言語地理学
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昭和初期には小林英夫アルベール・ドーザを日本に紹介した[7]。ドーザの言語地理学の著作は、のちに松原秀治によって『言語地理学』の題で翻訳された[8]。また、江実も『言語地理学』を出版した。

また、柳田国男は、言語地理学的な研究を実際に行った。そのもっとも有名な成果が「蝸牛考」である。柳田は1922年から翌年にかけてジュネーブに滞在したときにドーザの『言語地理学』を読んでいた[6]。柳田は方言区画論を唱える東条操と論争を行った。柳田の方言周圏論は有名になったが、カタツムリを意味する語の分布は実際には非常に複雑で解釈が難しく[9]、また周圏論と逆の分布を示す場合もあることが知られている[10]

第二次世界大戦後、国立国語研究所が『日本言語地図』(LAJ)の作成を計画し、そのための調査を1957年から1965年までかけて行った。『日本言語地図』の準備として、柴田武徳川宗賢、W・A・グロータース(のちに馬瀬良雄も参加)は1957年・1959年・1961年には糸魚川地区の180の地点を対象に調査を行った(LAI)。
原則

言語地理学には、次のような3原則がある[11]
隣接分布の原則(隣接地域の原則)
語は地を這うように伝播し、変化は隣接した地域で起こる。したがって、語の地理的分布は歴史的な関係を反映している。例えば、ある地域で異なった語がA・B・Cの順番で分布している場合、語はA>B>CまたはC>B>Aの順番で伝播したと推定する。また、A・B・Aの順番で分布している場合、元々Aのみが分布していた地域の中にBが侵入し、Aの分布域が分断されたと推定する。
周辺分布の原則(辺境残存の原則)
語が音変化ではなく、まったく別の語に変わった場合、文化的中心地から遠いところに古語が残りやすい。文化的中心地の言葉はその権威・威光によって、周辺地域へ伝播し受容されやすいと考える。
固有変化の原則
単語にはそれぞれ固有の歴史があり、語によって別々の地理的分布をする。
概念

言語地理学における概念を挙げる[12]

等語線

語の放射

語の旅行

語の治療

回帰

脚注^ 徳川(1993) p.58
^ 徳川(1993) pp.67-68
^ 柴田(1969) p.12
^ 柴田(1969) pp.13-14
^ 柴田 (1969) p.14
^ a b c グロータース(1964) p.268
^ 小林英夫「方言学、その理論と実際」『民族』第3巻第3号、1928年。 
^ ドーザ 松原秀治訳 (1938). 言語地理学. 冨山房 
^ 佐藤(1979) pp.14-20
^ 佐藤(1979) p.8
^ 斎藤純男『言語学入門』三省堂、2010年、193頁。
^ 世界大百科事典内言及. “語の治療(ごのちりょう)とは”. コトバンク. 2020年4月29日閲覧。

参考文献

柴田武 著「方言区画とは何か」、日本方言研究会 編『日本の方言区画』東京堂、1964年。 

柴田武『言語地理学の方法』筑摩書房、1969年。 

佐藤亮一 著「方言の分布」、徳川宗賢 編『日本の方言地図』中公新書、1979年。 

徳川宗賢『方言地理学の展開』ひつじ書房、1993年。 

W・A・グロータース「『蝸牛考』のふるさと」『定本柳田国男集月報』34(別巻第四附録)、筑摩書房、1964年、267-268頁。 

関連項目

社会言語学

方言

言語地図

等語線

方言周圏論

蝸牛考

アホ・バカ分布図

典拠管理データベース: 国立図書館

フランス

BnF data

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アメリカ

ラトビア

日本

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