表面重力
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トリトン (Triton)0.0797
冥王星0.067
エリス (Eris)0.0677
P67 (Churyumov?Gerasimenko)0.000017

ニュートンの重力理論によれば、物体に及ぼされる万有引力(以降では単に重力と呼ぶ)の大きさはその物体の質量比例する。つまり、ある物体の質量を 2 倍にすると、その物体に及ぼされる重力の強さも 2 倍になる。また、ニュートンの重力は逆2乗の法則にも従い、遠く離れた天体から物体に及ぼされる重力の強さは、物体と天体の距離の逆 2 乗に比例する(言い換えれば距離の2 乗反比例する)。例えば、物体と天体の距離を 2 倍に離すと、天体から及ぼされる重力は 1/4 となり、距離が 10 倍になれば重力の強さは 1/100 となる。同様の法則はの強度についても成り立ち、点光源から出る光の強さは、点光源との距離の逆 2 乗に比例して小さくなっていく。

通常、惑星恒星のような大きな物体は、静力学平衡(すべての表面上の点が同じ量の重力ポテンシャルを持つ)となるように、ほとんど球形になる。静力学平衡形へ向かうメカニズムはスケールによって異なる。小さなスケールでは、高地が侵食され、侵食された部分が低地へと堆積することによって平衡形へ向かう。大きなスケールでは、惑星や恒星そのものが変形することによって平衡形へ向かう[4]。この静力学平衡へと向かう作用から、自転の速度が比較的小さな多くの天体の形は、ほとんど球形であると考えることができる。しかし、巨大な質量を持った若い星については、その赤道上の自転速度が非常に大きく、200 km/s かそれ以上に達するため、例外的に大きな赤道バルジ(英語版)(赤道部分の膨らみ)を持つ。そのような高速回転星(: rapidly rotating star)として、アケルナルアルタイルレグルスAベガ[5]が知られている。
球対称な天体の場合

大きな天体の多くはほとんど球形と見なせるという事実から、それらの表面重力を容易に計算することができる。ニュートンが示したように[6]球対称な物体の外側でその物体が及ぼす重力は、その物体の質量が重心に集中した場合に及ぼされる重力に一致する(つまり球対称な物体を同質量を持つ質点に置き換えることができる)。従って天体の表面重力は、天体の大きさや形状を無視できる遠距離での重力と同じく、近似的に逆 2 乗の法則に従うと考えられる。天体の表面重力の大きさは近似的に、その天体の質量が定まっているなら半径の 2 乗に反比例し、平均密度が定まっているなら半径に比例する[注 2]

例えば、2007年に発見された惑星グリーゼ581cは、少なくとも地球の 5 倍の質量を持つが、その表面重力は 5 倍を持っているとは考えられない。もしグリーゼ581cが我々が想定するように地球の 5 倍程度の質量しか持たず[7]、また巨大な鉄の核を持つ岩石惑星であるならば、グリーゼ581cの半径は地球に比べて 50% ほど大きくなければならない[8][9]。そのような惑星の表面における重力の強さは、おおよそ地球の 2.2 倍となるはずである。その惑星が氷や水に富んだ惑星であるならば、惑星の半径は地球の 2 倍程度の大きさとなるはずであるが、そのような惑星の表面重力は地球の重力の 1.25 倍程度にしかならない[9]

表面重力と天体の質量および半径の間には以下の関係が成り立つ。 g = m r − 2 . {\displaystyle g=mr^{-2}.}

この関係から先に述べた表面重力と質量の比例関係と、表面重力と半径の逆 2 乗の比例関係の両方を示すことができる。ここで g は地球に対する表面重力の比、m は地球に対する質量の比、r は地球に対する平均半径の比である[注 3][10]。なお、地球の質量は 5.976×1024 kg、平均半径は 6.371×103 km である。また、地球の表面重力が標準重力加速度に一致する必要性はない。

例えば、火星の質量は 6.4185×1023 kg = 0.1074 地球質量であり、平均半径は 3.390×103 km = 0.5321 地球半径である[11]。従って、火星の表面重力は 0.1074 0.5321 2 = 0.379 {\displaystyle {\frac {0.1074}{0.5321^{2}}}=0.379}

より地球の 0.379 倍と近似することができる。

地球を基準にせず、天体の表面重力を直接求めることもできる。ニュートンの万有引力の法則より、球対称な天体の表面重力 g は g = G m r − 2 {\displaystyle g=Gmr^{-2}}

となる。m は天体の質量、r は天体の平均半径、G は万有引力定数である。天体の平均密度を ρ = m/V によって表せば、天体の体積 V は球の体積の公式 V = .mw-parser-output .sfrac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .sfrac.tion,.mw-parser-output .sfrac .tion{display:inline-block;vertical-align:-0.5em;font-size:85%;text-align:center}.mw-parser-output .sfrac .num,.mw-parser-output .sfrac .den{display:block;line-height:1em;margin:0 0.1em}.mw-parser-output .sfrac .den{border-top:1px solid}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}4π/3r3 から求まるため、上記の関係は密度 ρ を用いて以下のように書き換えられる。 g = 4 π 3 G ρ r {\displaystyle g={{\frac {4\pi }{3}}G\rho r}}

この関係から、平均密度を一定に保つ場合、表面重力 g は平均半径 r に比例することが分かる。たとえば、主な構成物質の似た天体同士の表面重力をそれらの半径について比較した場合、上記の比例関係が成り立つと期待できる。

重力は距離の 2 乗に反比例するので、地球から 100 km ほど離れた宇宙ステーションにおいても、重力の強さは地球表面の 5 % ほどしか小さくならず、地球の重力は地球表面とほぼ同じように感じられる。宇宙ステーションで地球へ物が落ちない理由はそこに重力がないからではなく、宇宙ステーションが自由落下軌道(: free-fall orbit)にあるからである。自由落下軌道上の宇宙ステーションから見ると、地球重力を相殺するように慣性力が働くため、見掛け上は重力がなくなったかのように思えるのである。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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