血液
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血中の数は5000 - 9000/mm3であり、好中球が全体の50 - 70%、次いでリンパ球が約30%、単球が約5%である[16]

細胞の名称形の特徴働き
リンパ球10 - 15μm程で、赤血球よりやや大きなサイズ。抗体を作り、腫瘍細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃。
好中球12 - 15μm程で、核が2つから4つに別れることもある。細菌の捕食、殺菌に役立つ。
好酸球好中球より僅かに大きい。顆粒がある。寄生虫を攻撃、アレルギー反応を引き起こしたり、抑制したりする。
好塩基球好中球より僅かに小さい。顆粒がたくさんある。詳細は不明だが、アレルギー反応を引き起こすと考えられている。
単球20μm程で、末梢血の中で最大。細菌などの異物を捕食。リンパ球に抗体の特徴を伝える。マクロファージは単球から分化したもの。

血小板詳細は「血小板」を参照

直径2 - 3μmの細胞核を持たない細胞で、血管が損傷を受けると粘着・凝集反応を起こし止血に重要な作用を担う[17]。血中数は15万 - 40万/mm3[18]

血管が破壊されると露出した膠原繊維(コラーゲン繊維)と反応して、血小板が粘着する。さらに変形してセロトニンアデノシン二リン酸などを含む粒を放つ。これらが血管収縮やさらなる血小板の凝集を促し、血栓を形成して出血を止める[18]
血漿詳細は「血漿」を参照

血漿は血液の液体成分で、その90%を占める水は物質の運搬を担う。電解質は細胞へミネラルを補給したり、体液の浸透圧や緩衝作用に影響を与える。血漿タンパク質は浸透圧や緩衝作用調整のほかにも、アミノ酸やホルモン・ビタミン類の運搬や、フィブリノゲンが血液凝固に作用したり、抗体として免疫作用に関係したりと、多様な機能を持つ[19]
造血と破壊
造血

ヒトは誕生以前の胎生時に当たる発生の極めて初期[1]には卵黄嚢造血管組織(血島)で造血がされるが、これは体外造血に当たる[20]。その後肝臓や脾臓で造血され、胎生5ヵ月頃には造血組織は順次萎縮する[20]。その後、誕生するまでには造血の場は成人期造血器官である骨髄のみに移る[20]

発生生物学的には造血には2つの段階がある事が知られている。「一次造血」は、発生初期に胚体外の卵黄嚢組織で起こり一時的に胚に血液を供給し、生涯全身に血液を供給する「二次造血」は、胚のAGM(aorta-gonad-mesonephros)組織で起る。この、二次造血を行う細胞がどこから来たのか明らかでなかったが、理化学研究所の研究グループは、卵黄嚢にある造血細胞が二次造血にも関与していることを突き止めた。[21]

子供の時期には脛骨のみがほとんどの造血能を担うが、20代の頃には失われ大腿骨肋骨などの造血比率が高まる[22]。成人では体躯の胸骨、肋骨、脊椎、骨盤、リンパ組織などで造血が行われる[20]。さらに年齢を重ねると胸骨椎骨骨盤での産出比率が高まる[22]

骨髄のうち、造血を起こす部分は赤色骨髄のみで、黄色骨髄にその能力は無い[22]。すべての血球は幹細胞(造血幹細胞)を元に作られる。これが造血因子を受けながら分裂による増殖を繰り返し、様々な血球へ分化・成熟する。まず、造血幹細胞はリンパ系幹細胞か骨髄系幹細胞のいずれかになる。リンパ系幹細胞はリンパ芽球を経て白血球のうちリンパ球になる。骨髄系幹細胞は複数の分化を辿り、前赤芽球・赤芽球を経て赤血球、骨髄芽球を経て白血球(好中球、好酸球、好塩基球)、単芽球を経て白血球(単球)、巨核芽球・巨核球を経て血小板となる[22]
破壊

赤血球は老化すると柔らかさを失う。こうなったものは脾臓で細胞内皮系細胞による食作用で分解される。ヘモグロビンは分解し黄色色素のビリルビンとなり、肝臓で水溶性化を受け胆汁の中に含まれた形で十二指腸へ排出される。これは細菌作用でウロビリノゲンへ変化し、ほとんどは糞便に混じって、一部は腸の吸収を経て腎臓から尿中に含まれて排出される。分離した鉄は肝臓や脾臓から骨髄へ送られ、新たな赤血球形成に使われる[23]。白血球[16]や血小板[18]も老化すると脾臓で破壊されるが、白血球の寿命は種類によりまちまちで、顆粒球が2 - 14日に対し、リンパ球はときに数十年もの寿命を持つ場合がある[16]
循環

