非行が深刻でない、臨床的に著しい機能の障害を引き起こしていないものは該当しない[13]。素行が、混乱した家庭、虐待を受けてきたなど、子どもの環境における文化水準に相当する場合は適応障害である[13]。特に小児や思春期では家族や環境に対するストレス反応であることもあり[14][15]、初期の診断は不適切となりやすく慎重に診断すべき、あるいは診断しないようにすべきである[15]。発症が遅いほど一過性の可能性と、他の理由の可能性を考慮する必要がある[16]。
物質中毒、物質依存に関連して生じる場合も除外する必要があり[1][17]、使用に対処すれば行動が消失することもある[18]。行動上の厄介さは、注意欠陥・多動性障害でも生じるが問題の重大さが異なる[13][14]。
法的な侵害がない場合、反抗挑戦性障害である[13]。素行症と、反抗挑発症は素行の程度の連続上にあり、鑑別において特にストレスの多い劣悪な環境で子供が育っている場合には、反抗挑発症としたほうが子供には良いと考えられる[19]。深刻だが、診断基準に満たない場合、診断コードV71.02小児および思春期の反社会的行為である[7]。 次のような要因が多面的、かつ複雑に影響し合っている。 3-7歳の子どもが多く集まる学級では、行為障害の発症リスクが高いという証拠がある[20][21]。また早期介入によって行為障害の発症リスクを減らせるという証拠がある[20]。NICEはクラス単位で、感情学習、問題解決のプログラムを実施するよう勧告し、1学年で30人以下のクラス単位で行うとしている[20]。 行為障害の有病率は、1-10%の範囲とされている[2]。カナダの9-19歳人口においては6.8%であった(2011年)[22]。しかし少年更生施設においては、米国法務省によれば23-87%とされる[23]。 行為障害に対する最も効果のある治療は、個人、学校、家庭の環境統合である。家族には心理教育を提供する[1]。加えて治療においては、夫婦間衝突や母親の抑うつなど、家庭内の衝突に注目すべきである。治療においては多くの問題行動のトリガーになる可能性について注目することとなる。 多くの治療法が存在するが、最も効果的なのはマルチシステミックセラピー ほか、ペアレント・トレーニング 認知行動療法、生活技能訓練などの利用も考慮できる[1]。 MSTは、個人の問題行動が広い文脈において、どのように当てはまるかを強調する、集中統合的な治療である。個人が接続されたシステム(家庭・学校・隣家)の中には、その個人の反社会的行動を強化するパターンの存在が発見される。MSTは、個人と家庭の力を借りて、それらへの接続を断ち切ろうとする心理療法である。 訓練を経た専門家によって、毎週3-4回のセラピーを3-5ヶ月間実施する[25]。 児童青年精神医学の専門医がいなければ、薬物療法はすべきではない[1]。 NICEは、行為障害または反抗挑戦性障害を抱える児童青年に対しては、継続的に薬物療法を試みてはならないとしている[26]。NICEは深刻な攻撃的行動に対して短期間の介入にはリスペリドンを提案しているが、しかし臨床ガイドラインを遵守し専門家の手で注意深く処方されなければならないとしている[26]。 アメリカでは児童に少しでも問題行動があったり、癇癪持ちだったりすると注意欠陥・多動性障害や行為障害などの精神疾患と診断され、リタリンによる薬物治療が継続して行われること(「薬漬け」と形容される)が問題になっている[27]。ナラティヴ・アプローチの普及を目指す医療ソーシャルワーカーのデイヴィッド?ナイランドは、安易に児童を精神疾患と診断することで、周囲が色眼鏡でその児童を見るようになり、児童自身も自己暗示でその精神疾患の特徴とされる行動規則から逃れられなくなり、自己肯定感も下がることを批判している[28]。それらの治療では反抗的行動と見なされる行為を抑え込むことがとりわけ強調されるが、ナイランドは一概に従順を求めることでその人物の個性を潰すことになることを憂慮している。ナイランドは、既成の社会の価値観や法律(逃亡奴隷法)に逆らって、黒人奴隷のジムと共に奴隷制を廃止した自由州へ向かうハックルベリー・フィン(『ハックルベリー・フィンの冒険』の主人公)が現代に生きていれば不適切な治療で個性を潰されることになるだろうと述べている[29]。ナイランドによれば、一昔前のアメリカ社会では児童がそれらの問題行動を起こしても、いたって「普通」だと見なされていたという[30]。ナイランドの考えは医学博士ジーン?コムズも賛成している[31]。
背景
個人の要因
家庭の要因
社会文化的要因
疫学
有病率
対応
マルチシステミックセラピー
薬物での介入
過度の従順を強制することへの批判
出典^ a b c d e f 世界保健機関 2010, BEH.
^ a b Hinshaw, S. P., & Lee, S. S. (2003). Conduct and oppositional defiant disorders. In E. J. Mash & R. A. Barkley (Eds.), Child psychopathology (pp. 144-198). New York: Guilford Press.
^ a b 世界保健機関 2005, pp. 275?276.
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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