言語の起源
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離散的無限は霊長類の過飽和状態の脳における種結晶であり、一たび一つの小さいがしかし決定的なかなめ石が進化によって生まれると物理的法則によって今にも発展してヒトの心にならんばかりになる[4][5]

連続性に基づく理論は近年大多数の学者が唱えているが、発展をどのように把握するかに関しては諸説ある。言語を概ね先天的なものだとみなす人々の中には、―特にスティーヴン・ピンカー[6] は?ヒト以外の霊長類の中で先駆者を特定することを考えようとせず、単に言語機能は通常の漸進的な方法で発展したに違いないという考えを強調する者もいる[7]。言語を概ね先天的なものだとみなす人々の中には、―特にイブ・ウルベク[8] は?言語は霊長類のコミュニケーションからではなく、それより著しく複雑である霊長類の認知能力から発達してきたと述べる者もいる。マイケル・トマセロのような言語を社会的に習得されるコミュニケーションの道具とみなす人々は、言語は音声ではなくジェスチャーによる霊長類のコミュニケーションの認知的に制御された側面から発展してきたとみなす[9][10]。音声的な面での言語の先駆者を考える際には、連続性理論をとる人々の多くは言語が初期の人の歌う能力から発展してきたと想像する[11][12]

言語の発生を何らかの社会的変化の結果とみなす人々は連続性か非連続性かという対立を超えた立場に立つ[13]。ここでいう社会的変化とは先例のないレベルでの公共的信託が生まれることによってそれまで休眠状態に置かれていた言語的創造を成す遺伝的能力を開放するようなものである[14][15][16]。「儀式・発話の共進化理論」はこのアプローチの一例である[17][18]。こういったグループに属する学者は、チンパンジーボノボでも、野生状態ではほぼ使わないとはいえ、記号を使う能力を潜在的に有しているという事実を指摘する[19]

言語の発生はヒトの先史時代にまで遡るので、関連する発展は歴史的痕跡を残していない。今日同等の過程を観察するのも不可能である。それにもかかわらず、近代において新しい手話―例えばニカラグア手話―の発生が、言語の発生に必然的に伴う発展の段階と創造の過程に関する知見をもしかしたら供給してくれるかもしれない[20]。もう一つのアプローチは初期の人類の化石を調査し、言語使用に対する肉体的な適応の痕跡を探すというものである[21][22]。絶滅した人類のDNAが見つかると、言語に関係する遺伝子―例えばFOXP2―の塩基配列をホモ・サピエンスのそれと比較することが有益となるかもしれないと考えられる場合もある[23]。さらにいま一つの、考古学的なアプローチでは、一般的な記号から特殊的な言語への発展に関する推測を正当化する論理的な主張が発展している一方で、ボディペインティングに用いる黄土色顔料の採掘や修正のような考古学的痕跡を残す (繰り返し行われる儀式的活動のような) 象徴的な行動を頼りにする[24][25][26]

言語の進化やその解剖学的な必要性の時間の範囲は、少なくとも原則上は、チンパンジー属 (500-600万年前) からヒト属の系統的多様性 (230-240万年前) から約5-15万年前の完全な現代的行動まで広がっている。音声的コミュニケーションを著しく欠いていたであろうアウストラロピテクスが概して大型類人猿より洗練された音声的コミュニケーションを行っていたと唱える者はほとんどいない[27] が、約250万年前の「ヒト属」の出現以降の発展については学者の間で諸説ある。原始的な言語様の体系 (原言語) は「ホモ・ハビリス」と同時期に出現したと考える学者もいれば、記号によるコミュニケーションの発展はホモ・エレクトゥス (180万年前) やホモ・ハイデルベルゲンシス (60万年前) と同時期にすぎず、言語の発展は20万年前以内のホモ・サピエンスに似つかわしいと提議する学者もいる。

今日の近代語の拡散と多様性を達成するのに要求される時間を推量するために統計学的手法を利用して、カリフォルニア大学バークレー校の言語学者ジョハンナ・ニコールズは、音声言語は少なくとも10万年前に現生人類において現れたと主張している[28]。この発見は、ホモ・サピエンス種が形成されたのと大体同じ時期である中期旧石器時代サブサハラ地域のどこかで言語が発生したであろうという遺伝学的・考古学的・古生物学的、その他の多くの証拠がそれぞれ独立に支持している[29]

言語学者たちは「原始的」言語が現存しないことを認める。現在生きている人は皆、少なくとも大まかには、同等の複雑性・表現力を備えた言語を話している[30]。しかしながら、世界で話されている言語はずっと、複雑性に関して同等であり変わらなかったし現在もそうであるという20世紀のイデオロギーはもはや受け入れられない。より近年の研究によって、どのように言語の複雑性が歴史的時間を通じて言語間・言語内で違うのかが調査されてきた[31]
進化のタイムライン
霊長類の言語チンパンジーボノボ

フィールド霊長類学者によって野生化での大型類人猿のコミュニケーションに関する有用な知見が提供され得る[32]。主要な発見は、ヒト以外の大型類人猿を含む霊長類が鳴き声を発すると、分類上異なる場合でもそれを聞いた別の霊長類が鳴き声を発した者の精神的・肉体的状態の微妙な段階的変化を評価しようとするということである[33]。彼らの喉頭解剖学的構造ではヒトが出しているような多彩な音を出すことはできない。束縛の下で、 類人猿はヒトから初歩的な手話や、コンピュータのキーボードでのレクシグラム―対応する言葉と図表として似てはいない記号―の使用を教わってきた。例えば漢字のような、数百のレクシグラムを学び、使えるようになった類人猿もいる。

霊長類のブローカ野ウェルニッケ野は音を認識するだけでなく、顔面口唇喉頭筋肉を制御する権能を持つ。霊長類は「音声的な鳴き声」をあげることでしられるが、こういった鳴き声は脳幹大脳辺縁系の神経回路(英語版)によって作られる[34] とされてきた。しかし、鳴いているチンパンジーの脳を近年スキャンしたところ、ブローカ野を使って鳴いていることが分かった[35]。また、サルがサルの鳴き声を聞くときに使っている脳の部位はヒトがヒトの発話を聞くときと同じだという証拠がある[36]ヴェルヴェット・モンキーの子供

野生化のものに関しては、ヴェルヴェット・モンキー(英語版)のコミュニケーションが最も広範に研究されている[37]。彼らは十種の異なる音声を使い分けることで知られる。それらの音声の多くは天敵の到来をグループの仲間に警告するのに使われる。そのなかには「ヒョウの鳴き声」、「ヘビの鳴き声」、「ワシの鳴き声」などがある。それぞれの鳴き声はそれを聞いたサルに異なる防衛戦略をとらせる。科学者は拡声器とあらかじめ録音された音声を使ってサルの反応の予想を引き出すことができた。他の鳴き声は個体確認に使われうる。子ザルが鳴くと、その子の母親が子のもとに引き返してくるが、他のヴェルヴェット・モンキーは母ザルが何をするか見るために母ザルの方を向く[38]

同様に、チンパンジーが (束縛の下で) 異なる食べ物を指示する際に異なる「言葉」を使うことが研究者によって示されている。例えばブドウを指示するときにチンプが使う音声が研究者に記録されており、録音された音を聞くとブドウの絵を指すチンプもいる。
初期人類


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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