特定の宗教に依存しない葬儀もある。故人の宗教観を尊重する場合や、会社/団体葬などの場合に行うことがあるほか、宗教によっては異なる宗旨の葬儀への参列や焼香などを禁じるものも存在するため、遺族や参列者に異なる宗教的背景がある場合、それに配慮して無宗教で葬儀を行う場合もある。
無宗教の葬儀に特定の決まりはなく、式次第は主催者の裁量にゆだねられる。葬儀という名称でなく「お別れの会」などと呼ばれることもある。無宗教といっても、宗教的な側面を一切排除しなければならないわけではなく、むしろ特定の宗教に偏らないということが強調されることが多い。一般的には、黙祷、送る言葉(弔辞)、献花もしくは焼香といった形で進行する。仏式における読経の部分をなくし、通夜や告別式等は通常通りに行うだけの場合もある。 葬儀は近親者が執り行なうのが基本である。しかし葬儀は短期間で大量の事務処理をこなさねばならず、また非常に頻度が低い行事のため、一般人のみで行なうのには限界がある。そこで葬祭をサポートするサービス業として葬祭業がある。事業免許はなく誰でも始められるが、遺体、宗教、関連法規など多岐にわたる知識が要求される。 葬祭業の従事者の技能を審査するため「葬祭ディレクター技能審査」が厚生労働省の認可の下で実施されている。設営、司会、進行には専門知識が必要である。また、霊柩車は特定貨物輸送となり、運送業の許認可が必要である。 従来は景気に左右されにくい産業であったが、平成時代には従来の死をタブー視する風潮に対する反省や見直しが急速に広がり、葬儀の形が多様化した。さらには長引く平成不況と少子高齢化や人間関係の希薄化など、社会の変化に伴って葬儀の小規模化が急速に進んだ。 葬儀は宗教や宗派によってその所作が大きく異なることもあり、多くの人は葬儀の知識が不足している。そうした遺族の無知に付け入り、法外な金額の葬儀費用を請求する事例が増えており[19]、消費生活センターなどに相談が寄せられている。葬儀費用には、葬儀本体価格の他に、飲食や返礼品などの実費費用が別途必要になるが、事前に参列者数が分からないため、葬儀打合せ時の見積りには合計金額が書かれていないことも多い。この場合、請求時に実費費用分が加算されてトラブルになりやすい。 互助会に加入の場合も解約などトラブルがある。これは互助会加入時にセールスマンが会員獲得のため過剰なセールストークを展開し、積立金分の割引にしかならないこと、積立金には金利等は一切がつかないこと、解約時に手数料が徴収されることなどの説明不足もトラブルの一因となっている。また解約自体がスムーズに行われない事例や、事前に説明のない追加料金を請求する事例もある[20]。2011年12月には、冠婚葬祭業者の互助契約を解約した際に、高額な手数料を請求することが消費者契約法に違反するとの初判断が、京都地方裁判所で示されている[21]。 そのほか、政治家が自らの選挙区内での葬儀に香典を支出し、公職選挙法違反に当たるとして議論になることがある[22]。 葬儀業者が寺院(僧侶)を紹介することが少なくないが、その場合に僧侶が受け取った布施の一部が葬儀業者にリベートとして渡るという不透明な商慣行が広がりつつある[23]。リベートは僧侶が属しない宗教法人の口座に振り込まれることもあり、税金逃れの可能性も指摘されている[24]。 また、通夜を含めた葬儀関連の行事に、僧の資格を持たない見習いを行かせていた寺が存在している[25]。 イオンが、イオンカード保有者向けの葬儀社紹介サービスにて「お布施の価格目安」を打ち出したところ、全日本仏教会などの一部の仏教界が「お布施に定価はない。企業による宗教行為への介入だ」と反発したものの、全国8宗派・約600寺院の協力が得られることとなった。2010年(平成22年)7月2日付『産経新聞』は「目安とはいっても、大企業が発表すればそれが『定価』として一人歩きしてしまう恐れがある」(日本テンプルヴァン(JT-VAN)・井上文夫社長)と懸念するコメントと「消費者の立場からすれば、布施価格の明示はありがたいのではないか」(第一生命経済研究所・小谷みどり主任研究員)の肯定的なコメントの双方を掲載している。[26][27][28]。 となっており、普通戒名の場合は実質無料であるとしている[29]。 生活困窮者が死亡した際の火葬代などとして厚生労働省が支給する葬祭扶助費
日本の葬祭業
葬儀の消費者トラブル
葬儀業者と僧侶
布施・葬儀の価格目安
イオンの提示した目安表
読経一式の場合(通夜、葬儀、火葬場、初七日込)
普通戒名(信士信女)または普通法号 25万円
居士大姉戒名 40万円
院号居士大姉戒名または院号法名 55万円
直葬(火葬場前読経のみ)の場合(火葬料金込み)
普通戒名(信士信女)または普通法号 10万円
その他
関連作品
映画
『お葬式』 - 伊丹十三監督による1984年公開の日本映画
『社葬』 - 舛田利雄監督による1989年公開の日本映画
『寝ずの番』 - マキノ雅彦監督による2006年公開の日本映画
Size:79 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef