落雷
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これは日本全国に無数にあるガソリンスタンドなども含んだ数字である[27]

しかしこれとは対照的に日本の場合、一般への雷対策普及は遅々として進まず、年間、少なくとも数万件、数千億円の被害が発生し続けている現実がある。事実、電気設備数として最も数多い日本の一般家庭には電源用避雷器すら普及しておらず、2006年時点でその普及率はわずか1?2%程度である[28]。これは雷による感電・火災事故防止上、強制力を持って一般家庭への避雷器設置が進められている欧米諸国と比べると、桁違いに低い数字である。

この極端な差を生んでいる原因については、専門家の間でもさまざまな意見があるが、建物・機器の落雷対策はいわゆる「総合技術」であり、携わる技術者にはおよそ気象学にはじまり、電気工学電子工学通信工学機械工学化学工学建築工学土木工学といったところまでの広い専門知識が要求される。このことから日本雷保護システム工業会(JLPA)は、一般への広報と併せ、不足している専門技術者の育成を図り、雷保護製品等の品質、性能等について社会的信頼性の向上を図るといった活動をおこなっている[29]

以下、建物・機器の雷対策に用いられる主なものを挙げる。
避雷針詳細は「避雷針」を参照

落雷の原理として、地面と上空との電位差から生じることがわかっている。このことから適切な位置に避雷針を設置して空中放電し、建物・機器に影響が及びにくいように導雷するとともに、あらかじめ地面と上空との電位差を軽減するという処置がとられる。建築基準法33条では、「高さ20メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。」と定められている[注釈 3]

避雷針には保護範囲があり、その範囲外にあるものは保護できない。JIS A 4201では、規定の「保護角」や「回転球体」などを用いて、範囲を定めるものとしている。国会議事堂やその他文化財のように長い、または高い形状の建物の場合、避雷針では十分な保護範囲が得られない場合もあり、棟上げ導体などを使用して広い保護範囲を得る事も行われている。また、雷ストリーマを発生させて保護範囲を広くしたものなど[30]、現在も新たな避雷針の開発が進んでいる。

しかし、この避雷針も雷の被害を完全に防ぐものではなく、通常の避雷針をビル等に設置した場合、設置位置によっては避雷針ではなく建物の角に落雷することもあるほか、避雷針の保護範囲に入っていても雷の直撃を受けることがある。このため、他の方法を組み合わせることがJIS A 4201などで規定されている。
雷サージ対策詳細は「サージ防護機器」、「避雷器」、および「保安器」を参照

雷サージによる家電製品やパーソナルコンピュータの被害を軽減するための方法として、2003年に、建物に適切な接地等電位化を行い、電気・電話線には適切に避雷器を設置することなどがJIS A 4201・JIS Z 9290-4などで規定された。また、電話線・CATVには、保安器の設置が義務付けられている。サージプロテクタというコンセント型の器具も販売されているが、単体使用するとかえって危険なこともある。

これらの対策をとってなお、家庭などにおいて雷サージによる家電製品やPC等の故障を防ぐためには、雷の時は電源ケーブルや電話線をコンセントから抜いておく事が望ましいとされる。
その他の落雷対策

ここでは、現在研究中のものを示す。いずれも、雷放電自体を起こさなくするものではない。
雷ストリーマによる誘雷
雷ストリーマによる誘雷に適した形状(小形放電電極と下部集電電極)をした避雷針などに、予め別途回路により雷ストリーマを発生させておき雷を誘導する方法である。
レーザー誘雷
雷雲に向けて強力な
パルスレーザーを当てて稲妻の通り道となるプラズマを発生させ、稲妻を安全な場所へ誘導することが可能である事が実験で実証されている。送電線鉄塔への落雷が原因の停電を防止する手段として期待されている[31]
ロケットによる誘雷、消雷
ロケットに電線を繋げて打ち上げ、雲の上下に生じた電位差を電線を通じて放電する事により落雷を防ぐ。電線はジュール熱によって蒸発する[32][33]
その他
消雷装置」という、雷放電が落雷になりにくくする研究もなされ、特許も取得されているが、いまだ研究途上である。
落雷の農業への影響

古来より水田に落雷すると収穫量が増えるので稲妻の語源になった。これは落雷による放電で窒素酸化物が生成され、亜硝酸塩へと変化して、イネの養分になるからである。同様に落雷したほだ木ではきのこの収穫量が増えると古代ギリシアプルタルコスの著作である『食卓歓談集』にも記述される程、古来より言われてきたが[34][35]、これはほだ木内部の窒素が雷の高電圧によって亜硝酸塩等の窒素化合物が生成されて菌糸の養分になるからである。これを人工的に実施して収穫量を増やす試みが行われる[36][37][38][39]
その他

強い落雷が珪砂に作用して変性したガラス質の閃電岩(雷管石)という鉱物がある。
落雷実験

日本工業大学の超高圧放電研究センターでは300万ボルトインパルス電圧発生装置による人工的な落雷実験が行われている[40]電力中央研究所の電力技術研究所塩原実験場では、1200万ボルトインパルス電圧発生装置で実験が行われている[41]
落雷の被害者


落雷による死者「Category:落雷で死亡した人物」および「:en:Category:Deaths from lightning strikes」も参照


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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