著作権の保護期間
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その一方、EUでは著作隣接権を公表後50年から延長することについては2004年に断念している[2]
イギリス詳細は「イギリスにおける著作権法(英語版)」を参照

著作者の生存期間および死後70年までを保護期間の原則とする。

1996年1月1日までは死後50年までであったが、1995年の「著作権の保護期間と実演家の権利に関する規則」(The Duration of Copyright and Rights in Performances Regulations 1995、以下本節では「1995年規則」)の施行で、ドイツが用いていた保護期間の死後70年間へと変更されることになった[3]。なお、この変更は遡及適用され、かつての法によれば保護期間が満了していた著作物の一部が著作権を回復した[3]。共同著作物は最後に死亡した共同著作者を起点に[4]、無名の著作物は公表時(公表されなかった場合は創作時)を起点に算出する[5]

映画の著作物は、1956年著作権法においては初演(上演されなかった場合は1938年映画法 (Cinematograph Films Act 1938) の登録年)の翌年から50年存続していたが、1995年規則で改定され、最後の主要な映画制作者(制作者・脚本家・台本家・作曲家)死後70年に延長された[5]。主要な映画制作者なき映画の著作権は初演後70年(上演されなかった場合は制作後70年)存続する[5]

コンピュータを使って制作された著作物や録音の著作物は、制作後50年存続する[5]。ただし、録音の著作物が前述保護期間に発売された場合は発売年が起点となる[5]。放送もこれら著作物と同じ保護期間を採用している[5]

イギリス法では活版の配列・工業品の意匠(日本では意匠法で保護される)をも保護対象としており、その期間は商品の販売から25年である[6]

以上に挙げた著作物の著作者人格権は著作権と同じ期間だけ存続する[7]
スペイン

著作者の生存期間および死後70年までを保護期間の原則とする。

1879年に保護期間を死後80年までと規定したが、1987年に死後60年に短縮し、1993年のEU指令に基づき1995年に死後70年に再延長した。1987年における保護期間短縮は、ベルヌ条約加盟国では唯一の事例であるとされる。なお、保護期間短縮にともなう経過措置では改正法施行時に生存している著作者が既に公表している著作物には短縮された保護期間が適用される一方、既に故人である著作者については経過措置として旧法における死後80年間の規定が維持されている。そのため、パブロ・ピカソ1973年没)の保護期間は死後80年の2053年までである一方、サルバドール・ダリ1989年没)の保護期間は死後70年の2059年までである。
フランス詳細は「著作権法 (フランス)#著作権の保護期間」を参照

著作者の生存期間および死後70年までを保護期間の原則とする。

1997年3月27日制定の改正法によって延長されるまでは死後50年までであった。
ポルトガル

著作者の生存期間および死後70年までを保護期間の原則とする。

1948年のベルヌ条約ブラッセル改正に伴う調査では保護期間を「無期限」と定めていたことが知られているが、この規定は1971年パリ改正までに撤回されている。
アメリカ合衆国「著作権法 (アメリカ合衆国)#米国内法の主な改正点」も参照

1978年1月1日以降に創作された著作物については、著作者の生存期間および死後70年までを保護期間の原則とする(合衆国法典第17編第302条 17 U.S.C. § 302(a))。無名著作物、変名著作物または職務著作物の場合、最初の発行年から95年間、または創作年から120年間のいずれか短い期間だけ存続する(17 U.S.C. § 302(c)前段)。ただし、この期間内に無名著作物または変名著作物の著作者が記録から明らかとなった場合は、保護期間は原則どおり著作者の死後70年までとなる(同後段)。
著作権延長法詳細は「著作権延長法」を参照

1976年著作権法 (Copyright Act of 1976) の規定では、著作権の保護期間は著作者の死後50年まで(最初の発行年から75年まで)とされていた。これを20年延長し、現在の保護期間である死後70年まで(最初の発行年から95年まで)とした改正法が、1998年に成立した「ソニー・ボノ著作権保護期間延長法 (Sonny Bono Copyright Term Extension Act, CTEA)」である。「ソニー・ボノ」の名称は、カリフォルニア州選出の共和党下院議員で、この法案の成立に中心的役割を果たしたソニー・ボノ(英語版)[注 1] にちなむ。

