血液銀行
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ただし、日本赤十字社による表彰制度や、ガラス器、ガラス盃、食品などの贈呈、飲料ドリンクバーの無料提供などは現在でも行われている[9]

その一方で、HIVなどの感染症検査は保健所で匿名かつ無料で受けられるにもかかわらず、感染症の検査目的で献血する者が見受けられるなど、売血とは別の面でのモラル低下は深刻である。なお感染症の有無は献血者に知らされず、感染が確認された血液は廃棄される。
日本における売血終焉

1964年以降売血は急速に減り、1968年には売血由来の輸血用血液の製造が終了した。民間血液銀行の預血制度は存続したため、預血制度が廃止され輸血用血液が完全に献血由来のものに切り替わったのは1974年のことである。

一方、血漿分画製剤用としては、1990年に原料の献血移行が行われるまで製薬会社による有償採漿が行われていたため、実質的には1974年以降も売血が存続していた事になる。最後まで有償採漿を行っていたミドリ十字は1990年7月27日日本製薬は同年9月21日にそれぞれ終了している。

献血のみでは特殊用途の免疫グロブリン製剤が不足するため、アメリカなど売血が行われている国から血液製剤の原料血漿が輸入されている[10]。近年では代替医薬品として人の血液を利用しない遺伝子組み換え製剤が開発されており、自給率の向上に寄与している[11]

1964年8月21日 「献血の推進について」閣議決定。

1968年 売血による輸血用血液の製造が終了。

1974年 民間血液銀行の預血制度廃止。国内の輸血用血液が全て献血由来のものに切り替わった。

1990年 血漿分画製剤製造のための有償採漿終了。日本国内における売血が終了した。

2002年7月31日安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(血液法)[12] 改正公布。有料での採血等が禁止された[13]

2003年7月31日 「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(血液法)」施行。

中国での売血詳細は「河南省におけるエイズの大規模感染事件(中国語版)」を参照

中国では、売血によるHIV感染が大きな問題としてクローズアップされている[14][15]

中国での輸血用血液確保は、1920年代以来登場した専業供血者によって多くを賄ってきた。これは、採血を受けることだけによって収入を得る職業的売血者である。このほか、実際には農民や無職者も売血に参加していた。

感染血が問題となり始めたため、政府は1980年代から1990年代にかけて公民義務献血によって血液を確保するという方針を進めた。職場ごとに献血量が割り当てられるというものである。この政策の結果、献血ノルマが達成できない職場が報酬を出して献血者を募るというケースが出現し、結果的に売血制度に近い状態が再び生まれることになった。また、それ以前の売血行為も依然として地方では残ったままだった。

このような状況の中、いくつかの省では血液の確保及び経済を活性化させるために海外の製薬会社を招致し、貧しい農民に成分献血を実施させて貧困対策とする「血漿経済」が官民一体となって行われていたが、輸血を受けた者や献血を実施した者がHIVに感染していたという事件が発生し、特に河南省では数百万人の感染者が発生したとされている[16]

成分献血では必要成分以外を供血者の体内に戻すが、衛生観念に乏しい採血所が乱立し、そこではコスト削減のために遠心分離機を消毒せず、複数の供血者の血液を混合して処理した上で体内に戻すという危険な方法をとっており、更には注射針や血液袋の使いまわしにより売血者の間でHIVが伝播していったのである[17]

「血漿経済」を推進した当時の河南省省長である李長春を筆頭とする幹部達はこの問題について隠ぺい工作や情報封鎖を実施して責任を回避しており、感染者は放置されている状況である。

政府は献血法を1997年に可決、翌1998年に施行して、輸血用血液の献血シェアは2004年の時点で71.5%まで上昇しているが、献血率の高い都市部に比較して地方での献血率の低さが目立っている。2005年、中国政府は今後3年以内にすべての血液を献血でまかなうこととするとの方針を発表した。
アメリカでの売血

この節の加筆が望まれています。

アメリカでは、全血及び血液成分製剤用の血液は、アメリカ赤十字の血液センター及び各病院が自家用に設置している病院内血液センターで賄われている。

一方、血漿分画製剤用の血液は、バクスター[18] などの大手製薬会社や独立系企業が設置している民間血液銀行(プラズマセンターと呼ばれる)において賄われている[10]。アメリカの血液銀行は、現在もFDAの許認可の下に運営されている。

感染防止策として、以下のような対策が講じられている。

供血者の身元を確認する。

初回は検査の採血のみとして血液検査を行う。(病原体の存在の有無がはっきりする)数か月後に検査結果を供血者本人に通知し、採血基準に合格した者のみから採血する。供血者には中長期にわたり、一定の生活レベルの維持が要求される場合がある。

プラズマセンターをスラム街や売春宿に近接する地域、不特定多数の短期居住者が存在する地域には設置せず、学生街や高級住宅地、宗教に対し保守的な地方など比較的感染リスクが少ない地域に設置する。

血液製剤の輸出も行われている[10]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ ワクチン製造事業は2018年、KMバイオロジクスに移管。
^ 血液法第16条では有償採血を禁じており、違反した場合は3年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金が科せられる。

出典^ a b c 「流行する新商売 老、少年と疾病者は血売るべからず 珍組合加盟者既に数百名 衛生局からお達し」『朝日新聞』、1936年10月7日、2面。
^ 「血を売る人・搾る人 新職業に衛生局も横目で睨む」『読売新聞』、1936年7月11日、3面。
^ わが大学にある日々は : アルバイト学生の手記 p.29 日本学生生活手記編纂委員会 編, 国土社 1953
^ 日本科学技術史大系 医学(2) p.465 日本科学史学会編
^ 自警 40(6) p.110 警視庁警務部教養課 編
^ 階段を上る女社長 p.142 竹内寿恵著 学風書院 1960年
^ 日本科学技術史大系 医学 日本科学史学会編
^血液事業の歴史 - 日本赤十字社・大阪府赤十字血液センター
^記念品 - 日本赤十字社
^ a b c “血液事業の概要”. www.mhlw.go.jp. 2021年3月11日閲覧。
^ “遺伝子組換え製剤について”. 厚生労働省. 2021年3月11日閲覧。
^ 安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(昭和31年法律第160号) - 厚生労働省
^ 薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律(平成14年法律第96号)。同法3条により、採血及び供血あつせん業取締法の題名が「安全な血液製剤の…」に改正されたほか、有料での採血を禁止する等の抜本的見直しが行われた 薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律参考資料 - 厚生労働省
^ 「【経済】中国、1.2万本の血液製剤がHIV汚染 すでに流通」『Kabutan』、2019年2月8日。2023年11月19日閲覧。
^ 「中華人民共和国は、汚染された食品や健康食品から国民を守ることができず、政府への信頼を損ねている。」『Indo-Pacific Defense Forum』、2020年1月27日。2023年11月19日閲覧。
^ “Hidden from the world, a village dies of Aids while China refuses to face a growing crisis” (英語). The Guardian. (2003年10月25日). https://www.theguardian.com/world/2003/oct/25/aids.china 2023年11月19日閲覧。 
^ 「中国感染症情報 北京駐在スタッフの随想 No.025「文芸作品が映し出す中国社会」」『東京大学医科学研究所アジア感染症研究拠点』、2019年9月29日。2023年11月3日閲覧。
^バイオライフプラズマサービス社(バクスター系のプラズマセンター)

関連項目

貧困

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