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農業害虫としてはハナバエ科のタマネギバエやタネバエ、ミバエ科ウリミバエチチュウカイミバエなどが栽培植物果実種子球根などに寄生し、腐敗させつつ食害するため、農業に深刻な被害を及ぼす。
益虫

腐食性のハエの幼虫(
)の多くは生態系において動植物の遺体の分解者として重要な位置を占めている。

ヤドリバエ科には一部養蚕害虫が見られるものの農業害虫の天敵が多く見られるし、捕食性のイエバエ科の幼虫には衛生害虫になるハエの幼虫の天敵として重要なものが少なくない。

青果業、醸造業において衛生害虫でもあるショウジョウバエ科の一部は生命科学の実験動物として多大の貢献をしている。

ハナアブ科は虫媒花に集まるので農作物受粉に役立っている。イエバエの成虫も一般には害虫とされるが、種苗会社等による品種改良の際には、ハチの代わりに受粉のために用いられることがある。こうしたハエ(フライ)はミツバチ(ビー)にたとえて「ビーフライ」とも呼ばれ、ミツバチの世界的な激減を受けて一部作物の受粉に使われている。ミツバチより活動する温度帯は広いが、蜜が少ない農作物には寄り付かないこと、帰巣本能がないため管理が難しいことや消費者の嫌悪感が課題となる[1]。また、アブラムシを捕食するヒラタアブ類の幼虫などもいる。

ハエの幼虫を食用にする民族もいる。

家畜の糞などにイエバエを産卵させ、分解した糞は肥料に、幼虫や蛹は飼料にして処理・利用する技術を日本企業のムスカが実用化している。元々はソビエト連邦有人火星探査宇宙船内での糞便処理と食料確保を想定して品種改良したイエバエを引き継いでいる[2]

マゴットセラピー(蛆虫療法)という、特別に清潔な環境下で繁殖させたハエの幼虫(蛆)に、外傷患部の壊死した組織を食べさせる外科的治療法がある。

チーズバエの一種はチーズ発酵に利用されることもある。イタリアサルデーニャ地方で作られるカース・マルツゥはその代表格である。

駆除大正?昭和期にかけて製造されたと思われる「村瀬式蠅捕器」(三好日出一氏所有)

網戸蚊帳蠅帳

殺虫剤

ハエ取り紙
粘着性のある薬品を塗布した紙でハエを捕らえる駆除用品[3]

蠅叩き
ハエ駆除用品

蠅取器
ガラス製で、据え置きタイプと管状タイプがある[3]大正時代にはゼンマイ式の自動蠅取器が尾張時計(現:尾張精機)によって開発された[3]。回転する筒で網状の部分にハエを閉じ込める。

めんつゆもしくはワインと食器用洗剤を混ぜたもの
めんつゆやワインでおびき寄せ、揮発する洗剤で窒息させる[4]

殺虫灯(英語版)(電気的殺虫器、電殺器[5]
ショウジョウバエ等のハエが持つ光に誘導される走光性を利用して駆除する装置[6][7]。電撃、吸引式、粘着捕虫器がある。ただ、電気式の場合は、駆除した虫の小片が飛び散り、周囲雰囲気の浮遊粒子を増加させる報告もなされている[8][9]

不妊虫放飼
特定条件を満たす種類の蝿を根絶するための国家的プロジェクトの一種。放射線や遺伝子組み換えにより生殖能力異常となる個体を意図的に生み出して散布することにより、その地域の蝿などを根絶させることを目的とする。なお、プロジェクトの最終段階として行うものであり、前段階で粗方の個体数を減少させておかなくてはならない。

焼却
東京都のゴミ最終処分場であった夢の島では、1960年代にハエの発生が深刻化。焦土作戦として、堆積物を深さ1.5mにわたりハエの幼虫ごと焼き払う手法が採られた[10]
生活史

他のハエ目昆虫と同じく、 - 幼虫) - - 成虫という成長段階を踏む完全変態の昆虫である。

多くは卵生で、成虫が幼虫の生息場所となる環境に卵を直接産みつける。ただし、ニクバエ科の全てやクロバエ科、イエバエ科の一部などは雌体内でが発育し、幼虫を直接産み付ける卵胎生である。

幼虫が寄生生活をするヤドリバエ科の一部では、直接幼虫が育つ宿主に産卵せず、植物上に産卵し、孵化した幼虫が宿主の接近を待つものもいる。
幼虫

1齢で孵化し、3齢が終齢である。いわゆる(ウジ)であり、無でかつ頭蓋(とうがい)など頭部器官はほとんど退化している。その代わりに複雑強固な咽頭骨格が発達している。咽頭骨格の先端には口鉤(こうこう)というかぎ状部が発達し、底部にはろ過器官(pharyngeal filter)が見られる。

ハエの幼虫の多くは腐敗、あるいは発酵した動植物質に生息し、液状化したものを吸引し、そこに浮遊する細菌酵母といった微生物有機物砕片といった粒状物を pharyngeal filter によってろ過して摂食する。さらに一部のものは寄生捕食によって、あるいは動物の新鮮な死体から動植物組織を体外消化して直接吸引、あるいは体液を吸収する。

微生物によって分解されつつある生物組織を摂食する腐食性から捕食、寄生といった生きている生物組織を直接摂食する生食性に移行した種では、pharyngeal filter を失う傾向にある。口鉤は大顎に起源し、基物に引っ掛けることで歩行、腐敗有機物の攪拌、動植物組織の破壊、獲物や宿主の皮膚の穿孔などに用いられる。

シリアカニクバエ Parasarcophaga crassipalpis(Macquart, 1839)の終齢幼虫。

シリアカニクバエ終齢幼虫の咽頭骨格側面。熱湯固定した幼虫を乳酸で透明化して撮影。

シリアカニクバエ終齢幼虫の咽頭骨格腹面。左右の腹角の間に膜状に pharyngeal filter が広がってそれが食道につながる

蛹(さなぎ)

老熟した終齢幼虫は幼虫時代を過ごした摂食場所を離れ、多くは土中に潜りとなる。ハエ類の蛹形成の際は、終齢幼虫が脱皮せずに、幼虫の体が短縮してコメの様な形になり、そのまま幼虫の外皮が硬化するのが特徴である。硬化した外皮の内側で、真のさなぎがさらに一回り小さく収縮して形成される。こうした二重構造の蛹を囲蛹(いよう)と呼ぶ。

羽化に際しては硬化した幼虫の皮膚の前方体節が環状に分離し、蓋のように外れることで成虫が脱出する。これが環縫短角群の名前の由来である。

シリアカニクバエの蛹。左は幼虫の体が短縮した段階、右は幼虫の外皮が硬化した段階。

シリアカニクバエの羽化後の囲蛹殻(いようかく)。蓋状に外れた囲蛹殻の前方体節が背方と腹方に分離して脱落している。

分類

多くの上科があり、このうち同系統の上科をまとめる2つの「節」に分かれる。

無額嚢節(むがくのうせつ)Aschiza




ヤリバエ上科 Lomchopteroidea - ノミバエ

ハナアブ上科 Syrphoidea - ハナアブヒラタアブアタマアブなど



額嚢節(がくのうせつ)Schizophora

無弁翅亜節(むべんしあせつ)Acalyptratae

アシナガヤセバエ上科 Nerioidea - シュモクバエ

メバエ上科 Conopoidea - メバエ

ミバエ上科 Tephritoidea - ウリミバエチチュウカイミバエなどのミバエ類、デガシラバエなど


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