薩摩弁
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トッ(飛ぶ、取る)[6]

オッ(折る)

サッ(去る)

語中での促音化は、「シッモサン」/siqmosan/[?i?mosa?](知りません)、「コッゴ」/koqgo/[koggo](国語) などのように、共通語と違って鼻音や濁音の前でも起こる。これらの促音は、鼻音・母音・半母音の前では声門破裂音[?]、濁音の前では各種子音で発音される[5][7]
連母音融合

母音(a, i, u, e, o)が連続する部分を連母音という。薩隅方言では連母音が現れると、その部分が融合し母音の短音に変化する場合がある。薩隅方言では原則として長音は短音化する(例)ユ(言う)、ソド(騒動)。以下は同方言における連母音融合の主なパターン。

/ai/, /ae/ > /e/

長い /nagai/ → ナゲ /nage/

具合 /guai/ → グエ /gue/

橙 /daidai/ → デデ /dede/

蝿 /hae/ → ヘ /he/

考えた /ka?gaeta/ → カンゲタ /ka?geta/
[注 2] .... etc


/oi/, /oe/ > /e/

太い /futoi/ → フテ /fute/

匂い /nioi/ → ニエ /nie/

揃えた /soroeta/ → ソレタ /soreta/[注 2]

添え物 /soemono/ → セモン /semon/ .... etc


/ui/ > /i/

軽い /karui/ → カリ /kari/

雑炊 /zo?sui/ → ズシ /zusi/

縫い物 /nuimono/ → ニモン /nimon/ .... etc

固有名詞について母音の短音化が行われる例は少ない。ただ、高齢層においては「生産物名」「地名」「歴史上の人物の名前」など、「生活において使用が一般化されている固有名詞」を短母音化させる人も多い(例:西郷隆盛→「さいごうどの/さいごうさま」→「セゴドン/セゴサァ」)。一般人の人名については高齢者でも短母音化させる傾向は少ない。そのため「使用頻度の多い音節に対して、滑舌の使用頻度を下げ、疲労を軽減させ発語の速度を上げるための変化」とも言える。

甑島では、/ai/ の変化として /e/ だけでなく /e?/、/a?/、/ja?/、/a?/ が現れる。種子島では、/ai/ → /a?/ の変化をする。[8]
その他

語尾のニ・ヌ・ノ・ミ・ムはンに変化しやすい(例)カン(紙)、ヨン(読む)[6][9]

ラ行音、特にリ・ル・レは、イに変化しやすい(例)クイ(栗)、クイマ(車)、コイ(これ)など[6]。またラ行音はダ行音に変化しやすい(例)ダッパ(らっぱ)。ただし直前がシの場合はタ行音になる(例)ウシト(後ろ)、ハシタ(柱)[6][10]。一方、下甑島・種子島・屋久島では逆にダ行からラ行への変化が聞かれる[10]

「焼酎」→「ソツ」、「数珠」→「ズシ」のような、拗音の直音化が盛んである[11]

鹿児島市や県北を除いて、ヂとジ、ズとヅの四つ仮名の区別が認められる[11]

主に薩摩半島南部や上甑島・屋久島・種子島で、ガ行鼻濁音がある。これらの地域では同時にカ行・タ行の濁音化も聞かれる[12][13]
アクセント

薩隅方言の主流アクセント二型アクセントである。二型アクセントでは、すべての語はA型とB型の2種類どちらかに属し、音節数に関わらずアクセントの型は2種類に限られる。鹿児島市など鹿児島県の大部分で用いられる主流アクセントでは、A型は文節の最終音節の一つ前の音節のみが高くなり、B型は最終音節のみが高くなる。一音節語の場合、A型は音節内部で下降、B型は高く平らに発音される。付属語が付くと、高い部分はその分後ろにずれる。例えばA型の「飴」は単独では「アメ」だが助詞「が」が付くと「アメガ」である。B型の「雨」は「アメ」だが「アメガ」となる。[14]

薩隅方言ではアクセントは拍(モーラ)ではなく音節を単位として付与されるので、語中の促音(ッ)、撥音(ン)、連母音後部、長音無声化した母音は、その直前の拍と結合して一つの単位となる。たとえば、「父さん」(A型)は「トー・サン」の二音節に分けられ「トーサン」となり、「人情」(B型)は「ニン・ジョー」と分けられ「ニンジョー」となる。一方、甑島では拍単位でアクセントが付与される。[15]

