裁判官
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一方、アメリカでは司法に対する国民の関心が極めて高いため、裁判官の詳しい経歴や担当事件がよく報道され[19][20][30]、最高裁判事の人事は扱いが非常に大きい[27][28][31][32][33]
日本の裁判官の現状

裁判官は建前上、独立して(ここでいう独立とは、人事を支配している最高裁判所事務総局、あるいは最高裁判所、高等裁判所、同僚、直接の上司等からのしがらみ、そして行政などのあらゆる権力から全て独立しているという意味である)、裁判を行うことが憲法に定められているものの、下級裁判所の裁判官についての人事権は最高裁判所が握っており、最高裁判所の意向に反する判決を出すとその裁判官は最高裁判所から差別的処遇(昇進拒否・左遷など)を受ける問題などは、米国の法学界からも指摘されている[34]

そのことから、日本の裁判所の司法行政は、人事面で冷遇されることを恐れて常に最高裁判所の意向をうかがいながら権力者に都合のよい判決ばかりを書く裁判官(通称:ヒラメ裁判官)が大量に生み出される原因になっていると批判されている[35]

また、憲法80条1項では、下級裁判所の裁判官の候補者を指名する権限は最高裁判所にあると定められており、裁判官の道を希望する司法修習生たちの中でも最高裁判所の意向にそぐわないと判断された者は裁判官への任官を一方的に拒否されるという問題も指摘されている。また、裁判官は任期が10年であり再任が原則であるが、宮本康昭(宮本判事補再任拒否事件)や井上薫など、再任が拒否された事例もある。

2011年度まで刑事部門の判検交流が行われていたために裁判所と検察庁の癒着が進められ、冤罪判決を作り出す原因の1つになっていると指摘する意見もある[36]。また、裁判官(24年間)と弁護士両方の経験がある秋山賢三によれば、日本の刑事司法の最大の問題点は、起訴事実について「合理的な疑いを超える程度の証明」を必要とする原則が守られておらず、冤罪の温床になっており、自らの能力に自信のあるエリート裁判官ほどその危険性が高いと主張している[37]

最高裁判所裁判官の人事権は、憲法上は内閣が握っている。
職業裁判官

キャリア裁判官職業裁判官)はさまざまな立場を実体験として経験する人生経験に乏しいことから、そのような裁判官の下す判決は世間一般の常識と乖離していると批判されたり、「裁判官は世間知らず」と揶揄されたりしている《ことに性犯罪に関しては、市民感覚を逸脱するかのような判決例が散見され、国会に於いても問題として採り上げられている[38][39][40][41]。また、弁護士側からも、直接当事者と接する機会がなく、他人からの批判を受ける機会に乏しい裁判官は「世間知らず」と指摘する意見がある。これに対して、裁判官側からは、多種多様な事件を扱うことや、地方勤務によって弁護士とは質的に異なる経験を積むことができるなどとする反論もある[39]
報道の影響

市民感情や報道に影響されず自由心証主義により判決を言い渡すのが裁判官のあるべき姿だが、実際には報道の影響を強く受けているといわれている。例えば、公判が終わると自分が関わっている裁判のテレビニュースを熱心にみる裁判官がいると言われている[42]
「裁判官は弁明せず」

裁判官には判決に書かれていることが全てであるという「裁判官は弁明せず」という考え方がある。後刻、記者会見に応じたり、メディアの取材に応じたり、自著で説明・釈明をしたりすることはほとんどない[注釈 4]。現在ではせいぜい、最高裁長官が就任・退任時や、原則として年1回、憲法記念日を前に会見して司法の課題などについて語ったり、最高裁判事や高裁長官や地裁所長が就任時に抱負を語ったりするくらいであり、審理終了後に審理した個別事件への具体的言及をすることはほとんどない[注釈 5]。ある元裁判官は、個別事件へのコメントは判決理由を後から変更するのに等しく、言い訳に過ぎないと取られると述べている。このような姿勢が、司法が国民から遠い存在といわれてしまう要因ではないかという指摘もある[45]
労働環境

労働環境は極めて悪い。裁判官は1人当たり200-300件の裁判を抱えることもあり、常に仕事に追われている。そのため、1件当たりに割く時間もどうしても少なくなってしまい、判決の内容も杜撰になる傾向がある。鬱や自殺者も増えているという[46]。その最大の原因は、日本では裁判官の定員が極端に少なく制限されている点にあるとされる。日本裁判官ネットワークでは、日本の裁判所を正常に機能させるには少なくとも7,000人の裁判官が必要であるとしているが、前述の通り現在の日本の裁判官の定員はその約半数に過ぎない。
日本の裁判官のシンボル

