また、維管束鞘から上側(向軸側)、下側(背軸側)、または上下両側の表皮方向に柔組織が発達していることがあり、維管束鞘延長部(bundle sheath extension)とよばれる[7][11][8][12][14]。維管束鞘延長部は、維管束と表皮の間の物質移動に関わっていると考えられている[11][12]。またこのような維管束鞘延長部の存在によって葉肉が区画化されることになり、葉身の一部に起こった傷害が、他の部分に波及することを防止するとも考えられている[8]。また一次脈や二次脈など太い葉脈では、柔組織や厚壁組織からなる維管束鞘延長部が発達して葉脈部が突出して肋となることがある[8](上図3a, b)。ただしこのような発達した構造は、狭義の維管束鞘延長部には含めないこともある[8]。
トウモロコシなどC4型光合成を行う植物では、維管束鞘(またはその一部)は葉緑体を多く含む細胞から構成され、さらにこれが葉肉細胞で取り囲まれている[7][11][15][16](上図3b)。このような維管束を囲む構造はクランツ構造(Kranz anatomy)[注 2]とよばれ、リンゴ酸などに固定された二酸化炭素が放出、再固定される場となる[15]。このような維管束鞘細胞の細胞壁にはふつうスベリンなどが沈着して二酸化炭素の拡散を防止し、そのため維管束鞘細胞の二酸化炭素濃度は大気の4.5?18倍に達することが報告されている[17]。
葉脈は、シュート頂分裂組織に由来する前形成層から分化する[1][9]。種子植物では、葉原基の前形成層から形成された維管束が基部側へ(求基的に)成長し、茎にあるより古い維管束系と接続する[9][18]。シロイヌナズナでは、葉縁部にある特定の箇所でオーキシン合成が起こり、PINオーキシン排出キャリアタンパク質などによってオーキシンの流路が形成され(カナリゼーション canalization)、これに沿って維管束(葉脈)が形成されることが報告されている[9]。 葉脈の配列様式のことは、脈系(脈理)とよばれる[2][4][3][6][19][20]。脈系は以下のように幾つかの型に類別される。ただしそれぞれの区分ははっきりしているわけではなく、中間的なものもある。 主脈、側脈、細脈が結合して網目を形成する脈系は、網状脈系(網状脈、reticulate venation, netted venation)とよばれる[2][6][19][3][20]。主脈や側脈の配列によって、以下のような型に分けられる。ただし中間的なものもある。 多数の葉脈(一次脈、主脈)が分岐することなく平行にならんでいる脈系は、平行脈系(平行脈、parallel venation)とよばれる[2][6][19][3][20][21](下図5a?d)。
脈系
網状脈
羽状脈系(羽状脈、pinnate venation)[2][4][19][3][20]
一次側脈が羽根状に配列したもの(下図4a, b)。被子植物で最も一般的な脈系であり、ケヤキ(ニレ科)、ハンノキ(カバノキ科)、イチイガシ(ブナ科)、チドリノキ(ムクロジ科)、ヤマボウシ(ミズキ科)などに見られる[2]。一次側脈(二次脈)が葉縁に達するものは縁終脈型(craspedodromous; 下図4a)、一次側脈が葉縁に達せず弧となるものは輪弧型(camptodromous; 下図4b)とよばれる[12]。
掌状脈系(掌状脈、palmate venation)[2][4][19][3][20]
複数の主脈が1点から広がる掌状に配列したもの。主脈が3本あるものは三行脈とよばれ(下図4c)、クスノキ(クスノキ科)、サルトリイバラ(サルトリイバラ科)、カラスウリ(ウリ科)、カクレミノ(ウコギ科)、カンボク(ガマズミ科
平行脈