著作権
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そのほか、キャラクター設定[47]や感情そのもの、創作の加わっていない模倣品[48]、範囲外の工業製品[48](たとえば自動車のデザイン[49])などは著作物とはならないほか、短い表現・ありふれた表現[48][50](たとえば作品のタイトル[51][52]や流行語[53]や商品名[54])・選択の幅が狭い表現などは創作性が認められない傾向にある。
保護の要件
方式主義と無方式主義「著作権の形式的手続」も参照

特許権、意匠権、商標権などは登録が権利発生の要件であるが、著作権の発生要件について登録などを権利発生の要件とするか否かについては立法例が分かれる。

著作権の発生要件について、登録、納入、著作権表示など一定の方式を備えることを要件とする立法例を方式主義という[55]。これに対して著作物が創作された時点で何ら方式を必要とせず著作権の発生を認める立法例を無方式主義という[56]

ベルヌ条約は、加盟国に無方式主義の採用を義務づけている(ベルヌ条約5条2項)[56]。なお、日本には著作権の登録の制度があるものの、ベルヌ条約の加盟国であることもあり発生要件ではなく、あくまでも第三者対抗要件であるに過ぎない[57]。これに対して万国著作権条約は方式主義を採用している[55](ベルヌ条約と万国著作権条約の双方に加盟している場合には万国著作権条約17条によりベルヌ条約が優先する[58])。

なお、北朝鮮もベルヌ条約加盟国であるが、日本は北朝鮮を国家として承認していないことを理由に、2011年12月、北朝鮮の著作物に関しては日本国内で保護義務がないとの司法判断が最高裁によってなされた[59][60]
著作権マーク詳細は「著作権マーク」および「著作権表示」を参照

ベルヌ条約に加盟し無方式主義をとる国においては著作物を創作した時点で著作権が発生するため、著作物に特定の表示を行う義務は課されていない。一方、ベルヌ条約締結後も同条約に加盟せず方式主義をとる国々があった[55]。そのため自国が無方式主義を義務づけるベルヌ条約を締結していても、方式主義をとる国々では著作権発生の要件を満たさず、そのままでは著作権保護を得ることができず不都合を生じていた。そこで万国著作権条約は無方式主義をとる国における著作物が、方式主義をとる国でも著作権保護を得ることができるよう、氏名と最初の発行年、cのマークの3つを著作権表示として明示すれば自動的に著作権の保護を受けることができるとした[61]。著作権マーク「c」は、著作権の発生要件として著作物への一定の表示を求める方式主義国において、要件を満たす著作権表示を行うために用いられるマークである[39]

先述のように、ベルヌ条約と万国著作権条約の双方に加盟している場合には、無方式主義を定めるベルヌ条約が優先する[58]。したがって、このような問題が生じるのはベルヌ条約を締結しておらず万国著作権条約のみを締結している方式主義をとっている国においてである。かつては米国が方式主義国の代表的存在で、長い間、万国著作権条約のみを締結しベルヌ条約を締結していなかった。しかし、米国は1989年にベルヌ条約を締結して無方式主義を採用した[61]。ほかの国においても無方式主義の採用が進んだ結果、2017年現在、万国著作権条約のみを締結し方式主義を採用している国はカンボジアだけとなっている[62][63][64]。そのカンボジアもベルヌ条約自体は締結していないものの、2004年のWTO加盟によりTRIPS協定9条1項の適用を受けることとなり、ベルヌ条約の1条から21条の条項および附属書の遵守義務を負ったため、実質的に無方式主義に転換した[61]

なお、著作権表示は条約上の著作権の発生要件とは別に国内法上一定の効果を生じることがあり、たとえばアメリカの著作権法では著作権の存在を知らずパブリックドメインと信じた者を保護する善意の侵害者(innocent infrigers)の法理があるが、cマーク等の著作権表示が著作物に明確に表示されていれば原則として善意の侵害にはあたらないとされている[61]
有形物への固定の要否

著作物が有形の媒体に固定されている必要があるか否かについても立法例が分かれる。ベルヌ条約では固定を要件とするか否かに関しては加盟国の立法に委ねている(ベルヌ条約2条2項)。アメリカ合衆国著作権法では、著作物が固定されていることが保護の要件となっており(102条(a))、未固定の著作物はもっぱら州法の規律による。日本の場合は固定を要件としていないが、映画の著作物については物への固定が要件であると一般的には解されている(ただし、この点には議論がある)[65]
著作権の侵害「著作権侵害」を参照

著作権侵害は、民事では差止請求権損害賠償、名誉回復等の対象となる。また、刑事事件として罰金刑や懲役刑などの刑事罰が科される場合もある。米DMCAに基づいて、自称著作権者およびその代理人による著作権侵害告発で、正規の著作権者や合法な著作権利用が妨げられるケース、果ては言論弾圧に利用するケースすら多発している。
著作権の法的保護
条約上の保護

著作権の保護については、「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」(ベルヌ条約)、「万国著作権条約」、「著作権に関する世界知的所有権機関条約」(WIPO著作権条約)、「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)などの条約が保護の最低要件などを定めており、これらの条約の締約国が、条約上の要件を満たす形で、国内の著作権保護法令を定めている。
ベルヌ条約詳細は「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」を参照

18世紀から19世紀にかけて各国の民間交流は増大したが、それとともに剽窃も国際的な問題となった[66]。多くの国では著作権法が制定されていたが、効力範囲は自国民などに限られていた[66]。そこで各国は、相互主義のもと互いに相手方国民の著作権を保護する二国間条約を締結して解決を図ろうとした[66]。しかし、二国間条約では締約国以外には効力が及ばず、各国は法律で登録などの著作権保護要件を定めていたため現実に著作権を取得することは難しく実効性に乏しいものだった[67]

そこで国際文芸家協会などが国際的な著作権保護の運動を展開し、スイス政府などの主導のもと1886年にベルヌ条約(文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約)が締結された[68]。ベルヌ条約に関しては1908年のベルリンでの改正条約によって無方式主義が採用された[69]

ベルヌ条約は内国民待遇、遡及効、無方式主義の採用などを柱とする[56]
万国著作権条約詳細は「万国著作権条約」を参照

ベルヌ条約は1908年のベルリンでの改正条約によって無方式主義が採用されたが、アメリカ合衆国や中南米諸国など方式主義を採用している諸国との間に制度的な差異を生じ問題化した[70]。そこで、方式主義を採用しているアメリカ合衆国や中南米諸国などと、ベルヌ条約に加盟して無方式主義を採用している国々との間の架橋となる条約として、1952年に万国著作権条約が成立した[70]


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