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絶滅した哺乳類にも角を持つものは少なくない。

鯨偶蹄目の中ではラクダ科姉妹群とされるプロトケラス科は、鼻上及び側頭部に角を持っていた。後期の属、シンテトケラスの鼻上部にはY字形の大きな角、側頭部には上方に湾曲した角があった。[9]

また奇蹄目ではブロントテリウム科の幾つかのグループは鼻上に大型の角を発達させた。このグループは、アジア産と北米産では角を構成する骨が異なっていた。[10]

長鼻目の近縁である重脚目も、大型の角を持っていた。代表的な属の一つアルシノイテリウムは、吻部から額までの前頭部を基部とする二股に分かれた大きな角と、後頭部の一対の小さな角を持っていた。前頭部の角は巨大であったが中空で軽量であり、声を発する際の共鳴器官として使用したとの説もある。[11][12]

他には、初期の大型草食動物である恐角目ウインタテリウムは、頭部に三対六本の角を持っていた。また、齧歯類エピガウルスも鼻上に一対の角を持つ。

以上のグループは、化石として発見された角突起の表面がざらついていたり、あるいは血管の痕跡などが発見されている事から、キリンなどと同様、上面に皮膚が被さったオッシコーンだったのでないかと推定されている。また、雄(と推定される標本)の方が大きい、または雄にしかないなど性的二形を示すものも少なくなく、性的ディスプレイや雌を巡る儀礼的闘争に使われたのではないかと思われる。ブロントテリウムなど幾つかの種で、角によって負った傷跡を持つ化石が発見されている。

異節上目にも角状の構造物を持つものが存在した。被甲目に属するペルテフィルスは、頭部を覆う鱗板骨の前端、上部の一対(二対の可能性もあり)が角状に隆起していた。生体ではこの上に角質の鞘が被っていたと思われる。

上記の様に哺乳類の化石種には多様な角を持つものが多いが、その祖である初期獣弓類も多様な角を発達させた。現在知られうる最古の獣弓類であるテトラケラトプスは、学名の「四つの角を持つ顔」の名の通り、四つ(後に六つと判明した)の角状突起を持つ。この生物は、頭部に角を持つ最古の有羊膜類でもある。また、ディノケファルス類(恐頭類)のエステメノスクスは、ヘラジカにも似た枝分かれした角状の突起を持っていた。これらの生物の角の表面がいかなる状態であったかは化石からは判明していない。[13]
角研ぎ

シカの角は皮膚に包まれて発達し、内部で硬化し、最後に皮膚が破れて完成する。その際にシカは角を樹木の幹に当て、こするようにして皮膚を剥ぎ取り、また角の表面を磨く。これをシカの角研ぎという。カモシカの場合は皮膚がはがれたりはしないが、やはり先端を磨くことは大事であるらしく、同様に樹木にこすり付ける。

こすり付けられた樹木は、当然樹皮がはがれ、普通は下から上に削り落としたような傷がつく。

また、サイも同様に角を研いで手入れしている。
爬虫類・鳥類カメレオンの角トリケラトプスの角

爬虫類では、トカゲ類、カメレオン類に鼻の頭や目の上に角を持つものがある。ジャクソンカメレオンのようにこれぞ角、という姿で実際にもそれを突き合わせて戦う例もある。しかしそれ以外では、大半はやや突き出しているので角と呼んでいる、というレベルであり、角の役割は果たしていない。ツノトカゲなどはこの例である。両生類にもツノガエルという例があるが、ほぼこれと同じである。

絶滅群のうち恐竜では、カルノタウルスなど肉食のものも角状構造を持つものが多かった。また、鳥盤類ケラトプス類がウシあるいはサイのような構造の角をもっていた。

鳥類ではサイチョウなどに、くちばしの上に角状の付属突起を持つものがあるが、どのような役に立つかはよくわからない。
魚類

魚類では、ハコフグ類などに目の上に角を持つものがある。これらはほ乳類のようにその角をもって争うようには見えず、むしろ外敵に食べられにくくする効果も考えられている。
昆虫の角ヘラクレスオオカブトの角

