同年12月16日の官房長官記者会見において、北海道新聞の記者が「「反社会的勢力と判断して取引を停止した場合、相手に『定義を示せ』と言われ、訴訟や慰謝料を求められかねない」と、今回の閣議決定に対する不安」と報道したこと[12]を挙げ、「現場の混乱もあるように思うのですがいかがでしょう」と質問したことに対し、官房長官・菅義偉は「指針は全く変わっていません。」と答えている[13]。
なお、この指針に法的拘束力はないが、全国暴力追放運動推進センターらが実施した2018年のアンケート調査によると、指針に沿って対策を実施しているとする企業は1,598社中668社(41.8%)である[14]。 企業の契約・約款の中には、反社会的勢力とは契約を締結しない旨を宣言したり、契約後に相手方が反社会的勢力であることが判明した場合には契約を無催告で解除することができるとした規定を設けることが多い。このような規定を一般的に「反社会的勢力排除条項」という。また、代表的な反社会的勢力が暴力団であることから「暴力団排除条項」(暴排条項)とも呼ばれる。契約・約款に反社会的勢力排除条項がある場合、契約の相手方が反社会的勢力であると判明した場合には、企業側には契約を解除する権利(解除権)が法的に発生し、場合によっては損害賠償請求権も認められる。また、契約の際に、自身が反社会的勢力でないことを相手方に表明・確約させ、誓約書などの提出を求めることもある[15]。 2014年4月7日、最高裁判所は、約款で反社会的勢力からの貯金の新規預入申込みは拒絶すると定めている銀行において、自身が暴力団員であることを隠し、反社会的勢力でないことを表明・確約して、口座開設等を申し込み、通帳等の交付を受ける行為は、刑法246条1項における「人を欺いて財物を交付させ」る行為に当たり、詐欺罪が成立するとした[16]。
反社会的勢力排除条項
反社会的勢力排除条項に関する判例
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 「世界一安全な国、日本」の復活を目指し、関係推進本部及び関係行政機関の緊密な連携を確保するとともに、有効適切な対策を総合的かつ積極的に推進するために内閣総理大臣が必要に応じ主宰する会議。会議の構成員は全閣僚である。
出典^ “ ⇒Comprehensive Guidelines for How Companies Prevent Damage from Anti-Social Forces” (PDF). 金融庁. p. 87. 2019年12月13日閲覧。
^ a b 日本大百科全書(ニッポニカ)、デジタル大辞泉. “反社会的勢力”. コトバンク. 2019年12月13日閲覧。
^ “4. 愉快なことばではないけれど|2019年の選評
^ a b c d “犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ
^ “特集 組織犯罪を許さない社会を目指して ?資金獲得活動との対決?”. 警察庁. 2019年12月13日閲覧。
^ “暴力団資金源等総合対策に関するワーキングチームの設置について” (PDF). 首相官邸 (2006年7月21日). 2019年12月13日閲覧。
^ “企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針” (PDF). 犯罪対策閣僚会議 (2007年6月19日). 2019年12月13日閲覧。
^ “「コメントの概要及びコメントに対する考え方(反社会的勢力による被害の防止関連)」” (PDF). 金融庁. 2008年3月26日閲覧。
^ “「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」” (PDF). 金融庁. 2014年6月4日閲覧。
^ “第200回国会 112 反社会的勢力の定義に関する質問主意書”. 衆議院. 2019年12月13日閲覧。
^ “「反社会的勢力の定義に関する質問主意書に対する答弁書」” (PDF). 衆議院. 2019年12月10日閲覧。
^ “反社排除どうすれば? 「定義困難」と閣議決定 根拠崩れ道内に困惑”. 北海道新聞. 2019年12月14日閲覧。