ヒトの成人の血管を全て真っすぐに繋げるとおよそ10万km(地球の赤道の約2.5倍の長さ)に及ぶ。 血管は能動的に血液輸送はしない(感知できる程の蠕動運動はしない)が、動脈(ある程度なら静脈も)は自律神経による筋層収縮によってその内径を調節し、下流臓器への血量を変えることができる。血管拡張と血管狭窄は体温調節のように互いに拮抗的に働く。 酸素(赤血球のヘモグロビンに結合)は血液によって運ばれる最も重要な物質の一つである。肺動脈を除く全ての動脈では、ヘモグロビンは殆ど(95-100%)酸素で飽和している。一方、肺静脈を除く全ての静脈では約70%ほどに不飽和化するが、肺循環経由でこの値は戻される。 血管に於ける血圧は通例水銀柱ミリメートルで表される。 心臓から送り出される血液が通るのが動脈、心臓へ戻る血液が通るのが静脈である。また、動脈には弾性型動脈と筋型動脈が存在する[1]。動脈と静脈は、基本的には同じような構造であるが、動脈には心臓からの強い圧力がかかるため、壁が非常に厚くなっている。静脈では、そのような圧力がかからないので、壁が薄くなっているほか、逆流しないように弁が付いている。太い動脈には大きい圧力がかかっているため、仮に傷によって体外に開いた場合、出血量が非常に多くなり、失血死の危険が大きい。そのため、大抵の場合、静脈が体表側を通り、動脈はより内側を通る。 動脈を通る血液を動脈血、静脈を通る血液を静脈血という。例外は心臓から肺への肺動脈と肺から心臓へはいる肺静脈の場合(肺循環)であり、肺動脈は静脈血が通り、肺静脈は動脈血が通る。陸上脊椎動物においてこの二つの違いは、主にお酸素含有量の差であり、動脈血は酸素を多く含み(酸素ヘモグロビンの率が高く)、血液は鮮やかな赤色をしている。静脈血は酸素を失っているため、限りなく黒に近い赤色になっている。 多くの動物では、血管は全身に渡って互いに繋がり、血管系あるいは循環系をなす。血管系は動物の分類群により構成が異なり、開放血管系、閉鎖血管系の2種類がある。 動脈、静脈からなる。心臓から繋がる動脈は体の各部に伸びて、そこで口を開く。動脈から流れ出た血液は、直接細胞間を経由し(毛細血管がない)、静脈へ戻る。昆虫などの節足動物、軟体動物などの動物群にみられる。 単層の扁平な血管内皮に裏打ちされる。 動脈、静脈、毛細血管からなる。動脈から流れ出た血液は、毛細血管を経て静脈へ戻る。血液は血管内に閉じこめられている。血漿やリンパ球は血管壁から出て、周囲の細胞と細胞との間を埋める組織液として、血液と細胞との間の物質の運搬などを担う。脊索動物(ただし一部の原索動物を除く)、環形動物に見られる。当然ながらヒトも閉鎖血管系である。 血管は外傷や様々な疾患に見舞われ、外傷による大量の出血や重要な血管の破裂または塞栓・狭窄は死亡につながることもある(脳血管障害、大動脈解離など)。循環器科よりさらに特化した血管科を設けている医療機関もある[3]。 内圧は低く破裂を起こしにくいため関連疾患はほとんどの場合、その狭窄に関するものである。静脈を圧迫する典型的な原因に大動脈の拡張、妊娠による子宮の拡大、腹部の悪性腫瘍(大腸がん、腎細胞がん 下大静脈の閉塞は稀であるが、命にかかわり緊急性が高いとされる。深部静脈血栓症や肝移植、大腿静脈のカテーテルなどの医療器具で閉塞を起こすことがある[5]。 動脈硬化症などにより機能しなくなった血管の置き換え、血管のバイパス手術のために人工血管が開発されており、1950年代からヒトの治療に実用化されている[6]。 ステントグラフトとは、19世紀のイギリスの歯科医Charles R. Stent
生理学的観察
動脈と静脈詳細は「動脈」および「静脈」を参照
血管系詳細は「血管系」を参照
開放血管系
閉鎖血管系
血管に関する医学
人工血管
ステントグラフト
脚注^ a b c 『岩波生物学辞典』p.399d「血管」
^ a b 『カラー図解 人体解剖の基本がわかる事典』p.140
^ 血管科へようこそ
^ Brophy CM, Evans L, Sumpio BE. Defecation syncope secondary to functional inferior vena caval obstruction during a Valsalva maneuver. Ann Vasc Surg. 1993 Jul;7(4):374-7. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}PMID 8268080
^ Geehan DM, Inferior Vena Caval Thrombosis, emedicine.com, URL: ⇒http://www.emedicine.com/med/topic2718.htm, Accessed: August 3, 2005.
^ 【Tech X】大動脈手術1回に半減 テルモ、「混合型」人工血管で『日経産業新聞』2022年6月7日16面
^ 腹部大動脈瘤のステンドグラフト治療,『杏林医会誌』,p176
^ 人工血管の進歩『人工臓器-人工臓器の進歩-』,p177
参考文献
巌佐庸・倉谷滋・斎藤成也・塚谷裕一 編『岩波生物学辞典』(第5版)岩波書店、2013年。ISBN 4-00-080314-X。
竹内修二 監修『カラー図解 人体解剖の基本がわかる事典』西東社、2012年。ISBN 978-4-7916-1834-7。
幸田洋二郎・岡田健次『人工血管の進歩『人工臓器-人工臓器の進歩-』』2021年、175-178頁。
布川雅雄『腹部大動脈瘤のステンドグラフト治療『杏林医会誌』』2015年、173-180頁。
関連項目.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、血管に関連するカテゴリがあります。