葬式
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また19世紀中頃には大陸地域から香港上海や外国へ移住した華僑や労働者などは、同郷の中国人社会で互助活動として助葬が行われていた[14]
各宗教の葬儀
神道

神道での葬儀は神葬祭と呼ばれる。神道では死を穢れたものと考えるため、聖域である神社では葬式は通常おこなわず、故人の自宅か葬斎場で行うことが多い。現在の形の神葬祭は、仏式の葬儀が一般化した江戸時代でも神葬祭を伝えてきた神社での祭式を引き継いでいる。 式の際には、中央の祭壇の脇に遺影を置き、祭壇の奥に置かれたの後方に、銘旗と呼ばれる故人の名前が書かれた旗が立てられる場合が多い。そしてその周りに灯明、供物などをあしらえたりする。

式の一般的な大まかな流れは、まず神職が塩湯や大麻等によって遺族と参列者および会場を祓い清める修祓を行う。そして神職により祖霊に供物である神饌を供する。神職は祭詞を奏上し、故人の生前の業績を述べ遺徳をしのびつつ、祖霊となって遺族を守ってくれるよう願う。参列者は玉串をささげて、二拝二拍手一拝をおこない故人をしのぶ。このとき拍手は、音を立てない「しのび手」でおこなう。

また、神道では、墓所を「奥都城」「奥つ城」(おくつき)と呼び、墓石にも「○○家之奥津城(奥都城)」と表示している家が多い。墓石の頂点を烏帽子に見立て、尖らせる等の外観上の違いもある。「霊爾」(れいじ。仏教の位牌にあたる)を祀る場合は仏壇の代わりに御霊舎(みたまや)を置いている。

天理教金光教などの教派神道においても、神葬祭を元にした独自の葬儀を行うことが多い。
仏教大名の葬列。『日本の礼儀と習慣のスケッチ』より、1867年出版仏式の葬儀の祭壇の例

日本の葬儀の大部分は仏式(葬式仏教)で行われている。これは中世の日本において、鎌倉仏教の僧侶が葬儀や年季法要などを通じて、庶民の救済を図ろうとしたことに由来する。

1635年(寛永12年)頃に隠れキリシタン対策として、日本人全員を近くの寺に帰属させる寺請制度が始まり、1700年(元禄13年)ごろには、位牌仏壇戒名といった制度が導入され、葬式に僧侶がつくようになった。それまでは「葬式組」と呼ばれる村落共同体のグループが葬式を仕切り、棺や装具をつくったり炊き出しをしたりしていた。

浄土真宗日蓮宗を除き日本の伝統仏教においては、葬儀は死者に対する授戒成仏が主たる意味を持つ。つまり、死者を仏弟子となるべく発心した者とみなし、戒を授け成仏させるための儀式である。

浄土真宗では教義上、無戒のため授戒はなく、仏徳を讃嘆し、故人を偲びつつ報謝のまことをささげる儀式となる。迷信を忌む宗風から、日や方角の吉凶を選ぶ、守り刀、逆さ屏風、左前の死装束、北枕、六文銭の副葬、棺桶の釘打ち、振り塩(後述)などの習俗は、原則として行わない。

日蓮宗では教義上、法華経を受持すること自体がすでにを保つことであるとして、死後あらためて受戒を行わないが、地域によっては通夜の際に受戒作法を行う場合もある。

葬儀の流れは宗派や地方により多少異なるが、大まかな流れは、まず死後すぐに枕経を行い遺体を拭き清める湯灌をした上で納棺し通夜を行う。翌日に葬儀と告別式を行い火葬・拾骨または土葬し、自宅に中陰壇が設けられる。遺族は、死者の追善を7日ごとに49日間にわたって中陰法要を行うものとされ、この期間を中有または中陰と呼ぶ。初七日はその最初の法要である。満中陰の七七日(四十九日)法要は一般に壇払い、または壇引きと呼ばれるもので、死者の遺骨や位牌を安置していた中陰壇を取り払うことからこのように呼ばれる。壇払いを済ませると服忌期間が終了し「忌明け」として遺族は日常生活へ戻る。

現代の日本では生活様式の変化から、この7日ごとの法要を全て行うことは少なくなりつつあり、会葬者が頻繁に集えないことや会場が葬儀場で営まれることなどから「繰り上げ法要」と称し、本来7日後に行う初七日を葬儀後に引き続いて行うことが多い。初七日は火葬を終えて自宅に帰る途中に所属寺院(菩提寺)に立ち寄って行われるか、自宅に帰り「還骨のお経」を兼ねて行うことが多い。有名人などの葬儀で密葬を行った上で本葬を行う場合、本葬終了後に初七日を行う場合もあり、このときは死後7日以上経過していても初七日として法要が行われる。また中陰法要の日は、初七日と七七日まで全て行えるよう参列者の都合を優先し、土曜日や日曜日に法要をずらすことがある。
キリスト教

キリスト教の葬儀の大きな特徴は、死をタブー穢れと捉えず、葬儀もまた「天国への凱旋」として、悲しむべきものや忌むべきものとしてみなさない点である。教派により祭儀の形態が異なることから、葬儀の様式は一見大きく異なって見えるが、キリスト教の教義による死生観に基づき、この点については各教派とも共通して貫かれる。

葬儀の前夜の式典は、呪術的な必要から遺体を不寝番することを意味する「通夜」を避け、「前夜式」「前夜の祈り」などと呼ぶ。前夜式は自宅で行う場合もあるが、教会堂で行うことも多い[15]

キリスト教徒の比率が低い日本では、参列者はもとより遺族すらキリスト教徒で占められることは期待できないため、宗教的純潔主義の主張よりも地域の習俗を重んじる者らへの配慮が優先される。前夜式の設定のほか、焼香に代わる献花、「香典」「仏前」に代わる弔慰金の名目「御花料」などはそのために案出され、後に信仰的な意義付けがなされたものである。同様の理由で六曜「友引」には葬儀を控えることもあるが、これはほとんどの火葬場が休業であるという事情もある。また、死を穢れとみなさない教義から「清め塩」は使わない。
カトリック教会

日本におけるカトリック教会の葬儀は、先にのべたように地域の文化への適応という考え方から、現代の日本におけるカトリック教会の葬儀では、通夜に相当する前夜式、および葬儀という流れに沿って行われる。六曜「友引」に葬儀を控えることは本来はないが、火葬場が休業日になっているために日をずらすことはある。参列者のほとんどがカトリック信徒でない場合などは、参列者に配慮してミサに代えて「ことばの祭儀」が行われることもある[5]

前夜式では聖書の朗読、聖歌、死者のための祈り、棺への献香と参加者による献花あるいは焼香、遺族代表のあいさつなどが行われる。通夜は教会で行われるとは限らず、自宅や葬儀場で行われることもある。葬儀は教会での「葬儀ミサ」という形で行われるが、状況に応じて自宅で行われる場合もある。ラテン典礼の「葬儀式次第」には、葬儀の行われる場所(自宅、教会、墓地)によって3種類の葬儀の方法が示されている[15]


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