著作権
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反対に、最も広義に解する場合、実演家、レコード製作者、放送事業者など著作物を伝達する者に付与される権利(著作隣接権[9]も、著作権の概念に含めることがある[8]

知的財産権には著作権のほか、特許権商標権などの産業財産権があるが[10][11]、保護の対象や権利の強さが違う。産業財産権は産業の発達を目的とする技術的思想(アイデア)を保護の対象とし、権利者に強い独占性を与える性質のため、所管官庁による厳しい審査を経て登録されなければ権利が発生しない[註釈 1]。一方の著作権は、創造的な文化の発展を目的とする表現を保護の対象としていることから、産業財産権と比べて独占性は低く、日本を含む多くの国・地域では登録しなくても創作した時点で権利が発生する[10][11][註釈 2]

著作物の定義・範囲、著作物の保護期間、著作物の管理手続や著作侵害の罰則規定などは、時代や国・地域によって異なるものの、国際条約を通じて著作権の基本的な考え方は共通化する方向にある。しかし、著作物のデジタル化やインターネットの社会普及に伴い、著作権侵害フェアユース(無断利用が著作権侵害にあたらないケース)をめぐる事案が複雑化している時代趨勢もある。

学術的な目的で、研究者や教授が著作権で保護された作品を使用することにはいくつかの例外がある[13]
構成

著作権は人権財産権)の一種であり[14]、同時に「著作権」という語は、人権としての著作権のほかに、権利としての著作権(さらに細かくは国際法上の著作権や、憲法上の著作権など)という側面もある[15]

著作権は狭義には著作財産権のみを指し、広義には著作財産権と著作者人格権、最広義には著作者の有する実定法上の権利(著作財産権、著作者人格権著作隣接権)の総体をいう[8]。広義の著作権概念は概して大陸法の諸国で用いられる著作権概念である[8]。一方、狭義の著作権概念は英米法の諸国で用いられる著作権概念である[8]。日本の著作権法は「著作者の権利」のもとに「著作権」と「著作者人格権」をおく二元的構成をとっている[8]
著作財産権
意義

著作権は狭義には著作財産権のことをいう[8]著作者に対して付与される財産権であり[7]著作物を独占的・排他的に利用する権利である[8]。著者は、著作権(財産権)を、他人に干渉されることなく、利用する権利を持つ[16]。たとえば、小説の著作者(作者)は、他人に干渉されることなく出版、映画化、翻訳することができる。

したがって、著作権(財産権)のシステムが正しく機能している場合は、出版社などが得た収益を、後進の育成と採用への投資(育成費)に充当できる。これにより、アマチュアからプロへと進む際のハードルも低くなる。また、各分野での世代交代が活発化する。

しかし、著作者の合意(許諾)を得ていない他人が、その著作物を広く世間に発表(公表)すると、著作者は生活するために必要な収入を失い、「執筆」「作曲」「映画製作」などの仕事(創作事業)も継続できなくなる。この他人による著作者の財産を盗み取る行為が、著作権の侵害である。
支分権

支分権(しぶんけん)は著作物の1つの利用様式に対する権利である[17]

著作者が著作権を財産として扱える範囲を明確に限定するため、支分権として細目が列挙されている。著作財産権は支分権の総体として理解される。
法的特徴

支分権の列挙により権利を示すため、著作者以外の者にとっては細目の把握が困難である。これにより「著作者の権利の束」[註釈 3]と表示し、細目のすべてを含めた「すべての権利(財産権)」を保持していると、包括して記す場合もある[18]。あるいは、支分権による細目の分類を用いて、著作権(財産権)の一部を、人(自然人法人)に引き渡すことも可能である[19]。このような販売形態を「譲渡」という[19]。たとえば、小説の(著作者)が、契約により著作権の「出版権」のみを他人に譲渡し、それ以外の著作権(財産権)を著作者が自ら保持するといったことが法的に可能である。

一方で、著作物を収めた記録媒体(CDやDVD、ブルーレイや書籍などの有体物)を第三者に販売した場合でも、著作権が消滅することはない。このような販売形態を(権利の)「貸与」という[要出典]。ほかにも、「譲渡」や「貸与」以外に、著作者ではない人(自然人や法人)と「許諾の契約」を結び、著作者ではない人(自然人や法人)が自由に利用できるようにする方法もある[20]。このような契約を「利用許諾の締結」といい、殊に音楽制作では「買い取り」という。著作権は相対的独占権あるいは排他権である[21]。特許権や意匠権のような絶対的独占権ではない[21]。すなわち、既存の著作物Aと同一の著作物Bが作成された場合であっても、著作物Bが既存の著作物Aに依拠することなく独立して創作されたものであれば、両著作物の創作や公表の先後にかかわらず、著作物Aの著作権の効力は著作物Bの利用行為に及ばない。同様の性質は回路配置利用権にもみられる。
著作者人格権「著作者人格権」も参照

狭義の著作権(著作財産権)は財産権の一種であるが、著作者に認められる権利(著作者の権利)としては、そのほかに著作者の人格的利益を保護するものとして、人格権の一種である著作者人格権がある。両者の関係については考え方および立法例が分かれる。

まず、著作権法により著作者に対して保障する権利を純粋に財産権としての著作権として把握する考え方がある。この考え方を徹底しているのがアメリカ合衆国著作権法であり、著作者の人格的権利はコモン・ロー上の人格権の範疇に含まれる。もっとも、ベルヌ条約が加盟国に対して著作者人格権の保護を要求していることもあり、1990年の法改正により、視覚芸術著作物について限定された形で著作者人格権を保護する旨の規定を設けた(合衆国法典第17編 ⇒第106A条)。

第2に、著作者に対して、財産的権利と人格的権利の双方を著作権法上保障する考え方がある。大陸法の著作権法は基本的にこのような考え方に立脚している。フランス著作権法がこの考え方に立脚しており、著作者の権利について、人格的な性質と財産的な性質を包含するものとして規定し(111の1条第2項)、いわゆる著作者人格権は処分できないものとする(121の1条第3項)のに対し、著作権は処分できるものとして(122の7条)区別している点にこのような考え方が現れている。

第3に、著作者に対して、財産的権利と人格的権利の双方を著作権法上保障するが、両者は一体となっており分離できないものとして把握する考え方がある。ドイツの1965年9月9日の著作権および著作隣接権に関する法律がこの考え方に立脚しており、著作者の権利の内容を構成するものとして著作者人格権に関する規定を置いているが(11条-14条)、財産権と人格権が一体化しているがゆえに、財産権をも含む著作者の権利について譲渡ができない旨の規定が置かれている(29条)点にこのような考え方が現れている。

日本法の法制は、著作権法上、著作者の権利として財産権たる著作権と人格権たる著作者人格権を保障しつつ、前者は譲渡可能なものとして理解し、後者は譲渡不可能なものとして理解している[22]点でフランス法に近い。
著作隣接権

著作者によって制作された楽曲(著作物)は、著作者である作詞家作曲家が著作権を有している。しかし、楽曲を演奏する実演家や、それを録音するレコード製作者、楽曲を放送する放送事業者・有線放送事業者も、著作者ではないものの著作物に密接に関わる活動を業としており、1970年の現行著作権法制定に伴い、これらの利用者による実演、レコード、放送または有線放送にも著作権に準じた一定の権利(著作隣接権、: neighboring right[23])が認められることになった。著作隣接権は実演家の権利(著作権法90条 - 95条)、レコード製作者の権利(同96条 - 97条)、放送事業者の権利(同98条 - 100条)、有線放送事業者の権利(同100条)からなり、人格権と財産権が含まれる。


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