薬物乱用
[Wikipedia|▼Menu]
乱用(abuse)の用語は、どのような使用も不可であるという意味として、たまに用いられるため、その曖昧さゆえに依存を生じない物質(下記)の場合を除いて用いられていない[2]。ICD-10の研究用診断基準では、1か月以上持続していることを要求している[5]

依存を形成しない向精神物質以外の誤用(Misuse)には、F55依存を生じない物質の乱用を用いることができる。依存症や離脱症状が生じない物質である[3]。F55.0抗うつ薬、F55.1緩下剤、F55.2鎮痛剤、F55.3制酸剤、F55.4ビタミン剤、F55.5ステロイドあるいはホルモン剤、F55.6特定の薬草あるいは民間治療薬、F55.8他の依存を生じない物質、F55.9特定不能のものである。

つまり、世界保健機関は1994年の『アルコールと薬物の用語集』においては、抗うつ薬による依存症や離脱症状が生じるかは不明確だとしているためである[11]

しかしながら、2003年には世界保健機関は、SSRI系の抗うつ薬による離脱症状や依存症の報告が増加していることに言及した[12]
鑑別診断

DSM-IVにおいてもICD-10においても、物質依存症など、他の形態をとっている場合には、この診断の使用は推奨できない[3][9]
乱用の否認

向精神作用を持つ物質などの嗜癖を持つ場合、否認という病的な自己防衛機制が働く。この防衛機制のため、たばこのような一部の薬物は、長期的影響(特に認知能力や記憶力などの高次脳機能)を無視し、実際よりも害が少ないと言われる傾向がある。[要出典]
乱用される主な薬物

精神活性物質の特徴の概要(世界保健機関、2004年[13])物質主な作用機序行動的影響耐性離脱長期使用による影響
エタノールGABA-A受容体の活性の増加鎮静、記憶障害、運動失調、抗不安酵素誘導により代謝耐性が生じる。学習により行動耐性を得る。耐性はGABA-A受容体を変化させることで形成される。震え、発汗、脱力、興奮、頭痛、吐き気、嘔吐、発作、振戦せん妄脳の機能と形態の変化。認識機能障害。脳容積の減少。
睡眠薬と鎮静剤ベンゾジアゼピン系:GABAによるGABA-Aクロライド・チャネルの開口を促す。バルビツール酸系:GABAイオノフォアの特異的部位に結合し、クロライド伝導性を増加する。鎮静、麻酔、運動失調、認識障害、記憶障害GABA-A受容体の変化により、(抗けいれんを除き)多くの作用に対して急速に形成される不安、覚醒、落ち着かない、不眠症、興奮、発作記憶障害
ニコチンニコチン様コリン作動性受容体作動薬。脱分極を誘発しチャンネルを介してナトリウムの流入を増加する。覚醒、注意、集中や記憶を増す;不安や食欲を減少させる;覚醒剤に似た作用耐性は代謝因子を介して形成され、受容体の変化は食欲を増加させる易刺激性、敵愾心、不安、不快、気分の落ち込み、心拍数の減少、食欲の増加喫煙による健康への影響は十分に実証されている。タバコの他の化合物からニコチンの影響を分離するのは困難である。
オピオイドミューおよびデルタ・オピオイド受容体作動薬陶酔、鎮痛、鎮静、呼吸器の抑制短期間および長期間の受容体の脱感作。細胞内伝達機構における順応。流涙、鼻漏、あくび、発汗、落ち着きのなさ、寒気、腹痛、筋肉痛オピオイド受容体とペプチドにおける長期間の変化。報酬、学習、ストレス反応における順応。
カンナビノイドCB1受容体作動薬リラクゼーション、知覚の気づきの増加、短期記憶の低下、運動失調、鎮痛、抗嘔吐および抗てんかん作用、食欲増加カンナビノイドの多くの作用に対して急速に形成される。まれだが、おそらく半減期の長さに起因して。認識機能障害、精神病の再発と悪化の危険性
コカインモノアミン(ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン)トランスポーターの遮断薬(シナプス間隙でのモノアミンを増加する)警戒、活力、運動活動、能力感の増加;陶酔、不安、落ち着きのなさ、妄想症おそらく短期間の急性耐性多くない、高揚後の落ち込みを除く。認知障害、PETにおける眼窩前頭皮質の異常、運動機能障害、反応時間の低下、EEG異常、脳虚血、梗塞、出血
アンフェタミンドーパミントランスポーターを介して神経末端のドーパミンの放出を増加させる。活動電位上の依存はない。モノアミン酸化酵素を阻害する(MAO)警戒、覚醒、活力、運動活動、会話、自信、集中、健康感の増加;空腹感の減少、心拍数の増加、呼吸増加、陶酔行動および生理的な作用に対して急速に形成される疲労感、食欲増加、易刺激性、感情の落ち込み、不安睡眠障害、不安、食欲減少、血圧増加;脳のドーパミン、前駆体、代謝物および受容体の減少
エクスタシーセロトニンの再取り込みを阻害する自信、共感力、理解力、親密さの感覚、コミュニケーション、陶酔、活力の増加。一部の人では形成される可能性がある。吐き気、筋硬直、頭痛、食欲不振、かすみ目、口渇、不眠症、抑うつ、不安、疲労感、集中困難脳のセロトニン系への神経毒性は、行動と生理的な影響につながる。
有機溶剤GABA-A受容体を介している可能性が高い目まい、失見当識、陶酔、軽い頭痛、気分を増す、幻覚、妄想、協調運動失調、視覚障害、抗不安、鎮静いくらかの耐性が形成される(推定するのは難しい)発作に対する感受性の増加ドーパミン受容体における結合と機能の変化;認知機能の低下;精神病理的および神経学的な後遺症
幻覚剤様々:LSD:セロトニン自己受容体作動薬 PCP:NMDA型グルタミン酸受容体拮抗薬 アトロピン様薬:ムスカリン性コリン作動性受容体拮抗薬心拍数、血圧、体温の増加;食欲低下、吐き気、嘔吐、運動失調、乳頭膨張、幻覚耐性は身体的および精神的作用に対し急速に形成される証拠なし急性あるいは慢性的な精神病のエピソード、薬物使用後しばらくして薬物効果のフラッシュバックあるいは再体験
.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節は検証可能参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(このテンプレートの使い方
出典検索?: "薬物乱用" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2014年6月)

