(出典:都竹通年雄「文法概説」) 近畿・四国・中国方言では共通語に近い音韻体系を持つが、雲伯方言や北陸方言では東北方言に似た音声特徴(裏日本式音韻)が聞かれる。 なお九州方言については九州方言#発音を参照。 アクセントも地域により多様である。概ね近畿方言・四国方言・北陸方言で京阪式アクセントまたはその亜系のアクセントを用い、中国方言・雲伯方言では東京式アクセントを用いる。「日本語の方言のアクセント」も参照
断定の助動詞に「じゃ・や」を用いるのは、富山県・岐阜県・三重県以西である。新潟県(佐渡島含む)・長野県・愛知県以東は「だ」(なお愛知県北西部では「だ」と「じゃ・や」の混同がみられる)。「じゃ」を用いるのは広島・岡山など山陽地方に強固に残存しており、それら以外の地域では「や」への変化が見られる。
否定の助動詞に「ん」を用いるのは、新潟県糸魚川市付近・佐渡島・岐阜県・愛知県・長野県南部・静岡県大井川以西および山梨県国中である。これより東は「ない・ねえ」。新潟県内では上記の地域の他にも「ん」が微弱ながら新潟市付近まで聞かれる[8]。
「-とる・ちょる」は佐渡島・糸魚川市付近・岐阜県・愛知県・長野県南部・静岡県浜名湖以西。これより東は「-てる・ている」。
ア行五段動詞のウ音便は、新潟県(西越大部分や魚沼地方を除く)、富山県以西の北陸・近畿以西。岐阜・愛知以東は促音便。
形容詞のウ音便は、新潟県(西越大部分や魚沼地方を除く)・岐阜県・愛知県西三河以西。東三河以東は非音便。
サ行五段動詞のイ音便は、佐渡島・富山県・岐阜県・長野県中部、南部・山梨県(東部除く)・静岡県以西。これより東は非音便(山梨も今は非音便が多い)。
命令形の「-よ」は、佐渡島・富山県・岐阜県・愛知県・長野県南部・静岡県中部以西。これより東は「-ろ」。静岡県中部は両者が混在[9]。
音韻
近畿・四国・中国方言では母音を明瞭に発音し、無声化が少ない。いっぽう北陸方言、雲伯方言では無声化がおこりやすい[10]。また近畿方言・四国方言では連母音の融合が起こらない。
近畿・四国・山陽方言では「う」は東日本よりも唇に丸みを持たせて発音する[10](円唇後舌狭母音[u])。雲伯方言や北陸方言では中舌母音[??]と発音され、出雲や富山では一部の行で[i]に統合する(ズーズー弁)。
北陸方言と近畿方言の一部を除いてガ行鼻音が起こらない[10]。
一部で「せ」「ぜ」を「しぇ」「じぇ」と発音する[10]。「せ」「ぜ」は元は関東の発音であり、かつては西日本全域で「しぇ」「じぇ」と発音した。
アクセント
脚注^ a b c 『岩波講座 日本語11方言』57頁-73頁。
^ 奥村三雄(1958年)「方言の区画」柴田武、加藤正信、徳川宗賢編『日本の言語学 第6巻 方言』大修館書店、1978年
^ a b c d e f g h i j k l 大橋勝男「本土方言下の東西方言」
^ a b c 真田信治ほか『県別方言感情表現辞典』東京堂出版、2015年
^ a b c d e f g 篠崎晃一『誤解されやすい方言小辞典』三省堂、2017年
^ 井上史雄・木部暢子編『はじめて学ぶ方言学』ミネルヴァ書房、2016年
^ 佐藤(1986)、159頁。
^ 平山輝男ほか『日本のことばシリーズ15新潟県のことば』明治書院、2005年、26頁。
^ 平山輝男ほか『日本のことばシリーズ22静岡県のことば』明治書院、2002年。
^ a b c d 平山輝男「全日本の発音とアクセント」
参考文献
飯豊毅一・日野資純・佐藤亮一編『講座方言学 1 方言概説』国書刊行会、1986年
加藤正信「音韻概説」
都竹通年雄「文法概説」
佐藤亮一「方言の語彙」
大野晋、柴田武編『岩波講座 日本語11方言』岩波書店、1977年、57頁-73頁
平山輝男「全日本の発音とアクセント」NHK放送文化研究所編『NHK日本語発音アクセント辞典』日本放送出版協会、1998年4月
佐伯哲夫・山内洋一郎編『国語概説』 和泉書院、1982年
大橋勝男「本土方言下の東西方言」
関連項目
日本語
日琉語族
日本語の方言
本土方言
東日本方言
八丈方言
西日本方言
北陸方言・近畿方言・四国方言