裁判官
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憲法上は、免官される場合は以下の場合に限られる[12]
分限裁判
分限裁判(憲法78条前段、裁判官分限法1条)により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合には、免官される。なお、憲法82条は、裁判の対審及び判決は公開法廷で行うこと、裁判官の全員一致で公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には対審は公開しないで行うことができること、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならないことを定めているが、1998年に最高裁判所大法廷は、裁判官の分限裁判を非公開の手続で行うことは憲法82条1項に違反しないと判決し、これを判例として分限裁判も非公開裁判としている[13][14]。分限免官の例としては1958年に長期療養を理由にした神戸家裁判事補、1986年の交際中の女性とともに行方不明になった大阪地裁判事の2例がある[15]
公の弾劾
(1)職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠ったとき、(2)その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったときは、国会裁判官訴追委員会による訴追請求及び裁判官弾劾裁判所弾劾により罷免となる(憲法78条前段、裁判官弾劾法2条)。
欠格

裁判所法第46条により、以下に該当する場合は裁判官になれない。
他の法律の定めるところにより一般の官吏に任命されることができない者

禁錮以上の刑に処せられた者[注釈 3]

弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者

日本の裁判官のチェックシステム

裁判官の自由心証主義民事訴訟法第247条、刑事訴訟法第318条)は、訴訟法上の概念で、事実認定・証拠評価について、裁判官の曖昧で自由な判断裁量権に委ねることをいい、また裁判所法3条は、裁判所は日本国憲法に特別の定めのある場合を除き一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有することを定めており、裁判官は一文のみで法律、憲法を解釈し規定する権限を与えられている。

一方、司法汚職の監視機関の乏しい日本においては、裁判官が誤判、道義違反、違法裁判、違法判決等をしたときや、その判決最高裁判所判例委員会の審査を経て判例となったときの対処法がほとんどない。

また行政機関は裁判官を懲戒することはできない(憲法78条後段)。
弾劾制度

憲法64条1項、国会法125条以下、及び裁判官弾劾法は、裁判官の罷免の訴追を行うのは、国会の両議院の議員で組織される裁判官訴追委員会であり、訴追を受けた裁判官を裁判するのは、同じく両議院の議員で組織される裁判官弾劾裁判所としている。

弾劾裁判の審理は公開されている。1948年から2024年までの間に、10例の弾劾裁判が行われている[16]
最高裁判所裁判官国民審査

最高裁判所裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に最高裁判所裁判官国民審査を受け、その後10年毎に国民審査を受ける(憲法79条2項)。投票者の多数が罷免を可とした場合は、その裁判官は罷免される(同条3項、最高裁判所裁判官国民審査法)。過去の国民審査では罷免を可とする投票の割合は平均6?8%前後であり、現在まで国民審査により罷免された裁判官はいない。
裁判官忌避制度

民事訴訟法刑事訴訟法行政事件訴訟法家事事件手続法非訟事件手続法等が裁判官の忌避制度を定めており、裁判の当事者は、裁判官に対し忌避の申立てを行うことができる。忌避が認められることはほとんどない。
報道

日本の裁判官は詳しい経歴や担当事件が報道されることが少なく[17][18][19][20]マスコミからのチェックを受けていないといわれている[21][22]。理由として、「世の中を変えるような判決を書く裁判官がいない」「驚きがないから裁判官モノへの読者ニーズがない」などがあげられている[23][24]。また最高裁判所判事の報道も少ないことも国民審査の形骸化につながっているといわれている[25][26][27][28][29]。裁判事件の多い東京地方裁判所の建物内には司法記者クラブが置かれているが、裁判に関する記者会見を行うには申込みが必要であり、開催もまれである。

一方、アメリカでは司法に対する国民の関心が極めて高いため、裁判官の詳しい経歴や担当事件がよく報道され[19][20][30]、最高裁判事の人事は扱いが非常に大きい[27][28][31][32][33]
日本の裁判官の現状

裁判官は建前上、独立して(ここでいう独立とは、人事を支配している最高裁判所事務総局、あるいは最高裁判所、高等裁判所、同僚、直接の上司等からのしがらみ、そして行政などのあらゆる権力から全て独立しているという意味である)、裁判を行うことが憲法に定められているものの、下級裁判所の裁判官についての人事権は最高裁判所が握っており、最高裁判所の意向に反する判決を出すとその裁判官は最高裁判所から差別的処遇(昇進拒否・左遷など)を受ける問題などは、米国の法学界からも指摘されている[34]

そのことから、日本の裁判所の司法行政は、人事面で冷遇されることを恐れて常に最高裁判所の意向をうかがいながら権力者に都合のよい判決ばかりを書く裁判官(通称:ヒラメ裁判官)が大量に生み出される原因になっていると批判されている[35]

また、憲法80条1項では、下級裁判所の裁判官の候補者を指名する権限は最高裁判所にあると定められており、裁判官の道を希望する司法修習生たちの中でも最高裁判所の意向にそぐわないと判断された者は裁判官への任官を一方的に拒否されるという問題も指摘されている。また、裁判官は任期が10年であり再任が原則であるが、宮本康昭(宮本判事補再任拒否事件)や井上薫など、再任が拒否された事例もある。

2011年度まで刑事部門の判検交流が行われていたために裁判所と検察庁の癒着が進められ、冤罪判決を作り出す原因の1つになっていると指摘する意見もある[36]。また、裁判官(24年間)と弁護士両方の経験がある秋山賢三によれば、日本の刑事司法の最大の問題点は、起訴事実について「合理的な疑いを超える程度の証明」を必要とする原則が守られておらず、冤罪の温床になっており、自らの能力に自信のあるエリート裁判官ほどその危険性が高いと主張している[37]

最高裁判所裁判官の人事権は、憲法上は内閣が握っている。
職業裁判官

キャリア裁判官職業裁判官)はさまざまな立場を実体験として経験する人生経験に乏しいことから、そのような裁判官の下す判決は世間一般の常識と乖離していると批判されたり、「裁判官は世間知らず」と揶揄されたりしている《ことに性犯罪に関しては、市民感覚を逸脱するかのような判決例が散見され、国会に於いても問題として採り上げられている[38][39][40][41]


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