変わった例では以下のような種類もいる。 発光するホタルの成虫は、腹部の後方の一定の体節に発光器を持つ。幼虫は、腹部末端付近の体節に発光器を持つものが多いが、より多くの体節に持っている場合もある。 ホタルの発光物質はルシフェリンと呼ばれ、ルシフェラーゼという酵素とATPがはたらくことで発光する。発光は表皮近くの発光層で行われ、発光層の下には光を反射する反射層もある。ホタルに限らず、生物の発光は電気による光源と比較すると効率が非常に高く、熱をほとんど出さない。このため「冷光」とよばれる。 日本には50種類以上のホタルが生息しているが、代表的な種類には以下のようなものがいる[9]。
一方の性のみ発光する。
北米に生息する en:Photuris の雌は他種の雌をまねて発光し、その雄をおびき寄せて捕食してしまう。
雄が一か所に集まり一斉に同調して光る。東南アジアのマングローブ地帯で、一本の木に集まって発光するものが有名。ゲンジボタルも限定的ではあるが集団がシンクロ発光するのが見られる[12]。
発光のメカニズム
主な種類
ゲンジボタル Nipponoluciola cruciata Motschulsky, 1854
体長15mm前後で、日本産ホタル類では大型種。成虫の前胸部中央には十字架形の黒い模様がある。幼虫は川の中流域にすみ、カワニナを捕食する。初夏の風物詩として人気が高く、保全への試みが日本各地で行われているが、遺伝的に異なる特性を持った他地域のホタルの増殖・放流による遺伝子汚染が問題になってもいる。
ヘイケボタル Aquatica lateralis Motschulsky, 1860
体長8mm前後で、ゲンジボタルより小さい。主に細流や水田などの止水域で発生する。幼虫はカワニナだけでなくモノアラガイやタニシなど様々な淡水生巻貝類を幅広く捕食し、やや富栄養化した環境にも適応する。また時には干上がる水田のような環境でも、鰓呼吸だけではなく空気呼吸を併用し、泥に潜って生き延びる。成虫の出現期間は長く、5月から9月頃まで発光が見られる。
ヒメボタル Luciola parvula Kiesenwetter, 1874
体長は7mm前後で、ヘイケボタルより更に小型の陸棲のホタルである。西日本の林地や草地に分布する。幼虫は林床にすみ、マイマイやキセルガイなどを捕食する。5-6月に羽化し、かなり強く発光するが、川辺などの開けた場所ではなく森林内などの人目につきにくい場所で光るのであまり知られていない。名古屋城の堀の中に広がる草地には、都市部では珍しい大規模な生息地があることが知られている。メスは飛行できないため分布地の移動性は小さく、個々の個体群は隔離されがちで、地域により体長など遺伝的特性の差が著しい。
マドボタル Pyrocoelia
マドボタル属 Pyrocoelia の総称で、多くの種類がある。和名はオスの胸部に窓のような2つの透明部があることに由来する。メスは翅が退化していて、蛹がそのまま歩き出したような外見をしている。幼虫は陸生で、主に小型のカタツムリ類を捕食し、他の陸生のホタル幼虫に比べて夜には活発に光りながら草や低木にもよじ登るので、よく目立つ。成虫はよく光るものも痕跡的な発光しかしないものもある。本州東部には中型種のクロマドボタル、本州西部と四国、九州には中型種のオオマドボタル、対馬には大型種のアキマドボタルが生息し、南西諸島では何種もの大型種が島ごとに種分化している。
オバボタル Lucidina biplagiata Motschulsky, 1866
体長10mm前後。体は黒色で平たく、前胸に2つの赤い斑点があり、尾部も赤い。他のホタルと同じような体色
ヒゲボタル
ヒゲボタル属 Stenocladiusの総称で以前はクシヒゲボタルと呼ばれていた(現在はクシヒゲボタルの名はCyphonocerus属の種にあてられている)。オスの触角が櫛の歯状に発達している。メスは翅が退化しているばかりでなく、ほぼ幼虫のような形態をしていて、より淡色。幼虫は湿潤な森の林床でミミズを捕食する。体は乳白色で各体節に赤褐色の背板を持つ。南西諸島に数種が分布し、成虫は秋から冬に出現する。昼行性だが雌雄ともまたはメスのみ弱く発光する[13]。
なお、ベニボタルは和名に「ホタル」とあるがホタル科ではなく、同じホタル上科のベニボタル科 (Lycidae) の昆虫である。 ホタルの生息数は年々減少しており、その原因としては生息環境の破壊や汚染、自然環境の放置、ホタル観賞のマナーの問題などが挙げられる[14]。 環境省の「第2回自然環境保全基礎調査報告書」(1982年)によればホタル減少の原因として、農薬の使用、イワナ漁のための毒流し、ミヤイリガイの駆除[注釈 2]、汚水や排水の流入、工事等による土砂の流入、川砂利の採取、河川や用水路の改修などが挙げられているという[14]。 自然環境については、特に里山の放置による生態系の変化が大きいとされる[14]。ホタル鑑賞者のマナーの問題とは、ホタルを採集してしまったり、光でコミュニケーションをとっているホタルに対して人工的な照明を向けることにより交配ができずに子孫を残せなかったり、ゴミを捨てることによる環境の悪化などが挙げられる[15]。 多摩動物公園昆虫館でホタル飼育技術を確立した矢島稔(日本ホタルの会名誉会長)は、昭和40年代以来、皇居ほか各地のホタル復活に手を貸してきた[16]。
ホタルの減少
ホタルの保護と復活