1972年の米中共同声明(上海コミュニケ)において、「中国は決して超大国にならず、あらゆる種類のパワーポリティクスとヘゲモニーに反対する」との言い回しの言葉があった。この中国語は「中国决不做超?大国,并且反?任何霸?主?和??政治。」で、「ヘゲモニー」と「覇権主義」を同じ概念に扱われた[5][6]。
これ以後、中国の外交は『米ソ両超大国の覇権主義に反対』することを主軸の一つとするようになった。たとえば、1978年に締結された日中平和友好条約は第2条に『両締約国は、そのいずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する』といういわゆる「反覇権主義条項」が盛り込まれている[注釈 1][4]。
現行の中華人民共和国憲法(82年憲法)においても、前文で外交方針の基本として『独立自主の対外政策を堅持し(略)帝国主義、覇権主義及び植民地主義に反対することを堅持し』との文言を掲げている[7]。 張香山は1975年4月に次のようなソ連の行動を覇権主義とした[4]。 日本共産党の綱領(2020年1月18日改訂)によると、次のような事項を批判する際に覇権主義の文言を用いている[8] 同様に、覇権主義に対峙する価値体系として、 を挙げている。
覇権主義とされる行動の例
外国に派兵し、侵略し、奴隷化している
世界に広く軍事基地をおき、他国の主権を侵害している
軍隊を派遣し、他国を侵略し、民族自決の闘いを弾圧している
海軍艦隊を拡張し、全世界の海をわがもの顔にしている
兵器を大量に販売し、世界最大の軍事商人である
核兵器を大量に開発し、核独占をはかり、他国を恐喝する道具としている
軍事予算を拡大し、軍備を拡張している
他国の内政に干渉し、他国政府の転覆をはかっている
周囲の領土を不法に占領し、返還しない(日本の北方領土、中国の珍宝島)
従属国から搾取し、経済協力の名を借りて“第3世界”からも搾取している
他国の共産党に自分の政策に従うよう、強要している
帝国主義政策を推進するため、一連の理論をデッチあげている
(ソ連による)他民族への侵略と抑圧
(アメリカによる)一国の利益を世界平和の利益と国際秩序の上に置き、国連をも無視して他国にたいする先制攻撃戦略をもち、それを実行する(軍事的覇権主義)
(アメリカによる)経済の「グローバル化」を名目に世界の各国をアメリカ中心の経済秩序に組み込もうとする経済的覇権主義
(中国やロシアを念頭に)いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義は、世界の平和と進歩への逆流[9]
国連憲章に規定された平和の国際秩序
すべての国の経済主権の尊重および平等・公平を基礎とする民主的な国際経済秩序
関連項目
帝国 - 帝国主義 - 新帝国主義
3つの世界論
脚注[脚注の使い方]
注釈^ この条文が長年、日中平和条約交渉の対立の焦点となっていたが、ブレジンスキーの仲介および日本が要求した文言『この条約は、第三国との関係に関する各締約国の立場に影響を及ぼすものではない。』を盛り込むことで妥結した。益尾 知佐子「ケ小平の対外開放構想と国際関係――1978年、中越戦争への決断」(pdf)『アジア研究』第53巻第4号、2007年、9頁、doi:10.11479/asianstudies.53.4_1
出典^ “第25回党大会決議案の用語解説(下)”