血液が流れている身体部分を特に循環器系と呼ぶ。循環器系は心臓血管などから成り、ヒトの場合、血管は閉鎖回路を成している。血液は心臓によって加圧され、動脈を通じて全身へ送られる。毛細血管に達すると細胞間質液に栄養分, 酸素等 放出をし、静脈を経て心臓へと戻る。

閉鎖回路の循環器系の場合、この経路には大別して2経路あり、1つは心臓との間における肺循環小循環)、もう1つは心臓と肺以外の全身との間における体循環大循環)である。従って、血液は以下の経路で全身を循環する。

体循環:心臓→動脈→肺以外の全身→末梢部毛細血管→静脈→心臓(肺循環に続く)

肺循環:心臓→肺動脈→肺→肺胞部毛細血管→肺静脈→心臓(体循環に戻る)

(血液が上記のように全身を循環している事は、ウィリアム・ハーベイにより1628年に提唱された)

血液のうち、血球成分は骨髄内の造血細胞で生産される。血球毎に寿命は異なるが、赤血球の場合、約120日で寿命を迎え、老廃した赤血球は肝臓脾臓で壊され、体外に排出される。ただし赤血球中のヘモグロビンは排出されず、再利用される。
緩衝・平衡

血液には緩衝液としての機能があり、内部環境(cf. ホメオスタシス)維持のために、様々な平衡を保っている。「主な役割・機能」で述べた事柄は、基本的には内部環境の平衡のためのものと言ってよい。
酸塩基平衡

血液のpHは 7.35 から 7.45 の間で厳密に調整されている。この調整には、主に次の2つの平衡機構が働いている。

炭酸緩衝系および肺の二酸化炭素排出

リン酸緩衝系および腎臓の酸排泄

炭酸緩衝系および肺の二酸化炭素排出

血液の pH は、主に炭酸水素イオンアルカリ性)と炭酸酸性)の比によって決まる(緩衝液)。炭酸水素イオンが減るか、もしくは炭酸が増えると血液は酸性に傾く事になる。

身体中ではさまざまな酸が発生しているが、特に呼吸を代表とする酸化反応による二酸化炭素(炭酸ガス)の発生は莫大であり、これは血液に溶解して大量の炭酸となる。これでは酸性になってしまうので、炭酸から炭酸ガスを遊離する方向に緩衝反応が進み、その結果発生した炭酸ガスは呼吸中枢を刺激し、呼吸が激しくなって肺から排出される。
リン酸緩衝系および腎臓の酸排泄

炭酸以外にも、少量ながら硫酸リン酸などの酸が体内では産出される。これらは炭酸と違い、ガス化して肺から排出出来ないため、リン酸塩による緩衝作用、および腎臓からの排出によって調節される。

血液中には、リン酸二水素イオンリン酸水素イオンが約1:4の比で存在し、これも緩衝液としての機能を果たす。また、過剰な酸は主にリン酸二水素イオンの形で尿中に排出される。
糖平衡

血液は全身のすみずみまで、エネルギー基質であるブドウ糖やアミノ酸、遊離脂肪酸などを運搬し、体細胞が常に一定のエネルギー基質を使えるようにしている(ただし、タンパクやアミノ酸がエネルギーとして使われるのは、原則として非常事態の時に限られる)。

健常なヒトの場合、安静時には血液 100 ml 中の血糖(ブドウ糖)は、おおよそ 100 mg で安定している。これは主に、膵臓α細胞から分泌されるグルカゴンβ細胞から分泌されるインスリンにより調節される。

食事により血糖が上昇すると、β細胞からインスリンが分泌され、血糖をグリコーゲンにして肝臓に貯蔵する。また、脂肪脂肪組織に固定する。逆に血糖が低下すると、α細胞からグルカゴンが分泌され、グリコーゲンを分解してブドウ糖にし、また、脂肪を分解して遊離脂肪酸とする。
水分量平衡

生命活動は、身体内の化学反応により維持されていると言える。そして、それらの化学反応は、全て水溶液中で進行するため、身体内の水分量を保つ事は非常に重要である。


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