裁判官
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かつて公務員の中で最も低い部類に属していたが、山口良忠判事の死亡を背景に戦後に引きあがった[8]。裁判官の給与は在任中減額することができないとされている(憲法80条2項)。

ただし最高裁判所は、2002年9月4日、裁判官会議を経て、国家公務員の月給部分引き下げを求めた人事院勧告に伴い、裁判官の月給についても初めて減額を容認することを決定した[9]。この裁判官給与減額については、憲法80条2項に反し違憲ではないかとの学説もあったが、裁判官会議では、国家財政上の理由などで、やむを得ず立法、行政の公務員も減額される場合、全裁判官に適用される報酬の減額は身分保障などの侵害に当たらず許されるなどとされた。さらに、東日本大震災の震災復興の原資にするとして、2012年2月29日成立した裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律により、2012年度から2年間、裁判官給与が減額されることとなった。

なお、裁判官の給与は、最高裁判所規則である「裁判官の報酬以外の給与に関する規則」に基づいての初任給調整手当等の適用対象となる。
キャリア・システム

日本の下級裁判所の裁判官は旧司法試験に合格した者か、もしくは法科大学院課程を修了し新司法試験に合格した者で、司法研修所における司法修習を終え法曹資格を得た者の中から、最高裁判所下級裁判所裁判官指名諮問委員会の審理を経て、判事補として任命される者が多い。日本の憲法上、下級裁判所の裁判官は10年の任期制になっており、初めの10年は、3名の合議体の中で判事補として実務経験を経て、再任時に判事となる。また、最高裁判所は、各部に所属する裁判官のうち1人を「部の事務を総括する裁判官」(部総括判事)に指名する(下級裁判所事務処理規則4条)。

この点、アメリカなどで行われている法曹一元制とは異なるが、裁判所検察庁では判検交流と呼ばれる人事交流制度があり、裁判官から検察官になる者がいる[10]。また、弁護士任官制度が導入されており、数は少ないが弁護士から裁判官になる者もいる。逆に、裁判官を辞めて弁護士になる者も少なくないが、これらの元裁判官弁護士は、俗に「ヤメ判」弁護士と呼ばれる。
分限制度

最高裁判所は、国家公務員倫理法最高裁判所規則等に基づき裁判所職員倫理審査会を設置してはいるものの、裁判官の職権行使の独立を保障し、裁判官が行政府の圧力から独立して裁判を行えるよう強固な身分保障が行われていたが、裁判所法裁判官分限法に加え、2014年の裁判所職員臨時措置法の施行による国家公務員法国家公務員倫理法の一定の条文の適用により、裁判所の職員に対する規制は強化されることとなった。

ただし1947年に日本国憲法が制定されてからは裁判官に対する減給処分が不可能である状態が継続しており、国外からも批判がある[11]

憲法上は、免官される場合は以下の場合に限られる[12]
分限裁判
分限裁判(憲法78条前段、裁判官分限法1条)により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合には、免官される。なお、憲法82条は、裁判の対審及び判決は公開法廷で行うこと、裁判官の全員一致で公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には対審は公開しないで行うことができること、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならないことを定めているが、1998年に最高裁判所大法廷は、裁判官の分限裁判を非公開の手続で行うことは憲法82条1項に違反しないと判決し、これを判例として分限裁判も非公開裁判としている[13][14]。分限免官の例としては1958年に長期療養を理由にした神戸家裁判事補、1986年の交際中の女性とともに行方不明になった大阪地裁判事の2例がある[15]
公の弾劾
(1)職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠ったとき、(2)その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったときは、国会裁判官訴追委員会による訴追請求及び裁判官弾劾裁判所弾劾により罷免となる(憲法78条前段、裁判官弾劾法2条)。
欠格

裁判所法第46条により、以下に該当する場合は裁判官になれない。
他の法律の定めるところにより一般の官吏に任命されることができない者

禁錮以上の刑に処せられた者[注釈 3]

弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者

日本の裁判官のチェックシステム

裁判官の自由心証主義民事訴訟法第247条、刑事訴訟法第318条)は、訴訟法上の概念で、事実認定・証拠評価について、裁判官の曖昧で自由な判断裁量権に委ねることをいい、また裁判所法3条は、裁判所は日本国憲法に特別の定めのある場合を除き一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有することを定めており、裁判官は一文のみで法律、憲法を解釈し規定する権限を与えられている。

一方、司法汚職の監視機関の乏しい日本においては、裁判官が誤判、道義違反、違法裁判、違法判決等をしたときや、その判決最高裁判所判例委員会の審査を経て判例となったときの対処法がほとんどない。

また行政機関は裁判官を懲戒することはできない(憲法78条後段)。
弾劾制度

憲法64条1項、国会法125条以下、及び裁判官弾劾法は、裁判官の罷免の訴追を行うのは、国会の両議院の議員で組織される裁判官訴追委員会であり、訴追を受けた裁判官を裁判するのは、同じく両議院の議員で組織される裁判官弾劾裁判所としている。

弾劾裁判の審理は公開されている。1948年から2024年までの間に、10例の弾劾裁判が行われている[16]
最高裁判所裁判官国民審査

最高裁判所裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に最高裁判所裁判官国民審査を受け、その後10年毎に国民審査を受ける(憲法79条2項)。投票者の多数が罷免を可とした場合は、その裁判官は罷免される(同条3項、最高裁判所裁判官国民審査法)。過去の国民審査では罷免を可とする投票の割合は平均6?8%前後であり、現在まで国民審査により罷免された裁判官はいない。
裁判官忌避制度

民事訴訟法刑事訴訟法行政事件訴訟法家事事件手続法非訟事件手続法等が裁判官の忌避制度を定めており、裁判の当事者は、裁判官に対し忌避の申立てを行うことができる。忌避が認められることはほとんどない。
報道

日本の裁判官は詳しい経歴や担当事件が報道されることが少なく[17][18][19][20]マスコミからのチェックを受けていないといわれている[21][22]。理由として、「世の中を変えるような判決を書く裁判官がいない」「驚きがないから裁判官モノへの読者ニーズがない」などがあげられている[23][24]


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