萌え
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おたく評論家岡田斗司夫は、NHK教育テレビ番組『天才てれびくん』の枠内で1993年に放映されたSFアニメ作品『恐竜惑星』のヒロイン「萌」を語源とする説を挙げており[17]、これが有力な説であるといわれている[18][16]。ただし当該作品の制作サイドの中心人物の一人であった金子隆一は自著において、当該作品の発表以前に既に「萌え」概念は存在しており、この説は事実ではないと主張しており(ただし、金子はそれを直接確認してはいない)、また岡田がヒロインの名字を誤って記述していることも指摘している[19]

他に出版物で確認できるものには、精神科医の斎藤環が友人から教わった知識として紹介した、1994年の漫画『美少女戦士セーラームーン』第3期シリーズから登場したキャラクター土萠ほたる(ともえ ほたる)」を語源とする説がある[18][20][16]。土萠ほたるの儚げな印象や不幸な境遇は、放送当時のファンの心を揺さぶり、ファンの間で「萌え」の対象にもなった[21]

他には、漫画雑誌『なかよし』に連載されたあゆみゆいによる1993年の少女漫画『太陽にスマッシュ!』を起源として挙げる説や[16]、1980年のテレビアニメ『伝説巨神イデオン』の熱心なファンたちが雑誌『ファンロード』の投稿欄で使い始めたという説[16]もある。

実業家の武井信也は、自分が高校生の頃に主催していたパソコン通信のコミュニティーで発祥し、パソコン通信を介して伝播していったものであるとする説を主張している[22]。武井の主張によれば、元はコミュニティーの参加者が仲間に見せるために配信した創作物に対するコメントとして使われはじめたもので、当初は「もえー!!」という平仮名表記が使われていたとしている[23]
「萌え」とおたく

男性のおたくの間では多数の「萌え」要素の組み合わせで構成された美少女キャラクターが単体で消費の対象となっている。「萌え」はおたく男の代名詞的なキーワードとみなされ、複数の評論家によるおたく論の中で、おたくの定義と結びつけられてきた[24]

ただし、おたくの興味の対象はさまざまであり、興味の対象に「萌え」やエロを感じる者もいれば、感じない者もいる[25]。またフィクション作品においては、ステレオタイプな人物像として「萌えー、萌えー」と叫ぶおたくがしばしば登場するが、これらは誇張されたものであり実情とは異なる[6]。現実においてはおたく同士の会話に用いられることはあっても、日常的な会話や独り言として多用されるほどではない[6]
「萌え」の社会現象化
認知度・利用状況

2002年に萌える法律読本こと『コンピュータユーザのための著作権&法律ガイド』が刊行されており、これ以降出版界において萌え本という形で萌えの露出が拡大していく。

2004年、「電車男」がヒットし「アキバ系」文化が注目を集める。これら2つや「メイドコスプレ」と共に「萌え」が同年のユーキャン流行語大賞にノミネートされ、2005年にはユーキャン流行語大賞の上位10作品に選ばれた。この時期から、先述の「メイド」や「電車男」などに代表されるアキバ系文化の代名詞として広く認識されるようになる。

TBS系『王様のブランチ』「萌え特集」や、 読売新聞夕刊・毎月最終金曜日掲載「OTAKUニッポン」など、テレビ・新聞などでも紹介されている。

社団法人コンピュータエンターテイメント協会(CESA)は2006年4月24日、一般消費者を対象とした「2006年CESA一般生活者調査報告書」を発刊した。「萌え」の認知度・利用状況については、全国の3?79歳の1103人を対象とし、萌えに関する調査を行った[26]。CESAにおける萌え定義は「マンガ・アニメ・ゲームの登場人物(キャラクター)などに愛情を抱くこと」とされる。この定義で認知度を測ってみたところ男女性別平均の認知度は男性548人中66.4%、女性555人中65.6%であった。「よく知っていて自分でも使っている」と答えたのは男性の場合20?24歳の8.9%、女性の場合15?19歳の12.1%が最高であった。
世界共通語としての「萌え」

この節の加筆が望まれています。

英語圏・スペイン語圏・フランス語圏・イタリア語圏ほか、あらゆる国や地域で、「萌え(MOE)」は日本語読みのまま用いられており、「勿体無い」などと同様、日本語から派生した世界共通語であると紹介される例が多い。

その一例として、アニメ作品『涼宮ハルヒの憂鬱』の各国語版でも、日本語版で「萌え」と発言した台詞がある部分は全て「MOE」と吹き替えられており、字幕も「MOE」に置き換わっている。

また、日本と同じ漢字を用いる漢語圏の中国大陸香港台湾であっても、日本よりの影響を受けての「萌」の用法が広まっている[27]

ただし諸外国における「MOE」「萌」の扱いは、架空の可愛らしいキャラクター(萌えキャラ)に対し、特別の感情を抱いた際などに限定されている。

ニューズウィーク日本版』2007年3月14日発売号では、メイド服を着用した少女のイラストを表紙に載せ、「萌える世界」と題した特集を組み、日本発の萌え文化が日本国外へと広まっている様子を伝えている。

中国中央電視台(2017年1月10日)では、「超かわいいパンダ」という意味を含んだ、「最萌大熊猫入?全球最美照片」としたタイトルでパンダの写真を伝えている。
経済的価値への注目ご当地萌えキャラクターの実例。原付萌奈美(愛知県豊明市)と姉妹キャラクター

浜銀総合研究所の調査によると、2003年度のコミック・ゲーム・映像などの「萌え」関連商品の市場規模は888億円に達した[28]。また、地域おこしのPRとしても利用されるようになったケースもある(詳細は萌えおこしの項を参照)。しかし、「萌え市場はあくまでもおたく向け。おたくが増えない限り成長はなく、数年で数倍、という伸び方はしない。10人に1人がおたくになる時代は来ないだろう」という否定的分析もあり[29]、萌え市場がこれ以上は成長しないとされている。

しかし、近年はおたくを名乗る人が増えており、マイナビが2016年卒業予定の大学生・大学院生を対象にした「2016年卒マイナビ大学生のライフスタイル調査」によると、約2.7人に1人は自分のことを「おたく」だと思っているという調査結果が出ている。

インターリンクはこうした萌え文化の経済的価値に着目し、トップレベルドメインとして.moeICANNに申請し2014年から新規登録受付を開始している[30]
「萌え」を巡る議論

「萌え」の概念については様々な解釈があり[3][4]、評論家によるおたく論の中でも議論が交わされている[24]

精神科医の斎藤環は、おたくが用いる「萌え」という言葉を、「芸風」として戯画的に対象化されたセクシャリティであると位置づけた[20]。斎藤は、おたくの創作物が倒錯した性のイメージで満たされながらも、おたくの間では現実の性倒錯者が少数であると指摘し[20]、おたくのセクシャリティを、虚構のリアリティを支える、虚構それ自体が欲望の対象となり現実を必要としないものであるとしてその背景を論じた[31]

批評家の東浩紀は自著においてこうした斎藤の主張を「あまりに複雑」と一蹴した[32]。東は「萌える」ことを、キャラクターを無数の萌え要素へと分解し、各要素の背後にあるデータベースを消費することであると位置づけ[注 1]、単純な感情移入とは異なると論じている[33]。東はおたくの消費行動を閉じた関係の中で欲求を満足する「動物化」とみなし、斎藤が論じた「萌え」の構造を、関係性から切り離されたデータベースの中で、記号化された萌え要素に対して性的興奮を得るという、動物的に慣らされた行為でしかないとして単純化した[34]


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