複合語の場合は前部要素によってアクセントが決定される。すなわちA型「日」とB型「傘」の複合した「日傘」はA型、B型の「靴」とA型の「底」の複合した「靴底」はB型である。接頭辞も複合語の前部要素と同じように作用するが、なかにはそれぞれが独立性を保つ場合もある。例えば「ダイイチガクネン」(第一学年)など。「テンノータンジョービ」(天皇誕生日)のように、語意識としては一語でありながら、二語的なアクセントを示す例もある。指定の助動詞「じゃ」も固有のアクセントを持ち、前部の名詞・形容詞とは分離される。(例)アメジャッタ(飴だった)、アメジャッタ(雨だった)。[16]

屋久島も二型アクセントだが、屋久島北部の宮之浦では、A型は「○○」「○○が」、B型は「○○」「○○が」で、B型で最終音節が下がる点は二型アクセントの中では珍しい[17][18]枕崎市のアクセントは周辺と高低が逆になり、A型は「○○」「○○が」、B型が「○○」「○○が」となる[17]。枕崎のアクセントは鹿児島主流アクセントが変化してできたものと考えられている[19]種子島の北部は枕崎と似たアクセントだが、南部ではアクセントの型区別が曖昧である。

宮崎県小林市都城市から鹿児島県曽於市志布志市付近には、尾高一型アクセントが分布する。尾高一型アクセントとは、全ての文節で最終音節を高く発音するもので、二型アクセントのA型がB型へ統合したものと考えられる[20]
文法
動詞

薩隅方言を始め九州方言には、下二段活用が残存している。また「貸す」「探す」など共通語のサ行五段動詞や、「できる」「落ちる」などの上一段動詞も下二段活用となる。共通語の上一段動詞の多くや、「寝る」「出る」などの二音節の下一段動詞は、薩隅方言では五段活用となる傾向がある。[21]

動詞の活用[22]活用例語未然連用終止・連体仮定命令意志・推量形
五段聞くキカ-ンキッ-セエ、キッ-モス、キイ-タキッキケ-バキケキコ
下二段上げるアゲ-ンアゲッ-セエ、アゲ-モス、アゲ-タアグッアグレ-バアゲアグ
カ変来るコ-ンキッ-セエ、キ-モス、キ-タクックレ-バケク
サ変するセ-ンシッ-セエ、シ-モス、シ-タスッスレ-バセス

連用形に接続する「セエ」は、「て」にあたる接続助詞。「モス」は「ます」にあたる丁寧の助動詞である。
形容詞

形容詞は、薩摩では「(高)タカカ・タッカ」のようなカ語尾と「タカイ・タケ」のようなイ語尾を併用する地域が広く、大隅・諸県ではイ語尾がかなり優勢である[23]。イ語尾の場合、終止形で連母音が融合した「タケ」(高い)、「サミ」(寒い)のような形を、他の活用形にも使って「サミカッタ」「サミカロ」のように言うようになっている[24]

形容詞の活用[25][26]活用例語連用終止・連体仮定意志・推量形
カ語尾赤いアカカッ-セエ、アコ、アカカイ-モス、アカカッ-タアカカアカカレ-バ、アカカリャ、アカカヤアカカロ
イ語尾赤いアケッ-セエ、アケ、アケカイ-モス、アケカッ-タアケアケカレ-バ、アケカリャ、アケカヤアケカロ

助動詞

断定の助動詞には、「ジャ」「ジャッ」「ジャイ」があり、いずれも「ジャル」から生じたものである。枕崎には「ダッ」、下甑島には「ダ」があり、上甑島や屋久島には「ヤル」「ヤ」がある[27]

推量には、「-ジャロ」もあるが、「終止形+ド」を用いる[26]

進行相には連用形+「ゴッ・ゴル・オッ・オル」、結果相には連用形(音便)+「チョル・チョッ」を用いる。ただし区別は失われつつあり、どちらも「チョル」で言う傾向がある[28][29]

他に、助動詞には以下のものがある[28][29][26]


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