シンボルは篆書体の「裁」の文字を中央に配した八咫鏡であり、八咫鏡は真実をくもりなく映し出すので裁判の公正を表す。検察官の徽章と検察事務官の徽章は異なるが、裁判所の職員は皆このシンボルを象った徽章を使用している(裁判官が金メッキを用いるなど、細部が裁判官とその他の職員とで異なる)。

1949年(昭和24年)、最高裁判所は裁判官の制服に関する規則(最高裁判所規則)を設置し、裁判官は黒い制服(法服)を着用することとなった。これは「黒はどんな色にも染まらない」≒「どんな意見や圧力にも左右されない」という意味がある。女性用の法服にはリボンを付けることができる。
裁判官を題材にした作品

家栽の人 - 家庭裁判所裁判官が主役の青年漫画

それでもボクはやってない - 痴漢冤罪を通して日本の刑事裁判を描いた映画であるが、裁判の進行がリアルに描かれ、二人の正反対のタイプの裁判官が登場する。

ジャッジ ?島の裁判官奮闘記? - 小さな島の地家裁支部長となった裁判官を主役とするテレビドラマ。

BOX 袴田事件 命とは - 無実を確信した裁判官が、推定無罪の原則からも無罪を出そうとするが、合議制がそれを邪魔して結局死刑を判決してしまう。そんな裁判官の苦悩を描いた実話映画。

イチケイのカラス - 特例判事補である刑事裁判官が主人公の漫画

アメリカ合衆国の裁判官

アメリカ合衆国では裁判官の俸給の中央値は年収101,690ドルであり[47]、連邦裁判所の裁判官は年収208,000ドルから267,000ドルまでであり[48]、職業的な裁判官は往々にして高給を享受する。
制度

アメリカ合衆国の裁判制度は、大きく、連邦裁判所と州裁判所に分けることができ、それぞれ、アメリカ合衆国憲法および各州の憲法をそれぞれ中心とする法制度により規律されている。各裁判所の裁判官となる要件はそれぞれまちまちであるが、一般に、裁判官は、原則として、選挙ないしは特定の地位にある者による任命に基づいて選任される。弁護士などの法曹資格を有している者が選出されることが多いが、一般には必ずしも法曹資格は要件とされていない。

また、行政聴聞手続を担当する者として、連邦および各州の双方において、行政法審判官(Administrative Law Judge)の職が設けられており、行政機関の決定に対する不服の審査などを担当している。
連邦裁判所裁判官

連邦裁判所には、一般的な司法裁判所である連邦地方・控訴・最高の各裁判所があるほか、特別な事物管轄を有する裁判所として、連邦倒産・租税・国際通商・巡回控訴・請求・軍事控訴の各裁判所がある。このうち、連邦倒産・租税・請求裁判所を除く各連邦裁判所については、アメリカ合衆国憲法第3条の規定に服することから、その任命はアメリカ合衆国大統領によってなされ、任期は原則として終身とされており、連邦議会による弾劾の手続で認められなければ解職されない。連邦倒産・租税・請求・軍事控訴の各裁判所についてはアメリカ合衆国議会立法権の行使により設立された裁判所として理解されており、その裁判官については、それぞれの立法により、選出方法・任期が定められている。

連邦裁判所の頂点に立つ連邦最高裁判所の裁判官は、長である最高裁判所長官1名と陪席裁判官8名のあわせて9名を定員とする。連邦最高裁判所の判事となるために必要な資格は特に定められておらず、法曹資格を持たない者であっても構わない。ただし、現在までのところ、法曹資格を持たない者が任命された例はない。また、連邦最高裁判所の判事の候補者は上院による厳格な審査を受け、少なくとも上院全体の過半数の承認を得られなければ、実際に判事として任命されることはない。

一般的な司法裁判所としての連邦下級裁判所は12の連邦控訴裁判所(このほかに巡回控訴裁判所がある)と94の連邦地方裁判所があり、各下級裁判所の裁判官定員は連邦議会が制定した法律により規定されている。

連邦租税裁判所・連邦請求裁判所・軍事控訴裁判所の裁判官は、他の連邦裁判所同様、大統領が上院の助言と同意を受けて任命するが、任期は15年とされている。また、連邦倒産裁判所の裁判官は任期14年で各連邦控訴裁判所が任命する。


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