1999年1月11日、元プログラマーであるエリック・エルドレッド(英語版)は、CTEAがアメリカ合衆国憲法1条8節8項(特許、著作権)及び修正1条(表現の自由)に違反するとして、コロンビア特別区連邦地方裁判所に提訴した(エルドレッド対アシュクロフト事件(英語版))。しかし、2003年1月15日合衆国最高裁判所は、CTEAが合憲であるとの最終判断を示した[8]
日本「著作権法」も参照

著作者の生存期間および死後70年までを保護期間の原則とする。

ベルヌ条約加盟に伴い日本に初めて著作権法が導入された1899年当時は、保護期間は死後30年であった。ただし、無名または周知ではない変名の著作物、および団体名義の著作物の著作権の保護期間は、公表後ないし創作後30年までであった。その後数度の法改正により少しずつ延長され、1969年にはこれらの期間は38年までとなっていた。1970年の著作権法全面改正により死後50年までに延長された。2004年1月1日以降は映画の著作物に限り、公表後ないし創作後70年までに保護期間が延長された。2018年12月30日にはTPP11協定発効に伴う改正著作権法が施行され、映画の著作物以外についても著作者の死後70年までに延長された。
日本国における著作権の保護期間

この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

日本国はベルヌ条約、万国著作権条約、WIPO著作権条約の締約国である。また、TRIPS協定を遵守すべきWTO加盟国でもある。したがって、これらの条約、協定で定められた保護期間の要件をすべて満たすように、国内法で著作権の保護期間を規定している。なお、本節において日本の著作権法を参照する際には、特記がない限りその条数のみを記載する。

なお、保護期間については前述のとおりである。
著作権の発生(始期)

著作権は、著作物を創作した時に発生する(51条1項)。登録を権利の発生要件とする特許権商標権などとは異なり、著作権の発生のためには、いかなる方式(登録手続き等)も要しない(17条2項)。ベルヌ条約の無方式主義の原則(同条約5条(2))を適用したものである。
著作権の消滅(終期)
終期の原則

著作権は、著作者が死亡してから70年を経過するまでの間、存続する(51条2項)。より正確には、死亡してから70年を経過した年の12月31日まで存続する(著作権法第57条第1項。著作権の保護期間#保護期間の計算方法(暦年主義))。ベルヌ条約7条(1)に対応する規定であるが、2018年12月30日施行改正著作権法により条約よりも保護期間は長くなっている。
共同著作物の場合

共同著作物の場合は、最後に死亡した著作者の死亡時から起算する(同項かっこ書)。これは、最後に死亡した著作者が、日本の6条に基づく権利の享有が認められない者(条約非加盟国の国民など)であっても同様であると解する[9]

また、自然人と団体の共同著作物の場合、本項を適用して自然人である著作者の死亡時から起算するのか、後述する53条1項を適用して公表時から起算するのかが問題となる。この場合、自然人である著作者の死亡時から起算するのが妥当であると解する。保護期間の長い方による方が著作権保護の趣旨に合致するし、公表時起算は死亡時起算が適用できない場合の例外的規定だからである[10]
保護期間の沿革

一般的な著作物(写真や映画の著作物を除く)の原則的な保護期間は、1899年7月15日に施行された旧著作権法(明治32年法律第39号)では、著作者の死後30年までと規定されていた。その後は、以下のような変遷をたどっている。

1962年4月5日 - 死後33年に延長(昭和37年法律第74号、第1次暫定延長措置)

1965年5月18日 - 死後35年に延長(昭和40年法律第67号、第2次暫定延長措置)

1967年7月27日 - 死後37年に延長(昭和42年法律第87号、第3次暫定延長措置)

1969年12月8日 - 死後38年に延長(昭和44年法律第82号、第4次暫定延長措置)

1971年1月1日 - 死後50年に延長(著作権法全面改正)

2018年12月30日 - 死後70年に延長(平成28年法律第108号、TPP11整備法)

改正された法律の施行前に著作権が消滅していた著作物の場合、延長の対象とならず、著作権の保護期間は1971年改正の場合なら著作者の死後50年、2018年改正の場合なら70年とならないので、注意が必要である。


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