衛星攻撃兵器
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2010年10月のNASAの報告によれば、衛星破壊実験から3年半が経過した時点でも97%の破片は軌道上に残ったままであり、2010年9月の時点でこの破壊実験で生じたデブリは3,037個が確認されている。これは高度2,000km以下にある人工物体の22%を占める量に相当する[9]

2013年1月には衛星破壊実験で生じた破片の1つがロシアの人工衛星と衝突したという説が一時期唱えられた(詳細は「BLITS」参照)。

2013年時点は、中国としても国際的非難を避けるためにあからさまな衛星攻撃兵器の実験はできず、2010年頃から、DF-31の改良型をベースとした弾道弾迎撃ミサイルの実験を行っているが、衛星攻撃兵器の実験も兼ねていると考えられている。
攻撃の手段
大気圏内からの攻撃

地上や空中から発射するミサイル、高出力レーザーにより人工衛星に物理的な衝撃や損傷を与える攻撃手法。
アメリカ合衆国F-15によるASATの発射実験ASM-135はF-15の胴体下面に搭載される詳細は「en:Operation Burnt Frost」および「en:Bold Orion」を参照

アメリカ空軍では1959年に空中発射ASATの実験を試みている。空中発射弾道ミサイル開発計画であった「WS-199ボールド・オライオン計画」(Bold Orion)はB-47ストラトジェットをミサイルの発射機にした計画であったが、肝心のB-47の旧式化によって計画の見直しを迫られた結果、対衛星ミサイルとしての利用が考えられた。このWS-199ボールド・オライオン計画の三段式ミサイルを使った発射実験は1959年の10月13日に科学衛星をかすめる形で実施され、多少のずれがあったものの一応の成果を出して終了した[10]

アメリカ海軍では、1959年7月から始まった「ノッツニク計画」ではF4Dスカイレイ(Skyray)戦闘機によって5段式ロケット・モーターを持つNOTS-EV-1ミサイルが成層圏まで運ばれて発射された。発射時950kgで最終段は1kg程の小型ミサイルであった。何度かの実験でもあまり良い結果が得られなかった。1960年7月からの「キャレブ計画」においてNOTS-EV-2ミサイルが同じくF4Dスカイレイ戦闘機とF-4ファントム戦闘機で運ばれ発射実験が行なわれた[10]

アメリカで最も実用に近づいた衛星攻撃兵器は、空軍の対衛星ミサイルASM-135 ASATである。1969年のソビエトの衛星攻撃成功のニュースに刺激されて、1977年から開発を再開した。新たに始まった「ASAT計画」は、航空機発射の2段式固体ロケット・モーターを持ったASM-135 空中発射ミニチュア・ビークル(air-launched miniature vehicle)と呼ばれるミサイルとその弾頭にあたるミニチュア・ホーミング・ビークル(miniature homing vehicle, MHV)より構成された。ロケット・モーターは2段とも既存のミサイルのものを使用し、60kgのMHVを最大1,900kmの高さまで打ち上げることができた。これは低軌道衛星の高度を全て含んでいたため、偵察衛星を攻撃するのには十分であった[10]

1984年1月から実際の衛星を目標にした試射実験が行われた。ASM-135ミサイルはF-15戦闘機に搭載されて高度1万2千メートルで空中発射された。5回の実験のうち1回(1985年9月13日)は目標衛星P78-1 SolwindにMHVを命中させて破壊することに成功、標的衛星を使わず星をターゲットにしたMHVの仮想発射実験も3回行なった。開発は順調であったが、破壊された衛星の破片がスペースデブリとなって衛星軌道上に残留し、今後の宇宙開発計画に対して危険をもたらすと判断したアメリカ合衆国議会の決定によって計画は中止された[10]

この他に地上配備型対衛星ミサイルとして、アメリカ陸軍では1963年から1966年までとして3段式のLIM-49ナイキ・ゼウスミサイル(Nike-Zeus missile)を太平洋クェゼリン環礁に実戦配備していた[10]。また、米空軍は1964年4月からソーミサイルをハワイジョンストン島で実験を行い、同年9月から1974年8月まで同島で実戦配備していた。これらは核弾頭により衛星破壊を試みるものである[10]

なお後述するように[要説明]、2006年9月に中国の対衛星兵器による攻撃を受けたとの報道がされていることから、米国の衛星には一定の被攻撃を感知する能力が付与されていると考えられる。

2008年2月21日には、制御不能に陥り地上に落下する危険性のあったアメリカ国家偵察局の偵察衛星USA-193を、海上から発射したミサイルで落下前に破壊する実ミッションが敢行された。これはイージス艦 レイク・エリー(CG-70 タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦)から、本来は弾道ミサイル迎撃用に開発されたスタンダードミサイル(SM-3)を発射して行ったものであり、純粋なASATとは異なる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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