覚醒剤を小分けにするビニール製の小袋は「パケ(英語: package)」と呼ばれる。静脈注射で摂取する方法は「突き」と呼ばれ、使用される注射器は「ポンプ」「キー」などと呼ばれる。第二次覚醒剤乱用期までは「ガラポン」と呼ばれるガラス製注射器も多く使用されていたが、第三次覚醒剤乱用期ではインスリン注射用の使い捨てタイプを使用するのが主流となっている。覚醒剤をライターで炙って煙を吸引する摂取方法は「炙り」と呼ばれ、近年はこの摂取方法での乱用が増えている。乱用者はヒロポン中毒を意味する「ポン中」や「シャブ中」などと呼ばれている。 東アジアでは、syabu (shabu、シャブ)、speed(スピード)、ice(アイス)などの俗称がある。中国では「冰毒」(ビンドゥ)、北朝鮮では「?」(ピン)などとも呼ばれる。韓国では、日本の商品名「ヒロポン」(???(???))の名で知られる。 東南アジアのマレーシアでは batu Kilat (バトゥ・キラット)、フィリピンでは batak (バタク)、タイでは yaaba (yama、ヤーバー、ヤーマ)などと呼ばれる。覚醒剤は、コカインよりも強い向精神作用が長時間続き末端価格も安いため、フィリピンなどでは「貧乏人のコカイン」という意味の poor man's cocaine との俗称もある。 メス、アイス、ティナ、ガラスなどと呼ばれる。バイク乗りたちが覚醒剤の隠し場所にバイクのクランクケースを利用したことが由来とされる crank(クランク)や、結晶が鉱物のクリスタルと似ていることから crystal(クリスタル)との俗称もある。乱用者はtweakers(tweekers、トゥイーカー)などと呼ばれる。 覚醒剤は粉末状では白色、結晶状では無色透明になるが、他の興奮・覚醒薬などを混ぜたことにより着色されたものも乱用されており、赤色は strawberry quick(ストロベリー・クイック)、ピンク色は pink panther(ピンクパンサー)などと呼ばれている。これらは、その色合いと名称から抵抗感が少なく、10代や20代の若い世代も遊び感覚で手を出しやすい。日本の乱用者は白色粉末や透明結晶状の高純度の覚醒剤を好むため、着色されたものが日本に密輸されることは少ないが、MDMAやカフェインなどと覚醒剤との混合錠剤(ヤーバーなど)の多くは着色されており、これらの日本への密輸は近年増加している。 不純物が取り除かれた高純度のものは nazi dope(ナチ・ドープ)と呼ばれる。これは、アンフェタミンがドイツ帝国の科学者によって開発され、第二次世界大戦時にナチス・ドイツの兵士が使用していたことに由来するもので、覚醒剤本来の形、非常に純粋で純度が高いという意味で使われる。 米国では、覚醒剤の原料になる鼻炎薬や風邪薬が薬局で手に入るため、自宅などで密造する乱用者が多いが、隣国メキシコの麻薬カルテルによって製造された覚醒剤も大量に密輸されており、これらはメキシカン・アイス (mexican ice) というブランド名で流通する。メキシコの麻薬カルテルは麻薬製造のために巨額の投資を行い、高度な技術と設備を有しているため、メキシコから密輸される覚醒剤は、個人や小規模の密造グループが製造するものよりも純度が高く乱用者の間で人気が高い。 原料になる鼻炎薬や風邪薬を買い集める犯罪者は smurfers (スマーファー)と呼ばれ、スマーファーが買い集めたこれらの薬は、papa smurf(パパスマーフ)と呼ばれる密造者の下に集められる。スマーファーは覚醒剤乱用者が多いため、報酬として覚醒剤を受け取るケースが多い。「パパスマーフ」との俗称は人気アニメ「スマーフ」が語源とされる。 アンフェタミン、メタンフェタミン(また同じく精神刺激薬であるコカイン、メチルフェニデート)は、血液脳関門を通り越して脳内報酬系としても知られる、腹側被蓋野から大脳皮質と辺縁系に投射するドパミン作動性神経のシナプス前終末からのドパミン放出を促進しながら再取り込みを阻害することで、特に側座核内のA10神経付近にドパミンの過剰な充溢を起こし、当該部位のドパミン受容体に大量のドパミンが曝露することで覚醒作用や快感の気分を生じさせる。 メタンフェタミンの反復使用は、ドーパミントランスポーター 最近の研究では、非定型抗精神病薬との併用試験において、快の気分が生じなくても心拍数や血圧の上昇が起こることがあり、薬物への依存性にほとんど変化がなかったとの結果が示された。これらの研究では、非定型抗精神病薬を併用した方が心拍数や血圧の上昇を増強しているようであり、依存の治療にはむしろ有害である可能性が示された[18][19]。 血圧上昇、散瞳など交感神経刺激症状が出現する。発汗が活発になり、喉が異常に渇く。内臓の働きは不活発になり多くは便秘状態となる。性的気分は容易に増幅されるが、反面、男性の場合は薬効が強く作用している間は勃起不全となる。常同行為が見られ、不自然な筋肉の緊張、キョロキョロと落ち着きのない動作を示すことが多い。さらに、主に過剰摂取によって死亡することもある。食欲は低下し、過覚醒により不眠となるが、これらは往々にして使用目的でもある。 中脳辺縁系のドパミン過活動は、統合失調症において推定されている幻聴の発生機序とほぼ同じであるため、覚醒剤使用により幻聴などの症状が生じることがある。まれであるが、長期連用の結果、覚醒剤後遺症として統合失調症と区別がつかないような、慢性の幻覚妄想状態や、意欲低下や引きこもりといった、統合失調症の陰性症状の様な症状を呈し、精神科病院への入院が必要となる場合もある。 アンフェタミン誘発性精神病は、統合失調症の精神障害のモデルであり、急性症状は区別がつかないが、アンフェタミンによるものは早く回復することで鑑別診断が可能である[20]。しかし、日本の研究者はこれに反して、精神病の軽快後の自発的な精神病の再発をフラッシュバックと呼んでいる[20]。
アジア
欧米
薬理作用
副作用覚醒剤依存症患者(1950年代)