補体系
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レクチン経路(マンノース結合レクチン(Mannose-Binding Lectin、MBL)経路、MBL-MASP、: Lectin pathway)は古典経路に相同であって、C1qの代わりにオプソニン、マンノース結合レクチン、フィコリンを使う。この経路はマンノース結合レクチンが病原体表面のマンノース残基に結合することによって活性化される。これはMBL関連セリンタンパク質分解酵素であるMASP-1とMASP-2(それぞれC1rとC1sに似ている)を活性化しC4を分解してC4aとC4bに分け、C2を分解してC2aとC2bに分ける。C4bとC2aは古典経路と同じく、結合してC3転換酵素を形成する。これにより古典経路と同様、C5転換酵素であるC4b2a3bが形成され、以降古典経路と同様に進行する。

フィコリンはMBLに相同でMASPを介して同様な機能を果たす。無脊椎動物では適応免疫系はないのでフィコリンが幅を利かせており、病原体識別分子がないということを埋め合わせするように広範囲の結合特性をもっている。
補体系の制御

補体系は宿主細胞にきわめて強力な傷害作用を与える可能性がある。このことは活性化が強力に制御されていることを意味する。補体系は補体制御因子(補体制御タンパク質)によって制御されている。これらは血液の血漿に補体タンパク質以上に高濃度で含まれており、補体制御因子の中には、細胞が補体のターゲットとならないよう、細胞の膜表面に存在するものもある。CD59はMAC形成時にC9の重合を阻害する。CD46(MCP)はC3bとC4bを分解する。DAFはC3の活性化を阻止する。[4]補体制御因子は、異種移植において注目されている。ブタにヒトの補体制御因子を組み込むことで、ブタからヒトへの臓器移植時の拒絶反応が軽減される。
病気での役割

補体系は他の免疫性要素とともに多くの病気の原因となっていると考えられている。例を挙げるとBarraquer-Simons症候群、喘息、紅斑性狼瘡、糸球体腎炎、様々な関節炎、自己免疫性心臓病、多発性硬化症、炎症性大腸炎、虚血再灌流障害等である。アルツハイマー病やその他の神経変性病態を示す中枢神経系の病気にも、補体系が関与しているのではないかという疑いは次第に高まっている。

経路の最終段階のところの欠損によって自己免疫病と感染症の両方に罹りやすくなる場合もある(特にナイセリア髄膜炎ではC56789複合体がグラム陰性菌を攻撃する際の役割に原因があって)。

補体制御因子のH因子と補体調節蛋白の突然変異は非典型的溶血性尿毒症症候群に関係がある[5][6]。さらにH因子によく見られる単一ヌクレオチド多型(Y402H)は眼の習慣病の年齢に関連した黄斑変性症と相関がある[7]。両病気とも、最近の知見では宿主の表面での補体の異常活性に原因がある。
感染症による変調

最近の研究によってHIV/AIDSにおいて、補体系が操作され患者の身体にいっそうの傷害を与えていることが示唆されている[8][9]
追加説明図

(英語版の図版のポーランド語翻訳待ち)
代表的な補体とその働き

以下にその代表的なものを示す。

代表的な補体とその働きC1q標的の蛋白や表面に結合し、補体反応の基点となる。免疫複合体の形成。第1染色体短腕(1p34)にコードされる。
C1r・C1sセリンプロテアーゼ(
蛋白分解酵素の1グループ)であり、C4、C2を分解して活性化する。12番染色体短腕(12p13付近)にコードされる。
C2・C4C4b2a複合体を作り、C3を活性化する。免疫複合体の除去作用を持つ。
C3C3b4b2a複合体を構築し、C3/C5転換酵素となる。C5b以降の補体の活性化作用を持つ。
C3a、C5sマスト細胞を刺激してケミカルメディエーターを遊離させ、即時型反応(通称アナフィラキシー)を起こす(アナフィラトキシン)。
C3b異物に結合し、好中球マクロファージの貪食能を上昇させる(オプソニン化
C5a好中球を炎症部位に呼び寄せるケモカイン(遊走因子)。
C5b6789細菌細胞膜を破壊、免疫溶菌反応を起こす。

引用文献[脚注の使い方]^ 河本宏『もっとよくわかる! 免疫学』、2018年5月30日 第8刷、156ページ
^ a b Janeway CA Jr., Travers P, Walport M, Shlomchik MJ (2001). Immunobiology. (5th ed. ed.). Garland Publishing. ⇒(via NCBI Bookshelf) ISBN 0-8153-3642-X 
^ Goldman AS, Prabhakar BS (1996). The Complement System. in: Baron's Medical Microbiology (Baron S et al, eds.) (4th ed. ed.). Univ of Texas Medical Branch. ⇒(via NCBI Bookshelf) ISBN 0-9631172-1-1 
^ 『異種移植』みすず書房、2022年11月1日。 
^ Dragon-Durey MA, Fre'meaux-Bacchi V (2005). “Atypical haemolytic uraemic syndrome and mutations in complement regulator genes”. Springer Semin. Immunopathol. 27 (3): 359--74. doi:10.1007/s00281-005-0003-2. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}PMID 16189652. 


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