://www.afpbb.com/articles/-/2783379 「ジャラワ族も存亡の危機、インド・アンダマン諸島」AFPBB 2011年01月26日 2017年2月6日閲覧
^Nature. 413(6855):519-23.
^Current Biology 17:1908?1912
^ 「フランス語学概論」p40-41 髭郁彦・川島浩一郎・渡邊淳也著 駿河台出版社 2010年4月1日初版発行
^ a b 「文化人類学キーワード」p97 山下晋司・船曳建夫編 有斐閣 1997年9月30日初版第1刷
^ 塩川伸明 『民族とネイション - ナショナリズムという難問』p40 岩波新書、2008年 ISBN 9784004311560
^ 城生佰太郎・松崎寛 『日本語「らしさ」の言語学』 講談社 1995年 p.22
^ 「消滅する言語」p12-13 デイヴィッド・クリスタル著 斎藤兆史・三谷裕美訳 中公新書 2004年11月25日発行
^ 「人類の歴史を変えた8つのできごと1 言語・宗教・農耕・お金編」p30-31 眞淳平 岩波ジュニア新書 2012年4月20日第1刷
^ 「中国の地域社会と標準語 南中国を中心に」p19 陳於華 三元社 2005年2月23日初版第1刷
^ 「言語世界地図」p196 町田健 新潮新書 2008年5月20日発行
^ 「言語世界地図」p209-210 町田健 新潮新書 2008年5月20日発行
^ 大橋正明、村山真弓編著、2003年8月8日初版第1刷、『バングラデシュを知るための60章』p58、明石書店
^ 「物語 ベルギーの歴史」p179 松尾秀哉 中公新書 2014年8月25日
^ 「図説スイスの歴史」p86 踊共二 河出書房新社 2011年8月30日初版発行
^ a b 森田安一『物語 スイスの歴史』中公新書 p198 2000年7月25日発行


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