葬式
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前夜式は自宅で行う場合もあるが、教会堂で行うことも多い[15]

キリスト教徒の比率が低い日本では、参列者はもとより遺族すらキリスト教徒で占められることは期待できないため、宗教的純潔主義の主張よりも地域の習俗を重んじる者らへの配慮が優先される。前夜式の設定のほか、焼香に代わる献花、「香典」「仏前」に代わる弔慰金の名目「御花料」などはそのために案出され、後に信仰的な意義付けがなされたものである。同様の理由で六曜「友引」には葬儀を控えることもあるが、これはほとんどの火葬場が休業であるという事情もある。また、死を穢れとみなさない教義から「清め塩」は使わない。
カトリック教会

日本におけるカトリック教会の葬儀は、先にのべたように地域の文化への適応という考え方から、現代の日本におけるカトリック教会の葬儀では、通夜に相当する前夜式、および葬儀という流れに沿って行われる。六曜「友引」に葬儀を控えることは本来はないが、火葬場が休業日になっているために日をずらすことはある。参列者のほとんどがカトリック信徒でない場合などは、参列者に配慮してミサに代えて「ことばの祭儀」が行われることもある[5]

前夜式では聖書の朗読、聖歌、死者のための祈り、棺への献香と参加者による献花あるいは焼香、遺族代表のあいさつなどが行われる。通夜は教会で行われるとは限らず、自宅や葬儀場で行われることもある。葬儀は教会での「葬儀ミサ」という形で行われるが、状況に応じて自宅で行われる場合もある。ラテン典礼の「葬儀式次第」には、葬儀の行われる場所(自宅、教会、墓地)によって3種類の葬儀の方法が示されている[15]

葬儀は、通常4部で構成されている[16]。一般的な葬儀ミサと通常のミサとの違いは、会場が葬儀にふさわしく装飾されることと、聖書の朗読箇所・聖歌・祈り・説教の内容などが葬儀に合わせて選ばれるということである。ミサとあわせるかたちで続けて告別式と葬送が行われる。告別式では一般的な葬儀と同様に、故人の紹介、弔辞、弔電の紹介、献花、遺族代表のあいさつなどが行われる。通夜および葬儀の時に用いる司祭(助祭)の祭服の色は、各地方の状況と伝統に適応したものを使用できる[15]。かつては黒が用いられていたが紫で代用されることが多くなり、近年は(復活の希望を表す)白を用いることも勧められている。

また、死後特定の日に集まって故人を弔う日本の習慣にあわせ、一周忌や命日などに故人のための命日祭(記念の集い)が行われることもある。カトリック教会では11月を「死者の月」、11月2日を「死者の日」と定めており、死者のためのミサや追悼の祈りが捧げられる[17]
プロテスタント

日本におけるプロテスタントの葬儀でも、仏教の葬儀様式に慣れた参列者の便宜を図り、前夜と当日との2日にわたって典礼を行うことが少なくない。

告別式の式典は礼拝そのものであるため、その式次第は基本的に通常の日曜日の礼拝と同じであり、故人が地上で行う最後の礼拝と意味付ける教派もある。従って、基本的に教会堂で行われ、祈祷聖書朗読、説教賛美歌祝福などにより構成される。これに付随して、友人などによる追悼の辞、遺族の挨拶、献花などが追加されることが多い。故人の略歴の紹介・記憶の披露などは、牧師の説教に組み入れられることも別個の項目となることもある。
正教会

正教会では、世界的には土葬が基本であるが、日本正教会では日本の法令等の事情により火葬を行っている。

正教会の奉神礼(礼拝)は立って行うことが基本である。起立する姿勢は伝統的に「復活の生命に与って立つ」ことを象徴するとされるからである。従って司祭輔祭詠隊(聖歌隊)は勿論、参祷者も埋葬式の間は継続して立ち続けることが求められる。ただし障害者や高齢の参祷者などはこの限りでない。

正教会でも(埋葬式やパニヒダに限定されず)香炉は用いられて大切な習慣と位置付けられるが、振り香炉を扱うのは司祭と輔祭であり、参祷者が香炉に触れる事は無い。参祷者が永眠者と対面する際には、棺への献花の習慣がある。

正教会のパニヒダと埋葬式では、「永遠の記憶」と呼ばれる祈祷文が唱えられる。輔祭(輔祭が居ない場合は司祭)が永眠者の霊(たましい)の安息を願う祈祷文を朗誦した後、「永遠の記憶、永遠の記憶、永遠の記憶」と3回歌われる聖歌をもって終結するもので、人を生かす神による永遠の記憶が永眠者に与えられるように祈願する祈祷文である[18]
無宗教

特定の宗教に依存しない葬儀もある。故人の宗教観を尊重する場合や、会社/団体葬などの場合に行うことがあるほか、宗教によっては異なる宗旨の葬儀への参列や焼香などを禁じるものも存在するため、遺族や参列者に異なる宗教的背景がある場合、それに配慮して無宗教で葬儀を行う場合もある。

無宗教の葬儀に特定の決まりはなく、式次第は主催者の裁量にゆだねられる。葬儀という名称でなく「お別れの会」などと呼ばれることもある。無宗教といっても、宗教的な側面を一切排除しなければならないわけではなく、むしろ特定の宗教に偏らないということが強調されることが多い。一般的には、黙祷、送る言葉(弔辞)、献花もしくは焼香といった形で進行する。仏式における読経の部分をなくし、通夜や告別式等は通常通りに行うだけの場合もある。
日本の葬祭業

葬儀は近親者が執り行なうのが基本である。しかし葬儀は短期間で大量の事務処理をこなさねばならず、また非常に頻度が低い行事のため、一般人のみで行なうのには限界がある。そこで葬祭をサポートするサービス業として葬祭業がある。事業免許はなく誰でも始められるが、遺体宗教、関連法規など多岐にわたる知識が要求される。

葬祭業の従事者の技能を審査するため「葬祭ディレクター技能審査」が厚生労働省の認可の下で実施されている。設営、司会、進行には専門知識が必要である。また、霊柩車は特定貨物輸送となり、運送業の許認可が必要である。

従来は景気に左右されにくい産業であったが、平成時代には従来の死をタブー視する風潮に対する反省や見直しが急速に広がり、葬儀の形が多様化した。さらには長引く平成不況少子高齢化や人間関係の希薄化など、社会の変化に伴って葬儀の小規模化が急速に進んだ。
葬儀の消費者トラブル

葬儀は宗教や宗派によってその所作が大きく異なることもあり、多くの人は葬儀の知識が不足している。そうした遺族の無知に付け入り、法外な金額の葬儀費用を請求する事例が増えており[19]消費生活センターなどに相談が寄せられている。葬儀費用には、葬儀本体価格の他に、飲食や返礼品などの実費費用が別途必要になるが、事前に参列者数が分からないため、葬儀打合せ時の見積りには合計金額が書かれていないことも多い。この場合、請求時に実費費用分が加算されてトラブルになりやすい。

互助会に加入の場合も解約などトラブルがある。これは互助会加入時にセールスマンが会員獲得のため過剰なセールストークを展開し、積立金分の割引にしかならないこと、積立金には金利等は一切がつかないこと、解約時に手数料が徴収されることなどの説明不足もトラブルの一因となっている。


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