1980年(昭和55年)の授与基準では、国や地方公共団体、公益団体[注釈 7]などへ500万円以上の寄付をした個人、1000万円以上の寄付をした団体が主な対象となる(受けた団体から所管官庁宛てに上申―「この方は褒章を受けるに相応しい事を私共にして下さったので授与して頂きたい」という申し出―がされる)[注釈 8]。
寄付に対する返礼品の類を受け取った場合は対象とならない。
寄付額が1500万円以上など多額に上る場合には、併せて賞杯(桐紋付きの木盃)が授与される[3]。なお、1947年(昭和22年)から1964年(昭和39年)は10万円、1964年(昭和39年)から1980年(昭和55年)は100万円が授与の基準であった[22]。寄付額の改定に際しては、数年間は中間の額を設定するなど、移行暫定期間が設けられることもある[3]。
2021年には浜崎あゆみが国立国際医療研究センターに1千万円を、また西島隆弘が事業資金(義援金ではなく運営経費になる金)として日本赤十字社にやはり1千万円を、中居正広と香取慎吾が日本財団と共同で立ち上げた「LOVE POCKET FUND」基金に、YOSHIKIが自身の運営する基金「YOSHIKI FOUNDATION AMERICA」を通じて各所に多額の寄付をして、それぞれ授与されている(中居は紺綬褒章と共に賞杯も受けた)[31][32]。また、同年に大幸薬品が1万個のクレベリンを大阪府へ寄附した実績により紺綬褒章を授与されたが、翌2022年に消費者庁より同商品の景品表示法違反に基づく措置命令を出されたことを受け、同社は褒章を自主返納した[33]。「ノブレス・オブリージュ」も参照 褒章を授与される理由の事績を残した者が団体である場合には、自然人ではない団体がメダルを着けることはできないので、受章者名を法人・団体とした賞状「褒状」が授与される。褒状には各褒章と同様に授与の理由が記されているが、頭書には「緑綬」「紫綬」等の区分は冠されずすべて単に「褒状」となる。 褒章を授与する者に褒章と併せて賞杯を授与することがある(褒章条例5条)。特に、紺綬褒章に併せて授与する木杯については、授与の基準が公表されている。 褒章(紺綬褒章を除く)の授章対象者が死亡した場合は、遺族へ銀杯か木杯か褒状が授与される。これを遺族追賞という。 叙勲対象者でもあるときは、遺族追賞ではなく死亡叙勲が行われることとなる。 なお、褒章について定めた法律は存在しない。1952年(昭和27年)、褒章を含め栄典に関する事項は法律で定めるべきとの解釈の下、栄典法案が国会に提出されたことがあったが成立しなかった。そのため政府は褒章条例を政令により改正することで戦後の褒章制度の整備をするに至った。 栄典を所管するのは内閣府であり、事務執行機関として賞勲局が置かれている。元は1876年(明治9年)、太政官に新設された賞勲局が始まりであり初代長官には伊藤博文が就任、代々三条実美や西園寺公望らがトップに就く要職であった。戦後は総理府の一部局となった。 褒章の選考手続きについては各都道府県・各関係団体から具申を受けた各省庁大臣が賞勲局へ褒章候補者を推薦し、慎重な審査の上、閣議に請議されて決定されている。 その他、都道府県では知事による表彰として褒賞を授与する制度があるが、一般にこれを知事褒章と通称することがある。特に東京都では、東京都知事表彰として、功労ある消防団員に対する消防褒賞があり記念章が授与されることから、しばしば公私を問わずこれらを知事褒章、消防褒章と通称されることが多い。ただし、それら都道府県の「褒章」は正確には「褒章」ではなく「褒賞」であり、その位置付けは国の栄典ではなく東京都の表彰である。授与される記章も記念章であり、国の褒章とは異なる。
褒状
賞杯「賞杯」を参照
銀杯(桐紋)
木杯(一組台付・桐紋)
遺族追賞遺族追賞による褒状(寺崎乙治郎の遺族に対する褒状)
根拠法令
日本国憲法第7条7号(栄典の授与が天皇の国事行為と定められている)
明治十四年太政官布告第六十三号(褒章条例)[34]
褒章条例取扱手続(明治27年閣令第1号)[35]
勲章、記章、褒章等の授与及び伝達式例(昭和38年7月12日閣議決定)[5]
褒章の制式及び形状を定める内閣府令(平成15年5月1日内閣府令第55号)[36]
関係官庁
その他の褒賞
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 例:君塚(記章説)と小川(勲章説)の著書における扱い。
^ 2003年(平成15年)の栄典制度改革の前には、褒章は内閣の名で授与されたため、褒章の記には内閣の印が捺された。
^ 章の種印は1881年に後藤半左衛門光正が製作した[6][7]。
^ 1881年(明治14年)の創設時は「自己ノ危難ヲ顧ミス人命ヲ救助セシ者」とされた。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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