上方落語ではこれらの他に、演者の前に上述の見台、さらにその前に低い衝立状の膝隠しが置かれる。 落語家は単純な柄か無柄の和服を着用する。このとき、羽織の脱ぎ方一つをとっても約束事があり、演目のイントロダクションともいうべき関連した話題や背景を紹介していくマクラから本題に移行する合図として羽織を脱ぐ場合、大店(おおだな)などの商家を扱った演目では羽織を羽織ったままの場合、八つぁん・熊さん等の名で代表される職人・町人が登場するものでは羽織を脱ぐ、などの区別がある。さらに、羽織の脱ぎ方も肩から滑らせるようにして一瞬で脱ぐ所作も注目すべき点である。このような決めごとにより、観衆の耳目を自身の芸そのものに集中させる。落語は純粋な話芸であり、演じている最中は、音曲や効果音などは制限される。ただし地域や演目などによっては、出し物の最中に音曲や効果音が使用される場合がある。宴会の場面では賑やかな『さわぎ』という曲を入れる場合、また、幽霊が出てくるときは『ドロ』という太鼓を鳴らす場合がある[22]。落語のあとに踊るとき三味線・太鼓を鳴らす場合もある[22]。 落語が再現芸術でありながら演劇や舞踏と一線を画して考えられるのは、演劇・舞踏といった芸能が通常扮装をともなって演技されるのに対して、落語においては扮装を排し、素のままで芸を見せるためである。すなわち落語では、噺家は登場人物や話の流れに相応しい身なりや格好をモノ(衣装・小道具・大道具・書割・照明・効果音)で表現することはなく、主として言葉と仕草によって演出効果をねらう。そのために、落語の表現要素は、 とに区分することができるのである。これは、素の芸であることを前提とする落語の大きな特徴であるといえるだろう。 一人の話者が聴衆を笑わせる芸としては、ほかに漫談が挙げられる。しかし、漫談が聴衆に語りかける話法を用いるのに対し、落語は主として登場人物同士の対話によって話が進められてゆくことがひとつの大きな特徴であるといえる。マクラの部分を別とすれば、落語の本筋の部分では、必要最小限の情景の叙述(「地」といわれる部分)と、演出上、話からはなれて緊張を解くなどの目的で、「語りかけ」に戻ることもあるが、主として、物語は対話で成り立っている。 なお、会話が少なく、主にいわゆる「地の文」で展開される話を「地噺(じばなし)」と呼ぶ。地噺の例としては、『紀州』などがある。 寄席や演芸場(ホールともいう)の興行で演じるプロを落語家(噺家)と呼ぶ。ほとんどのプロの落語家は同業組合(ギルド)に加入するが、2代目快楽亭ブラックのような例外も存在する。内部では徒弟制度が敷かれている。 落語家の団体には、以下のようなものがある。 東京においては、見習いに始まって、「前座」(ぜんざ)、「二つ目」(ふたつめ)、「真打」(しんうち)の身分制があるが、上方の落語家にはない。上方の寄席では、前座ではなく「お茶子」と呼ばれる人が高座返しなどをおこなう[24]。 なお、落語家の生活は明治時代から寄席の興行収入の歩合(割)だけでは生活が成り立つことはなく、落語家自身がお座敷やキャバレー、屋形船など酒席での余興から収入を得たり、旅の仕事(地方廻り)をする場合が多く、スポンサー(旦那、お旦)からのお小遣いや妻の賃労働収入をあてにすることもあった。現代も二つ目までは生活が厳しいといわれている。副業・内職・アルバイトの収入源・額はさまざまであり、著名な副業では木久蔵ラーメンをプロデュースして商品・店舗展開を行った林家木久扇の例がある。 高座の模様が収録された記録メディア(レコード・カセットテープ・CD、映像を含むビデオテープ・DVDなど)が市販されており、それを購入したり、ラジオやテレビ等で落語を放送する番組をオープンリールテープやカセットテープ、MD等に録音、あるいはビデオテープやDVD・ブルーレイ等に録画(エアチェック)して収集する。 現在では入手困難な、戦前の落語家たちの名演が聞けるSPレコードを集める者もいる。特に著名なSP盤の収集家としては、のこぎり演奏家としても知られる落語家の都家歌六(8代目)と岡田則夫が挙げられる[25]。2人が集めたSP盤は約4,000枚におよび、日本で発売された落語SPの8割にあたる[25]。2人のコレクションの一部がデジタル化され、2006年(平成18年)には『SPレコード 復刻CD集 昭和戦前面白落語全集』として発売された[25]。
服装・効果音
その他
他の芸能との違い
噺家の芸に結びつく基本的な要素(言葉、仕草)
1.を助けるためにその場に応じて何にでも変化できるようなニュートラルな最低限のモノ(小道具、衣装)
落語家と所属団体詳細は「落語家」を参照
東京
一般社団法人落語協会(落協)
公益社団法人落語芸術協会(芸協)
五代目圓楽一門会
落語立川流
上方
公益社団法人上方落語協会
寄席・落語会
寄席(演芸場)詳細は「寄席」を参照
上野鈴本演芸場(東京都台東区上野、無休)
新宿末廣亭(東京都新宿区新宿、無休)
浅草演芸ホール(東京都台東区浅草、無休)
池袋演芸場(東京都豊島区西池袋、無休)
以上4席は、通常落語定席として狭義の「寄席」と呼ばれる。
お江戸上野広小路亭(東京都台東区上野、毎月1-15日)
お江戸両国亭(東京都墨田区両国、毎月1-15日)
国立演芸場(東京都千代田区隼町、毎月1-20日)
天満天神繁昌亭(大阪市北区天神橋、無休)
大須演芸場(名古屋市中区大須、毎月1-7日)
横浜にぎわい座(横浜市中区野毛町、毎月1-16日)
神田連雀亭(東京都千代田区須田町、基本無休)
魅知国定席 花座(宮城県仙台市青葉区一番町、基本無休)
おもな落語会
東京落語会(NHK・落語協会・落語芸術協会共催)
紀伊國屋寄席
落語研究会(毎月1回、TBS主催、国立劇場・小劇場)
三越落語会
朝日名人会(毎月1回、朝日新聞主催、有楽町朝日ホール)
新にっかん飛切落語会(隔月1回、日刊スポーツ主催、会場不定)
日暮里サニーホール落語会(毎月1回、荒川区芸術文化振興会主催、日暮里サニーホール)
ねぎし三平堂落語会(毎月1回、ねぎし事務所、ねぎし三平堂)
上新庄えきまえ寄席(毎月1回、春日神社(大阪市東淀川区)、春日神社集会所2階)
上方落語勉強会(毎年数回、米朝事務所、京都府立文化芸術会館)
島之内寄席(毎月1回、上方落語協会主催、トリイホール)
渋谷らくご(毎月第2金曜から5日間、渋谷ユーロスペース)
録音・録画の収集