甲虫類(コウチュウ目)の昆虫、特にコガネムシ上科のオスに角を頭部と胸部、もしくはそのいずれかに持つものが多い[14]。特に有名なのがカブトムシ亜科の昆虫であり、その角は雄同士の争いや、餌を巡って他の昆虫を追い払うのに使われる。ほかに、糞虫ダイコクコガネや、ゴミムシダマシ科(コブスジツノゴミムシダマシなど)も似たような構造と機能をした角に持つものがある[15]クワガタムシ科の甲虫は能動の角のように突出した構造を先頭に1対もつが、発達した大顎で、目立たない大きさの種もある[16]ツノゼミ

半翅類半翅目/カメムシ目)の昆虫、特にビワハゴロモ科テングスケバ科などの頭部に角のような突起がある。ツノゼミ科の種類は、その胸部に奇妙な形の角を持つことで有名である。いかにも角に見える堅いとがったものを持つものもあるが、柔らかいひらひらした突起や、曲がりくねった膨らみを持つものもある。擬態に関わるものと考えられているが、想像を絶するような形のものも存在する。
カタツムリの角

童謡にも歌われているとおり、カタツムリには角と呼ばれるものが頭部から伸びるが、実際は眼である。
名前だけの角

角と名を持つが、実際には角を持たないものも多い。それらは触角などが目立つため、それを角に見立てて命名されたものである。ツノガイの貝殻全体が角に似るための命名である。以下のような例がある。

触角を角に見立てたもの

ツノトンボ

ツノヒラムシ


体に棘状の突起があるもの

ツノナガコブシガニ

ツノダシ

ツノカメムシ


全体が角に似ているもの

ツノガイ

ツノマタ


角がない生物に後天的に生える角右耳にできた皮角(英語版)
人間など
皮膚が盛り上がって角のようになったものを皮角(英語版)と呼び、19世紀のフランス人女性の額から24.9cmの角が出ていた記録もある[17]。原因は不明だが、頭など露出の多い部位にできる特徴がある。
うさぎ
うさぎに角が生えていることは無いという兎角(とかく)という用語があるが[18]レプス・コルヌトゥスなどの角の生えた例が報告されており、ショープ乳頭腫ウイルス(英語版)に感染したためだという研究者もいる[19]
民俗

日本人にとってもっとも近しい角は、牛とシカのそれであろう。西洋ではこれにヤギ・羊が加わる。架空の生き物(等)を想像する場合、既成の動物に角を付ける、という例は数多い。ヒトに付ける例では、の角は牛のそれであり、悪魔のそれはヤギのものである。またに角を付けたのは一角獣になる。地名の由来説話に『日本書紀』の都怒我阿羅斯等(角のある加羅王子)があり、「つぬ(角)が」生えた人が来たので、その地を「つぬが(敦賀)」と呼ぶようになったと記される。

角を持つものの戦いは、互いに角同士を押し当てての力比べの形をとることが多い。「角つき合わせる」という表現はこれによる。

俗に、腹を立てている女房を、亭主側からやや揶揄して、「角を生やしている」などという。その一方、南欧諸言語(イタリア語スペイン語ポルトガル語など)では角は妻を寝取られた男性の象徴であり(伊cornuto、西cornudo、葡corno)、「角を付ける」という表現は「妻を寝取る」という意味になる。

古くはシカの角をの一種とする伝承があって、近代まで信じられた。シカの角が骨の一種であるという主張は1817年フランスジョルジュ・キュビエによって提示された。

旧約聖書出エジプト記』に登場するモーセに二本の角が生えていたとされたこともあったが、神から権能を授かった証とする説もあるが誤訳であったとも考えられている[20]


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