解離性障害
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以下、DSM-IVにおける例における数字番号である。

1 解離性同一性障害に酷似しているが、その診断基準の一部を満たさないもの - 2つ例が記されており、はっきりと他と区別される複数の人格がない、もう1例は、重要な個人的情報に関する健忘が生じていない場合である。似たものはDSM-5の、「他」混合性解離症状の慢性および反復性症候群。

後者の例は、たとえば主人格と交代人格が記憶を共有している。

4 解離性トランス障害 - 特定の地域、または文化に固有のもので、同一性(人格)の感覚が消失する、身辺状況の認識の狭小化するなど、意識状態が一過性に変化する。DSM-5では、「他」解離性トランス。

6 ガンザー症候群 - 曖昧な受け答えや前後の文脈と関係のない的外れな話をしたりする。留置所・刑務所のような閉鎖的環境の中で発症することが多く、「拘禁反応」の一種とみなされている。

上記のほか、次のものもある。

2 離人症を伴わない現実感喪失 - DSM-5では、離人症性障害に含まれる。

3 洗脳など威圧的にされた者に起こる解離 - DSM-5では、「他」長期および集中的な威圧的説得による同一性の混乱。

5 身体疾患が原因でない意識の消失、混迷、昏睡など

DSM-5の「他」ストレスの強い出来事に対する急性解離反応がある。
疫学

柴山雅俊は2012年の著書で、解離性障害のうち解離性同一性障害は約30%、離人症性障害が約10%、解離性健忘・遁走は5%、残りの55%が特定不能の解離性障害に分類されるとする[8][注 1]。被験者の収集条件などによって変動する。

北米での関心が解離性同一性障害に集中しているため、解離性障害内の各下位障害の比率に関するまとまった統計はなかなか見あたらないが以下の報告がある。なお、解離性同一性障害を「DID」、特定不能の解離性障害を「特定不能」、解離性健忘 「健忘」、離人症性障害は「離人」と記す。
アメリカ1993年Saxeらの報告[9]
15例の内、DID 27%(4例)、特定不能 60%(9例)、健忘 13%(2例)

アメリカ2006年Footeらの報告[9]
24例の内、DID 21%(5例)、特定不能 29%(7例)、健忘 33%(8例)、離人17%(4例)

日本では2006年柴山の報告[9]
53例の内、DID 17%(9例)、特定不能 68%(36例)、健忘 4%(2例)、離人11%(6例)

ドイツからの2001年の報告[10]
8例の内、DID 13%(1例)、特定不能 38%(3例)、健忘 38%(3例)、離人13%(1例)

2003年のトルコからの報告[11]
18例の内、DID 50%(9例)、特定不能 44%(8例)、健忘 6%(1例)

トルコからの2007年の報告[12]
15例の内、DID 40%(6例)、特定不能 40%(6例)、健忘 20%(3例)

特定不能の解離性障害が、全体の半分以上を占めている。これらに後述の白川美也子の報告、後述するロスらの論文を重ね合わせて見ても、解離性障害のうち、解離性同一性障害と特定不能の解離性障害が大半を占めていることは見て取れる。
ICD10の解離性(転換性)障害

ICD10での解離性[転換性]障害の定義、あるいは主題は「過去の記憶、同一性と直接的感覚、および身体運動のコントロールの間の正常な統合が部分的、あるいは完全に失われていること」としている[13]

ICD10では「ヒステリー」という用語を使用していない。しかしかつてヒステリーと呼ばれた障害は、解離性のタイプも転換性のタイプもここにまとめられている。DSM-IV-TRでは、主に身体表現性障害のカテゴリがあてられており、ICD10にも身体表現性障害 (F45) という区分があるが、ICD-10ではこちらに含められている。ICD10では、解離性のタイプも転換性のタイプの患者も多くの特徴を共有していること、一人の患者がしばしば、同時に、あるいは別の時期にもう一方の症状もあらわすことがあるからとしている[14]。なお、DSM-IVでは転換性のタイプは、身体表現性障害のカテゴリに、転換性障害の診断名が存在する。

違いで言えば、離人感と現実感喪失はICD10では含まれない。その理由としては、人格的同一性の限られた側面しか通常は障害されず、感覚、記憶、運動の遂行に関する損失はないからとする[15]

解離性同一性障害は多重人格障害との名称で「F448 その他の解離性[転換性]障害」の下に位置づけられ、多少懐疑的なコメントが付されている[16]。以下にICD10の解離性[転換性]障害の個々の診断名を記す。

F44.0 解離性健忘

F44.1 解離性遁走[フーグ]

F44.2 解離性昏迷

F44.3 トランスおよび憑依障害

F44.4 解離性運動障害

F44.5 解離性けいれん

F44.6 解離性知覚麻痺および感覚脱失

F44.7 混合性解離性[転換性]障害

F44.8 他の解離性[転換性]障害

F44.80 ガンザー症候群

F44.81 多重人格障害

F44.82 小児期あるいは青年期にみられる一過性解離性[転換性]障害

F44.83 他の特定の解離性[転換性]障害


F44.9 解離性[転換性]障害、特定不能のもの

原因

原因は一人一人違う[17]と考えた方が実情に即しており、以下もあくまで一般的な理解のまとめに留まる。
ストレス要因

解離性障害を発症する人のほとんどが幼児期から児童期に強い精神的ストレスを受けているとされる。そのストレス要因として一般にいわれるのは、
学校や兄弟間のいじめなど、

親などが精神的に子供を支配していて自由な自己表現ができないなどの人間関係のストレス、

ネグレクト

家族や周囲からの情緒的身体的虐待性的虐待

殺傷事件や交通事故などを間近に見たショックや家族の死などである[18]

北米を始め、日本でも関心が解離性同一性障害に集中しているため、解離性障害全体は情報が少ない。

柴山雅俊、 2007年の報告[19]:調査人数42人。両親の不仲60%、性的外傷30%、近親姦9%、両親からの虐待30%、学校でのいじめ60%、交通事故20%。

柴山雅俊、 2012年の報告[20]:調査人数の記載なし。両親の不仲55%、性的外傷45%、(内家庭外77%、家庭内33%、両方11%)、家庭内虐待30%、学校でのいじめ55%、交通事故20%。


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