著作権法
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例えば、演劇用の脚本の複製といった場合、脚本を直接コピー機を使って複写した場合だけでなく、その脚本に基づいて上演されたり放送されたりした演劇(無形的再製)をCDやDVDに録音、録画する行為も脚本の複写にあたり、複製権が及ぶことになる[25]。また、建築の著作物については、その設計図に従って同じ建築物を建てれば、建築の著作物の複製となる[26]

さらに、映画(映像)の作品の中で音楽や美術作品が使われている場合、その映画の著作権とは別に音楽や美術作品の著作権が独立して成立しているので、その映画を複製しようとする場合には、映画の著作権者だけでなく、その映画の中で使用されている音楽や美術作品の著作権者(複製権者)の許諾も必要となる(同じことは、二次的著作物や、著作物性を有する素材からなる編集著作物やデータベースについてもいえる)。

複製権侵害の要件としては、判例は原著作物と複製物との同一性・類似性の他に原著作物に「依拠したこと」も求めている。従って、原著作物の存在を知らずに創作し、結果的にたまたま同一の著作物が出来上がったにすぎない場合は、そもそもアクセスしていないため、複製に該当せず、複製権侵害にもならない。

また、著作権法第30条から47条の7に規定されている著作権の制限規定に該当する場合、基本的には複製権者に無断で複製しても例外的に複製権の侵害とはならないが、法が許容する目的以外でその複製物を利用すると、その行為は複製とみなされる[27]

なお複製権者は、その複製権の目的たる著作物について出版権を設定することができるが、その複製権を目的とする質権が設定されているときには、当該質権者の承諾を得なければならない[28]

また、著作権法第30条の4では情報解析についての規定があり、この条文では「非営利」に限定していない。早稲田大学上野達弘は、このため、営利企業が他人の著作物を使って機械学習を行ったり、学習済みモデルを販売しても、著作権侵害には当たらないとする。諸外国の著作権法にも同様の規定はあるが、大抵は「非営利」に限定されており、営利での利用が可能であることは、日本の著作権法の特徴となっているという[29]

しかし、知的財産法を専門とする筑波大学の潮海久雄はフェアユース法理が採用されている米国と日本の知的財産法の権利制限規定を比較しつつ、人工知能による情報解析目的でのデータ利用について、ベルヌ条約との整合性を前提とした場合に著作権法30条4項の適用範囲が極めて狭いことを指摘している[30]
上演権・演奏権・上映権・口述権

上演権 - 著作物を無断で公衆に上演(演奏以外の方法で演じること)されない権利
[23]

演奏権 - 著作物を無断で公衆に演奏(歌唱を含む)されない権利[23]

上映権 - 著作物を無断で公衆に上映(著作物を映写幕その他の物に映写すること。映画の著作物に固定されている音楽を再生することも含む)されない権利[23]

口述権 - 言語の著作物を無断で公衆に口述されない権利[17]

演劇や落語、講談、漫才の著作物等[注 1]は上演権の対象となるが、詩や小説の朗読は口述権の対象とされ、上演権の対象に含まれない。

「公に」とは、「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として」いることを指し、「公衆」とは著作権法上、「不特定」又は「特定多数」の者を意味する[31]。したがって、特定少数に対して上演することは上演権の行使にはあたらない。また、劇団員が公演前に特定多数の関係者の見ている前で練習しても、あくまで練習であって「直接見せ又は聞かせることを目的として」いないので、上演権の行使にはならない。しかし、公演本番で幕が開いた状態で演じた場合は、誰も観客が来ていなかったとしても、「公衆に直接見せ又は聞かせること目的として」上演している以上、上演権の行使となる。

ただし、既に公表された著作物を非営利・無料・無報酬で上演した場合は、たとえそれが公に行うものであっても、権利の範囲外である[32]。学校の文化祭等での劇の上演はこれにあたる。一方で、チャリティーショー等でその収益をすべて慈善団体などに寄付する場合は非営利・無報酬であるが、観客から料金を徴収している場合は無料の要件を充たさず、無許諾で上演すれば上演権の侵害となる。
権利対象外の著作物

著作物は「著作権を認められた作品」ではなく、あくまで「文芸・学術・美術・音楽に属する思想又は感情の創作的表現」である。著作物は条件を満たした場合にのみ著作権の目的あるいは保護対象になりうる。「著作物#著作物と著作権」も参照

著作権法は第二節(6条~9条)で保護対象を規定し、また13条で目的外著作物を指定している。

13条の規定により、下に掲げる著作物は第二章にいう権利の目的となることができない。
憲法その他の法令

国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの

裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの

上記3.の翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの

憲法その他の法令には条約(未批准条約を含む)、外国の法令、廃止された法令も含まれる[33]。また、政府作成の法律案、法律草案、改正試案なども、本号に含まれるものと解する[33]。ただし、新聞社が作成した日本国憲法改正私案のように、私人が作成した法令案は本号の対象外であって、著作権の対象となりうる[33]

また、北朝鮮著作物については、日本は保護する義務を負わないとする最高裁判所の判決が2011年12月8日に出ている[34]。→無断放映#日本における北朝鮮著作物放映基準の最高裁判例を参照

そもそも著作物として認められないものの一例として以下が挙げられている。

10条2項は「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第1号に掲げる著作物に該当しない」と規定している。

10条3項は、本法律による保護は「著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない」と規定している。これによりプログラミング言語APIアルゴリズムは、少なくとも日本法においては保護対象とならない[35](ただし、日本国外ではAPIが保護対象と認定された例があるため注意が必要である[36])。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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