親権を行う者
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811条2項から4項、818条第2項及び第3項は離縁の場合に実親の親権が回復することを前提としている[19]。なお、現行の民法では養親が夫婦である場合において未成年者の養子と離縁するには夫婦が共に離縁することを原則としている(811条の2を参照)。この場合に実父母が離婚している場合には818条第3項の規定によって親権者を定める[19]。特別養子縁組の場合には原則として離縁は許されないが(817条の10第2項・第1項)、離縁となった場合には実親の親権が復活する(817条の11)。養父母の一方が死亡あるいは離婚により単独親権となった場合で、その後、養子が単独親権をもつ養親と離縁した場合には、後見が開始されるとする説(実務)と実親の親権が回復するとする説がある[21]。養親と実親による共同親権の場合(配偶者の前婚の子が後婚の他方配偶者の養子となった場合など)に、養親子が離縁した場合には実親の単独親権となる(実務。昭26・6・22民事甲1231号回答)[19]

養親の離婚の場合
養親と実親による共同親権の場合(配偶者の前婚の子が後婚の他方配偶者の養子となった場合など)に、両親が離婚した場合には養親の単独親権となるとする説と通常の離婚と同様に親権者を定めることを要するとする説(多数説・実務。昭25・9・22民事甲2573号通達)とがある[21][19][22]

共同親権の例外

以下の場合には母または父の一方による単独親権となる。

一方が親権を行うことができないとき
父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が親権を行う(818条
第3項但書)。「親権を行うことができないとき」には法律上行使しえない場合(親権喪失の審判、親権者の辞任、親権者に成年後見の審判・保佐開始の審判があった場合など)と事実上行使できない場合(行方不明となっている場合、服役している場合、重病を患っている場合など)とがある[14][7]。父母の一方が亡くなった場合(失踪宣告を受けた場合を含む)には単独親権となり[23]、双方ともに亡くなった場合には後見が開始する(838条第1項)[23][7]。養父母の場合(普通養子縁組の場合)も同様であり、養父母ともに亡くなった場合には838条第1項により実親の親権は復活せず後見が開始されるとする通説(後見開始説。判例として東京高決昭56・9・2家月34巻11号24頁)と、実親の親権が回復されるとみる有力説(実親親権復活説。判例として宇都宮家大田原支審昭57・5・21家月34・11・49)が対立し論点となっている[24][22][25]。なお、特別養子縁組の場合には既に実親子関係は切断されているので常に未成年後見が開始し実親の下に親権が復活する余地はない[23]

離婚

協議離婚の場合
協議によって親権者を定める(819条1項、親権者は父または母のどちらか1人、ただし監護者は親権者とは限らない)。協議が調わないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判(調停)をすることができる(819条5項)。

裁判上の離婚
裁判所の決定によって親権者(単独親権)を定める(819条2項)。
なお、近時の外国での法制では離婚時における共同監護の立法例が増しているとされる[26]

子の出生前に離婚
親権は母が行う(819条3項本文)。ただし、父母の協議によって出生後に変更することができる(819条3項但書)。これらの協議は戸籍上の届出の後に効力を持つ(戸籍法8条)。

嫡出でない子(非嫡出子)
嫡出でない子(非嫡出子)は母の単独親権に服する(819条4項)[25]。父によって胎児認知されている場合にも原則として母の単独親権となる[26]。ただし、父が認知した子の場合には父母の協議によって父を親権者と定めることができる(819条4項)。いずれの場合も母または父の単独親権であり共同親権とはならない[17]。単独親権者が亡くなった場合について、従来の通説は後見が開始する(838条第1項)とみるが、一方の者に当然に親権が生じるとみる反対説もあり、判例にも一方の者が適任とみられるときは親権者変更の審判を請求しうるとしたものがある[25]
親権能力

親権者は財産管理権を行使する関係上、一定の行為能力を有する者でなければならない。

未成年者
未成年者の自らの子に対する親権は、その未成年者の親権者が代行する(833条)[27]

成年被後見人
成年被後見人の親権能力は否定される[27]

被保佐人
被保佐人の親権能力については見解が分かれるが否定説が多数説となっている[28]

被補助人
被補助人は一定水準以上の判断能力を有することから親権能力を失わない(多数説)[29]

単独親権者が親権能力を欠く状況がある場合の実務として、必ずしも親権者の後見または保佐開始の審判がなくとも、障害の程度が明白な場合には、行方不明のため親権を行うことができないときと同じく、家庭裁判所の職権調査による自由な認定により未成年後見を開始できると判示されている[30]
親権者の変更(親権者変更調停)「#親権喪失の審判」も参照

親権保有者の事情・虐待や育児放棄の発覚による不適格認定などの理由で子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる(819条6項)。

離婚後の親権者の変更は、親権を得ようとする者が家庭裁判所に親権者変更調停を申立て、調停による新たな親権者が戸籍に記載されることにより効力が発生する(調停の制度的前置)。調停が不成立の場合、審判手続が開始され裁判所が判断し親権者を決める。
父母以外の者による親権行使

法律上、例外的に子の父母でない者が親権者となる場合がある[26]

親権を行う者はその親権に服する子に代わって親権を行う(833条)。つまり、先述のように未成年者の自らの子に対する親権は、その未成年者の親権者が代行する。

児童福祉施設の長は、入所中の児童で親権者のない者に対し、親権者又は未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う(児童福祉法第47条1項本文)。ただし、797条による縁組の承諾をするには都道府県知事の許可を得なければならない(児童福祉法第47条1項但書)。

親権者をめぐる問題

親権については共同親権が原則であるが、離婚などの事由が発生した場合、例外として単独親権となる場合もある。

子供と住みたいがため、いわば、名を捨てて「親権」(この場合、法定代理権)を相手に与え、子供と一緒に暮らす「監護権」という実を取るような調停方法も、良く行われる。複雑な日本の状況とは異なり、欧米では基本的に女性保護の観点からも、慎重に親権について、また養育費についての分割検討がなされる。離婚時の子の年齢も考慮の大きな判断の一つであり、母子関係の保護に関しては各国努力をしている。

統計:親権を行う子の数別にみた離婚

また、事実婚の夫婦においても、単独親権になることから、そのような場合に共同親権、あるいは選択的夫婦別姓制度の導入が必要との意見がある[31][32][33]

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詳細は「共同親権」および「離婚後共同親権」を参照
親権の内容

親権は、身上監護権と財産管理権から構成されている。
監護教育権

親権者は、子の監護及び教育をする権利を有し義務を負う(820条)。本条は監護教育権の基本的内容を定めた包括的規定で[34]、平成23年民法改正(平成23年6月3日法律第61号)により「子の利益のために」の文言が追加された[35]。親権のうち子の身上に関する権利であり、「監護(監護権)」は主として肉体的成長、「教育(教育権)」は主として精神的発達を図るものであるが、ともに不可分の関係にあるとされる[34][25]

子の監護教育の内容・程度は親権者が自由に決定しうるが、社会政策などの観点から一定の制限を受ける(教育基本法第4条、学校教育法22条・39条)[34]

子どもの医療に対する親権者等の同意権(医療同意権)も、身上監護権の一部だとされる[36]


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