他のハエ目昆虫と同じく、卵 - 幼虫(蛆) - 蛹 - 成虫という成長段階を踏む完全変態の昆虫である。 多くは卵生で、成虫が幼虫の生息場所となる環境に卵を直接産みつける。ただし、ニクバエ科の全てやクロバエ科、イエバエ科の一部などは雌体内で胚が発育し、幼虫を直接産み付ける卵胎生である。 幼虫が寄生生活をするヤドリバエ科の一部では、直接幼虫が育つ宿主に産卵せず、植物上に産卵し、孵化した幼虫が宿主の接近を待つものもいる。 1齢で孵化し、3齢が終齢である。いわゆる蛆(ウジ)であり、無脚でかつ頭蓋(とうがい)など頭部器官はほとんど退化している。その代わりに複雑強固な咽頭骨格が発達している。咽頭骨格の先端には口鉤(こうこう)というかぎ状部が発達し、底部にはろ過器官(pharyngeal filter)が見られる。 ハエの幼虫の多くは腐敗、あるいは発酵した動植物質に生息し、液状化したものを吸引し、そこに浮遊する細菌、酵母といった微生物や有機物砕片といった粒状物を pharyngeal filter によってろ過して摂食する。さらに一部のものは寄生や捕食によって、あるいは動物の新鮮な死体から動植物組織を体外消化して直接吸引、あるいは体液を吸収する。 微生物によって分解されつつある生物組織を摂食する腐食性から捕食、寄生といった生きている生物組織を直接摂食する生食性に移行した種では、pharyngeal filter を失う傾向にある。口鉤は大顎に起源し、基物に引っ掛けることで歩行、腐敗有機物の攪拌、動植物組織の破壊、獲物や宿主の皮膚の穿孔などに用いられる。 老熟した終齢幼虫は幼虫時代を過ごした摂食場所を離れ、多くは土中に潜り蛹となる。ハエ類の蛹形成の際は、終齢幼虫が脱皮せずに、幼虫の体が短縮してコメの様な形になり、そのまま幼虫の外皮が硬化するのが特徴である。硬化した外皮の内側で、真のさなぎがさらに一回り小さく収縮して形成される。こうした二重構造の蛹を囲蛹(いよう)と呼ぶ。 羽化に際しては硬化した幼虫の皮膚の前方体節が環状に分離し、蓋のように外れることで成虫が脱出する。これが環縫短角群の名前の由来である。 多くの上科があり、このうち同系統の上科をまとめる2つの「節」に分かれる。
卵
幼虫
シリアカニクバエ Parasarcophaga crassipalpis(Macquart, 1839)の終齢幼虫。
シリアカニクバエ終齢幼虫の咽頭骨格側面。熱湯固定した幼虫を乳酸で透明化して撮影。
シリアカニクバエ終齢幼虫の咽頭骨格腹面。左右の腹角の間に膜状に pharyngeal filter が広がってそれが食道につながる
蛹(さなぎ)
シリアカニクバエの蛹。左は幼虫の体が短縮した段階、右は幼虫の外皮が硬化した段階。
シリアカニクバエの羽化後の囲蛹殻(いようかく)。蓋状に外れた囲蛹殻の前方体節が背方と腹方に分離して脱落している。
分類
無額嚢節(むがくのうせつ)Aschiza
ヤリバエ上科 Lomchopteroidea
ハナアブ上科 Syrphoidea
額嚢節(がくのうせつ)Schizophora