西武鉄道
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2006年の西武ホールディングス設立に伴うコクドの第三者割当増資時にはミレニアムが10億円出資を引き受け、セブン&アイ・ホールディングスがミレニアム株式を現金で買上げるまでの数か月間は株式の持ち合い状態であった。2020年時点でも、西武グループの統括会社である西武ホールディングスとセブン&アイ・ホールディングスは「連携強化のため」にお互いに株式を持ち合っており[6]、西武鉄道・プリンスホテルと西武池袋本店が共同で外国人観光客誘致を行う[7]秩父地方で採れた農産物を西武の特急列車で輸送し、西武池袋本店で販売する[8]などの協業を行っている(詳細は「そごう・西武#西武グループとの関係」参照)。なお、そごう・西武は2023年アメリカ合衆国の投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」に売却されセブン&アイグループから離脱した。

西武百貨店のスーパーマーケット事業として登場した西友が西武沿線に多いのは、グループ分裂前に発展過程で店舗と土地を賃貸しているのが、現在まで継続しているからである。西友が米ウォルマートの子会社になってからも西友とのつながりは未だに深く、西武鉄道の開発するニュータウンや駅改良工事後に、西友の新店舗が開店することが多い。また、西友のコンビニエンス事業として発足したファミリーマートとは、駅ナカコンビニTOMONY(トモニー)の展開で提携しているなど、かつてのセゾングループとのつながりを見ることが出来る。

一方で西武鉄道グループとしても、西武リアルティソリューションズ(旧プリンスホテル)を介して、PePeEmioなどの駅ビルやBIG BOXアウトレットモールといった大型商業施設の運営を行っている(元は2022年にプリンスホテルに合併された西武プロパティーズの事業)。また、旅行業部門として西武観光を擁しており、一般客向けには西武線のターミナル駅構内に窓口が置かれている。

首都圏で東京都区部と周辺地域を結ぶ鉄道他社、特に小田急電鉄や東急電鉄では利用客の増加に対応し線路の複々線化が活発に行われたが、西武鉄道では複々線化について、池袋線では練馬駅から石神井公園駅までを複々線化した一方で、新宿線では西武新宿駅 - 上石神井駅間の複々線化が計画されたが、その後少子高齢化の進行に伴う利用客の減少の見込み等により、計画を中止した。

一方、老朽化した駅施設などのリニューアルを活発に進めており、1999年の田無駅を皮切りに野方花小金井狭山市東長崎江古田東久留米所沢の各駅で駅舎の全面改築が行われている。2007年からはファミリーマートと協業した駅売店「TOMONY(トモニー)」や2010年代以降は駅ビル型の中小規模な駅ナカ商業施設として「Emio(エミオ)」やより大規模な「Grand Emio(グランエミオ)」を開業させ、駅の改築に合わせて順次展開していく見通しである。
同族経営時代衆議院議長に就任した堤康次郎

西武鉄道は2006年2月の西武グループ再構築まで長きに亘り、堤家コクドが株式の多くを保有する同族経営(=ファミリー企業)であった。

康次郎亡き後は後継者となった堤義明による経営手腕で1960年代以降、プリンスホテルとその近隣でのスキー場ゴルフ場スケートリンクなどのリゾート開発と、ニュータウン/宅地開発などが東日本を中心に大規模に推し進められた。兄弟会社であったプリンスホテル(旧)の不動産物件はほとんど西武鉄道の所有であり、プリンスホテル社は運営のみを行っていた。また、1978年にはコクド(当時は国土計画)がクラウンライターライオンズを買収して、西武ライオンズを誕生させプロ野球球団経営に進出する。建築には西武建設(旧)、庭や芝生管理に西武造園を用いるなど内部経済でコクド・西武鉄道グループとしての規模を拡大させ社員3万人を有し、「西武王国」と言われた。また、1980年代には堤義明は世界の富豪世界長者番付)入りを果たした。