アヘン
ヘロインモルヒネコデイン、ペンタゾシンなど。容易に耐性が形成される。精神的、身体的依存が高い。モルヒネ、コデイン、ペンタゾシンは鎮痛剤などとして医療目的で使用される。
アルコール
容易に身体依存性と耐性が形成され、アルコール依存症となる。また、過剰摂取すると急性アルコール中毒症状の危険性があり、これは致命的となる可能性がある。依存によりアルコール成分を摂取したいがため、工業用アルコールなどを誤飲する事故もある。
ニコチン
容易に身体依存性と耐性が形成され、ニコチンには血管収縮作用があるため血管疾患の症状があらわれる。最近ではニコチンパッチの乱用も多く見られる。依存性があり、通常量でも頭痛、心臓障害、不眠、苛立ちなどの症状が現れる。過量投与では嘔吐、振戦、痙攣が起こり、場合により死亡する。また、タバコに含まれるほかの有害物質は肺癌の原因となる。
大麻
マリファナ、ハシッシュなど。離脱症状はまれである[14]
覚醒剤
アンフェタミンメタンフェタミンメチルフェニデートなど。乱用を続けることで脳に不可逆的な過敏性が残るため、いったん断薬しても、少量の再使用で以前と同じ症状が再燃する(逆耐性現象)。身体依存性は弱い。副作用として、覚醒剤に誘発された精神障害は、統合失調症に酷似し重症になりやすい。日本においては、薬物乱用の治療を要する患者の大多数が覚せい剤によるものである[15]
鎮静催眠剤
ベンゾジアゼピン系バルビツール酸系抗不安薬睡眠薬である。離脱症状が致死的となる場合があり、アルコールとの併用も同様に致死的となる場合がある[16]。日本の依存症回復施設において2番目に患者が多く、多くは女性である[15]国際麻薬統制委員会は2010年に、日本でのベンゾジアゼピン系の消費量の多さの原因に、医師による不適切な処方があるとしている[17]
麻酔
ケタミンは幻覚剤に属する。モルヒネについてはアヘン類にて上述。
コカイン
身体依存性は弱いが、強い精神依存作用がある。
幻覚剤


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:75 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef