なお血流は、基本的には脈流(流量が一定の流れではなく、脈を打つ流れ、流量が周期的に変化する流れ)である。 血液が血管の中を流れる原動力になっているのは、心臓のポンプ機能による血液の拍出である。血管壁は弾性・可動性に富む構造をしているため、血液と血管壁との間で力の相互作用が働き、お互いの力学的挙動に影響を与え合う。それ故、血液の循環動態を考察するには流体力学と弾性力学の基本的な理解が必要である。 通常血流は層流であるため、血流の流速は血管の断面積に反比例する関係にあり、従って断面ごとに異なる流速を持つ。このため流速は血管の中心付近で最速となり、血管壁付近で最も遅くなる。流速に言及する際には通常は平均速度を用いる[6]。 血流の流速を測定するにはレーザードップラー流速計等、種々の方法がある[7]。動脈における流速は拡張期 以下にダーシーの法則[9](Darcy's law 記号: F = blood flow 血流 (m*s-1)P = pressure 圧 (Pa)R = resistance 抵抗 (m-1)ν = fluid viscosity 流体の粘度 (Pa・s)L = length of tube チューブ長(m)r = radius of tube チューブ半径(m) 2番目の式で示されるように、チューブの半径によって劇的に抵抗は変化する。こうした原理で、寒さなどで血管がわずかに収縮すると極端に血流が低下することになるわけであるし、入浴などして血管の半径がわずかに大きくなると血流は一気に増えるわけである。また、血管形成術ではバルーンカテーテルによりわずかに半径を大きくすることで血流を増大させることが可能になるのである。 血流計 また、位相コントラストMRI、 超音波計測を応用したVector Flow MappingやEcho PIVを用いて血流をベクトルとして可視化する手法も研究されている。 MRIの一手法である位相コントラスト法を用いた血流可視化計測手法。傾斜磁場によって生じるプロトンの位相差が流体の速度と比例することを利用し、2方向ないしは3方向の傾斜磁場で撮影された画像を合成することで血流速度の空間的な分布をベクトルとして可視化する手法である。3次元的に撮影されたものを特に4D Flow MRIと呼ばれ、3次元の血流ベクトルを実測できる唯一の手法である。 カラードプラとスペックルトラッキングを重ねあわせ、計測面内での流量保存を仮定して血流を可視化する手法である。板谷慶一らによって開発された。Echo PIVのように造影剤を使わないため非侵襲に簡便に計測することができる。[12]
血流の生体力学
定量的記述
拍動指数(PI)
ダーシーの法則とハーゲン・ポアズイユの式
計測
位相コントラストMRI
Vector Flow Mapping (VFM)
原理としてはカラードプラで計測されるプローベからのビーム方向血流速度に加え、ビーム直交方向の血流速度を計算により求めることで2次元のベクトルとして血流を可視化する。
心室内では下記のアルゴリズムでビーム直交方向の血流速度が求められる。[13]
心室の内腔の計測断面内を四角形の網目状に分割する。
超音波の計測面で面外への流入出が無いという仮定のもと、心臓の壁に隣接した網目で流量保存則を計算する。上下の辺の流入出はカラードプラから既知であり、壁の隣接する辺の流入出はスペックルトラッキングの壁の速度から算出可能であり、残った1辺の流入出が計算される。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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