蚊取線香
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現在、日本で普及している渦巻き形の蚊取り線香のデザインは、1895年からのものであり、上山の妻・ゆきの発案とされる[9]の中でとぐろを巻く蛇を見て驚き、夫の元に駆けつけ告げたのが発想の元になったという)。このデザインにすると、燃焼時間が長くなり、かつ嵩張らない。例えば、大日本除虫菊の製品では渦巻きを解きほぐすと、全長は75cmに達し、一度の点火で7時間使用できる[10]。この7時間とは、睡眠時間に合わせたものである。また、寝かせた状態で使うので、従来の形状よりも安全に取り扱えるようになった。

なお、考案されてから長きにわたり、人の手によって渦巻き状に成形してから、乾燥させて固める生産方式を採っていたが、1955年ころから自動化により、現在の渦巻き型の型抜き機械による成形に移行した。

他に短時間用・長時間用・線香が太い物などの種類があり、外国産のものには、四角形や六角形のものもある。
蚊取り線香の歴史

1886年明治19年) 除虫菊がアメリカ合衆国から渡来し、和歌山県、東京都熊本県などで栽培され始める。和歌山県のみかん農園であった上山も種子交換により播種、栽培をはじめる。

1888年(明治21年) 上山により粉末状の蚊取線香が作られる。

1890年(明治23年) 棒状の蚊取線香が作られる。

1895年(明治28年) 渦巻き型の蚊取線香が作られる。

1943年(昭和18年) 大同除虫菊(現在のライオンケミカル)が世界初の蚊取線香自動製造機を開発する。

1955年昭和30年)頃 合成ピレスロイドの実用化が始まる[11]

映画『この一筋の煙に』

蚊取り線香の研究開発の様子やプロセスを紹介する映画『この一筋の煙に 大日本除虫菊中央研究所』が、大阪万博開催の前年にあたる1969年(昭和44年)、大日本除虫菊の企画の下、東京文映により製作された《カラー・21分》。映画タイトルの通り、大日本除虫菊の研究施設(大日本除虫菊中央研究所)で繰り広げられる蚊取り線香の研究開発の現場を映し出しているが、これと共に、大日本除虫菊による蚊取り線香発明の歴史についても若干触れられている。

当該映画作品は、科学映像館に於いて無料公開されている。
使用法燻る様子

渦巻型の蚊取線香は中心部分を金属製でY字型の突起になっている線香立に固定して用いられることが多く、使用している際にはが落ちるので、その受け皿として、金属製の線香皿や陶製の蚊遣器(かやりき)が用いられる。また、このようなY字型の線香立ではなく、耐熱性のガラス繊維に直接載せる線香皿もある。

蚊取り線香が複数枚封入されている製品には、アルミニウム製の線香立や線香皿を封入している。缶の蓋を裏返すと中心部分に直接Y字型の突起が切り込まれており、これを引き起こして線香皿として使用できるようにした製品や、金属缶の蓋部分に綿状のガラス繊維が敷かれており、そのまま線香皿として利用できるようにした製品もある。また、陶製の蚊遣器には代表的なものとして、ブタを模した蚊遣豚(かやりぶた)があり、夏の風物詩となっている。

また、キャンプアウトドアや野外作業など、屋外での利用を想定した吊り下げ方式(フック付き)の線香皿もある。フックは線香皿の外周についており、吊るすときは線香が垂直になるので、ガラス綿に載せた上から金網で押さえて固定する。

これらの用具を用いることで、燃焼を伴う製品ながら安全に使用できる。皿または台が同梱されていることもある。



蚊遣器(蚊遣豚)
豚の胴を模した陶器の中に線香を入れて使用する

線香皿

屋外での利用


現状

1960年代から火を使わず煙が出ないマット式の電気蚊取が開発され、さらに電気も使わず効果が数時間持続するスプレー式防虫剤も販売されている。先述のとおり火を使うタイプのものは、発煙し火災のリスクもあるなどデメリットが大きいことから、日本国内で年々見かけなくなってきている。

電源不要で屋外でも使用できることから、東南アジアなどでは屋外で長時間使用できる大型タイプに一定の需要がある[12]。特にタイでは近隣諸国より多い100巻入りが売れているという[3]アース製薬では東南アジア向けに販売している製品を、アウトドア向けとして日本国内に逆輸入している[12][3]
危険性

蚊取線香の燃焼は、ベンゼンホルムアルデヒドといった揮発性有機化合物(VOC)や、二酸化窒素、発がん性の多環芳香族炭化水素(PAH)を含む粒子状物質といった汚染物質を発生させる[13][14][15][16]。研究によれば、蚊取線香1本の燃焼(2時間)は、紙巻きたばこ約75 - 137本分のPM2.5、同約51本分のホルムアルデヒドを発生させ、室内空気質は容易に環境基準を超えて汚染される[13]。こうした汚染は、とりわけ子供の健康に深刻な影響を与える可能性があり、長期連用は喘息喘鳴の増加と関連がある[13]

その他、火気の使用を含む、線香一般における危険性については線香#危険性を参照。

2021年には、台湾で蚊取り線香の杜撰な取り扱い、不始末が原因でビル火災が発生。46人死亡、41人が負傷している[17]
主な蚊取り線香メーカー

大日本除虫菊

アース製薬

フマキラー

ライオンケミカル

児玉兄弟商会

紀陽除虫菊

脚注[脚注の使い方]
出典^ “コーヒーブレイク: 蚊取線香よもやま話”. 和歌山県工業技術センター (2019年8月1日). 2021年9月7日閲覧。
^ “蚊取り線香を知る6ポイント。電気式蚊取りや虫除けスプレーより効果ある?” (日本語). タスクル 。暮らしのお悩み解決サイト. https://taskle.jp/media/articles/230 2018年10月24日閲覧。 
^ a b c d e “タイで人気の虫よけ線香「モンスーン」が“逆輸入”で日本上陸…特徴を販売元のアース製薬に聞いた”. FNNプライムオンライン. 2022年8月1日閲覧。
^ 国産除虫菊蚊取り、断念 採算とれず和歌山・有田の企業朝日新聞、12月28日
^ Cameron Webb (2017年12月20日). “Opinion: Are mosquito coils good or bad for our health?”. University of Sydney. 2021年9月5日閲覧。
^ Marta F Maia; Merav Kliner; Marty Richardson; Christian Lengeler; Sarah J Moore (2018-2-6). “Mosquito repellents for malaria prevention”. Cochrane Database of Systematic Reviews (John Wiley & Sons) 2018 (2). doi:10.1002/14651858.CD011595.pub2. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}PMID 29405263. 
^ Clare E Lawrance; Ashley M Croft (2004). “Do mosquito coils prevent malaria? A systematic review of trials”. Journal of Travel Medicine (International Society of Travel Medicine) 11 (2): 92-96. doi:10.2310/7060.2004.17015. PMID 15109473. 
^ a b金鳥蚊取り線香


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