萌え
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浜銀総合研究所の調査によると、2003年度のコミック・ゲーム・映像などの「萌え」関連商品の市場規模は888億円に達した[28]。また、地域おこしのPRとしても利用されるようになったケースもある(詳細は萌えおこしの項を参照)。しかし、「萌え市場はあくまでもおたく向け。おたくが増えない限り成長はなく、数年で数倍、という伸び方はしない。10人に1人がおたくになる時代は来ないだろう」という否定的分析もあり[29]、萌え市場がこれ以上は成長しないとされている。

しかし、近年はおたくを名乗る人が増えており、マイナビが2016年卒業予定の大学生・大学院生を対象にした「2016年卒マイナビ大学生のライフスタイル調査」によると、約2.7人に1人は自分のことを「おたく」だと思っているという調査結果が出ている。

インターリンクはこうした萌え文化の経済的価値に着目し、トップレベルドメインとして.moeICANNに申請し2014年から新規登録受付を開始している[30]
「萌え」を巡る議論

「萌え」の概念については様々な解釈があり[3][4]、評論家によるおたく論の中でも議論が交わされている[24]

精神科医の斎藤環は、おたくが用いる「萌え」という言葉を、「芸風」として戯画的に対象化されたセクシャリティであると位置づけた[20]。斎藤は、おたくの創作物が倒錯した性のイメージで満たされながらも、おたくの間では現実の性倒錯者が少数であると指摘し[20]、おたくのセクシャリティを、虚構のリアリティを支える、虚構それ自体が欲望の対象となり現実を必要としないものであるとしてその背景を論じた[31]

批評家の東浩紀は自著においてこうした斎藤の主張を「あまりに複雑」と一蹴した[32]。東は「萌える」ことを、キャラクターを無数の萌え要素へと分解し、各要素の背後にあるデータベースを消費することであると位置づけ[注 1]、単純な感情移入とは異なると論じている[33]。東はおたくの消費行動を閉じた関係の中で欲求を満足する「動物化」とみなし、斎藤が論じた「萌え」の構造を、関係性から切り離されたデータベースの中で、記号化された萌え要素に対して性的興奮を得るという、動物的に慣らされた行為でしかないとして単純化した[34]

一方、評論家の本田透は「萌え」を「記号に発情する、動物化された行為」とみなす解釈に異を唱え、そうした解釈で「萌え」の本質を見い出すことはできないと主張した[35]。本田は「萌え」を、宗教が否定され恋愛もまた物質主義に支配されていく中で必然的に生じた、記号の背後に理想を見い出す行為であるとし、神話や宗教の文脈に連なる精神活動として解釈した[36]。その上で本田は、むしろ動物化しているのは、バブル期以降に台頭してきて現実の恋愛やセックスを商品のように消費する人々であると主張し[35]、「萌え」は現実の恋愛を狩猟行為や勝ち負けのように解釈する風潮や、男性上位のマッチョイズムに対するアンチテーゼであるとした[37]。なお斎藤は「萌え」と暴力的な性倒錯を区別せず、ヘンリー・ダーガーの作品などにも絡めながら、戦闘美少女の文脈の中で「萌え」を語っているが[38]、本田は「鬼畜系」と呼ばれる狩猟的な性関係を描いた作品群を、「萌え」とは対極に位置するものとして区別して扱っている[39]

アニメ監督鶴巻和哉は、萌えを「特定のキャラクターに関する不十分な情報を個人的に補う行為」と定義している。これを受けて、作家の堀田純司は、キャラクターが人間の本能が生み出したものであるからこそ現実の人物にはあり得ないほどの魅力を感じさせるのだと説明している。[40]

岡田斗司夫は、自分は「萌え」についてかなり納得しているというレベルまでにはなっていないとしながらも、単に美少女に対して感情を掻き立てられるだけではなく、そのような状態に陥っている自分自身のことを観察するメタ的視点を含んだものが「萌え」の定義だとしている[41]
関連する概念

この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2014年4月)

萎え

萎え(なえ)は「萌え」の対義語ではありません。[42]

萎えが対義語として使われることがありますが、萌えは唯一無二の感情のため、対義語・類義語は存在しません。

意図的に「萌え」を煽ろうとする露骨な演出・行動などに対して嫌悪感を抱くようになる場合

キャラクターの性格や言動、態度などによって気分を害され、そのキャラクターに対して嫌悪感を抱くようになる場合

「萌え」を前面に押し出した作品であるにもかかわらず、その対象となるキャラクターにまつわる描写・作画といった表現が破綻しているなど、鑑賞に堪え得ない状態

これらの状態に対して、「萌え」に該当する感情が湧かず、興覚めしてしまうという意味で、インターネット上などで用いられる。しかし殊更に「萌え」と対置する使用例はそれほど多くなく、対義語としての解釈は人によって変化するだろうと言える。

かわいらしい女性キャラクターが一人も登場しないフィクション作品などに対して、「まったく萌え要素がない」という意味で用いられることもある[13]
燃え

熱血男子の活躍を描いたフィクション作品などに対して「燃え」という表現が使われることもある[13]。また前述のように元々「萌え」というスラングも、同音異義語である「燃え」から発祥したと考えられており、当初は架空のキャラクターに対する、燃えあがるような愛情を意味することもあったとされる[11]
ブヒる

上記のように元々インターネットスラングであった「萌え」は社会的に浸透し、2000年代では活用される幅も広くなった。それに伴い「萌え」の定義は曖昧になり、2010年からのネット界隈では萌えの一部の用法をより端的に表現する動詞として「ブヒる」が登場した[43]

この「ブヒる」は好きな架空のキャラクターを見て熱狂するさまを表現する動詞である。語源はブタの鳴き声の擬音「ブヒィ」であり、元々萌えアニメの熱狂的なファンへの侮蔑を込めた呼称「萌え豚」から発展している[44]。萌え豚自体は蔑称だが、「ブヒる」に関してはファン自らも使う用語であり[45]、「いくらでも豚になってみせます」という意味を込めて用いられる[46]。なお、この「ブヒる」という表現は二次元美少女キャラクターに対して用いられるのが一般的である。

この語は、2011年1月?3月に放送された、弓弦イズルによるライトノベルを原作とするテレビアニメ『IS 〈インフィニット・ストラトス〉』をきっかけに広まったと言われる[45]。作中で使われている表現ではないが、物語の体裁よりもギャルゲー的なサービス要素を優先させるような同作の作風に対して用いられた[46]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ この東の理論の詳細とそれに対する斎藤の応答についてはデータベース消費を参照。

出典^ a b c d e f g“もえ【萌え】”, デジタル大辞泉goo辞書), 小学館, (2010-7), ⇒http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/218667/m0u/ 2011年9月6日閲覧。 
^ a b c d 榎本 2009, p. 61
^ a b c d 榎本 2009, pp. 30?31
^ a b c d ササキバラ・ゴウ『〈美少女〉の現代史――「萌え」とキャラクター』講談社講談社現代新書〉、2004年5月20日、20頁。


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