1957年から東証一部に上場していたが、2004年に発覚した証券取引法違反事件により同年12月に上場廃止処分となり、その後のコクド・西武鉄道・プリンスホテル間での事業領域の再構築と不採算物件の売却が行われるなど、大きな転換期となった(後述)。
総会屋利益供与事件

2004年2月に総会屋の求めに応じて土地を安く譲渡させる形での利益供与が発覚し(西武鉄道総会屋利益供与事件)、総会屋側と利益供与に関わった西武鉄道と西武不動産販売(2009年に西武プロパティーズが事業承継)の役員合わせて11人が商法違反で逮捕・送検される事態となった。これにより、同年4月14日に旧西武鉄道グループ・西武ライオンズ(当時)のオーナーで西武鉄道・コクド会長を務める堤義明戸田博之西武鉄道社長が記者会見を開き、西武鉄道会長・社長職の引責辞任を発表する。これにより、同族資本の鉄道会社は東武鉄道富士急行が残るのみとなった。後任の西武鉄道社長には小柳皓正専務が昇格する形で就任した。
証券取引法違反事件

約6か月後の同年10月13日に、堤義明コクド会長が急遽記者会見を開き、有価証券報告書虚偽記載(2004年3月期決算の有価証券報告書上で、コクドが保有する西武鉄道の保有株数を22%過少申告していた)を公表。コクド会長職なども辞任表明をした。実態的には、西武鉄道株式〔西武株〕のコクド持株分の多くを、西武鉄道グループ各社の従業員持株会OB関係者と堤義明コクド会長ら、1,000名以上の個人の「名義株」に偽装し、コクド・伊豆箱根鉄道など上位10名(社)の西武株式保有分のみで、東京証券取引所上場廃止基準である80%を超えていたことを伏せて株式公開していた。1,000円台の堅調な値動きをしていた西武株は、発表翌日からストップ安となり、東京証券取引所や証券取引等監視委員会東京地方検察庁も、西武鉄道・コクド幹部への事情聴取に乗り出した。

西武鉄道は、連鎖的に同じ事態が発覚した伊豆箱根鉄道とともに、株式名簿管理を証券代行会社へ委託せず、自社内で行っていた(東証上場企業では当時3社のみ)が、株券の電子化(2009年開始)では、証券保管振替制度によって株券証券保管振替機構(ほふり)の参加者(証券会社・信託銀行等)口座を通じて預託(移管)した。その過程で名義人の実在確認が必要となるため、電子化が導入された時点で名義株が発覚してしまう事態は元々予想されていた。なお、この株主偽装は上場当初の1957年から存在したと言われている。

一方、発表前の同年9月前後に西武鉄道とコクド(プリンスホテル等)を通じて取引関係のあるキリンビールサントリー東京コカ・コーラボトリングなどの複数の飲料メーカー、王子製紙ワコール日立グループ三菱電機、小田急電鉄、鹿島前田建設クレディセゾンなど30企業に対し、西武株式8千万株を虚偽記載であることを伏せたまま売却した。10月の虚偽記載公表後の株価下落による損失を招いたことで、株式買い戻し(購入代金の返還)請求が起こされたとともに、売却を打診したコクド・西武鉄道の幹部や堤義明前会長に対しては、インサイダー容疑であわせて捜査が行われた。

これらの事態によって、東証は11月16日に「虚偽記載という不適切な情報開示」と「公益・投資者保護」を理由に、西武株式の上場廃止を決定し、11月17日に整理ポスト入りさせ、12月16日をもって取引を終了し、翌17日上場廃止となった。伊豆箱根鉄道においても、西武鉄道が50%超を持株保有していると、2000年度分からの有価証券報告書を訂正し、上場廃止となった。

上場廃止となるのは、それまでは企業の倒産会社更生法民事再生法申請などの法的整理)や、M&A株式公開買付に伴うものが通例であったことから、極めて異例の事態であった。


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