菱形動物
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genus Dicyema von Kolliker1849[27] ディキエマ属[28]

genus Dicyemennea Whitman, 1883[27]

genus Dicyemodeca (W. M. Wheeler, 1897) Bogolepova, 1957[29]

genus Dodecadicyema Kalavati & Narasimhamurti, 1979[27]

genus Pseudicyema Nouvel, 1933[27]


Family Kantharellidae Czaker, 1994[30] カンタレラ科

genus Kantharella Czaker, 1994[30]


これらの科は、極帽を構成する細胞の特徴によって分けられており、コノキエマ科は極帽を構成する細胞は1層なのに対し、ニハイチュウ科とカンタレラ科は極帽を構成する細胞は2層である[2]
生態

ニハイチュウは底生の頭足類(特にタコ類とコウイカ類)の腎嚢に取り付き、寄生生活を行っている[4][2]。ニハイチュウの有無による宿主の頭足類の形態上の違いは見受けられず、宿主はニハイチュウの寄生による害を被っていないと考えられる[2]。また、逆にそれにより利益を得ているわけでもないようであるため、ニハイチュウは頭足類に対し片利共生の関係にあると考えられる[2]。宿主の腎嚢内で頭部あるいは体全体を腎臓細尿管の間の腔所に挿入し、頭足類が排出する尿の成分を体表から摂取する[28]。また、体皮細胞の表面にある繊毛の繊毛運動により尿中を遊泳したり腎嚢内の腔所を移動する[4]

また、底生の頭足類にニハイチュウが見られるのに対し、外洋性の頭足類にはニハイチュウは少なく、代わりに原生動物繊毛虫であるクロミディナ Chromidina が見られる[31]コウイカ類では、ニハイチュウ類はクロミディナ類と共存することが普通で、小型のものではクロミディナのほうが優勢である[25]。例外的に遊泳性アオリイカスルメイカなどのツツイカ類にもニハイチュウがみられることがある[25]
生活環

ニハイチュウの生活環には無性生殖有性生殖のサイクルが見られる[2]。無性的に発生する幼生を蠕虫型幼生(ぜんちゅうがたようせい、vermiform larva, vermiform embryo、蠕虫型胚[13])、有性生殖により受精卵から発生する幼生滴虫型幼生(てきちゅうがたようせい、infusoriform larva[32], infusoriform embryo、滴虫型胚[13])と呼ぶ[2]。ニハイチュウの名はこの2種類の幼生(胚)をもつことから名付けられている[2]。いずれの幼生も成体の体の内部にある1個の軸細胞の中で発生し、体が完成すると生体から抜け出す[3]。成体のうち、体内に蠕虫型幼生を生じる個体をネマトジェン(nematogen、通常無性虫[13](つうじょうむせいちゅう))、滴虫型幼生を生じる個体をロンボジェン(rhombogen、菱形無性虫[13](りょうけいむせいちゅう))と呼び、これらの成体と蠕虫型幼生はともに長虫状をなし、蠕虫型個体(ぜんちゅうがたこたい)としてまとめられ、滴虫型幼生と形態的に大別される[2]。蠕虫型段階は宿主の腎嚢内で成長と増殖が完結するのに対し、滴虫型段階は新宿主への到達と感染に関わる[9]

宿主内のニハイチュウの個体数が多くない段階ではロンボジェンはほとんど存在せず、ネマトジェンが無性生殖により蠕虫型幼生を生じ、個体数を増やす[9]。個体群密度が増大すると、蠕虫型個体はロンボジェンに相転換し、有性生殖のサイクルに移行すると考えられている[3][9][2]。ロンボジェンはインフゾリゲン(infusorigen)と呼ばれる両性腺を備え、そこから形成された卵と精子で自家受精を行い、滴虫型幼生を生じる[9]。滴虫型幼生は宿主の尿とともに外界の海水中へ放出されるが、どのようにして新宿主の腎嚢に達するのかはわかっていない[9]。また、滴虫型幼生はネマトジェンに変態する際、軸細胞を3個持つステムネマトジェン(stem nematogen、幹蠕虫型無性虫(かんぜんちゅうがたむせいちゅう))を生じるとされているが、その形成過程やその後の発生についても未だ分かっていない[13]
生理

ニハイチュウには組織や器官と呼べる構造はなく、飲作用や細胞膜を介しての能動輸送や拡散により栄養摂取や老廃物の排出等を行っていると考えられる[4]
環境と生存率

宿主から尿を抽出し、濾過滅菌したものと、天然海水を濾過した海水を用意し、ともに14℃で各ステージのニハイチュウを入れると、滴虫型幼生はどちらでも2日間以上生存した個体が少なかった[4]。ネマトジェンでは尿中では10日間以上生存するのに対し、海水中では5日間以上生存した個体は見られないという結果になった[4]。また、ヤマトニハイチュウ Dicyema japonicumの滴虫型幼生では、海水の温度が28℃のときは50%生存期間は12時間で21時間以上生存した個体はいなかったのに対し、14℃のときは50%生存期間は42時間で最大生存期間は60時間であった[13]
ネマトジェンとロンボジェンの相互転換

LapanとMorowitzの実験では、人工培養液中で固体密度を上げると約1日でネマトジェンが滴虫型幼生を形成し始めてロンボジェンに転換し、個体群密度を元に戻すとロンボジェンがネマトジェンになる逆の転換が起こることが確認された[13][33]。ネマトジェンからロンボジェンへの転換中個体の軸細胞内にはインフゾリゲンと発生中の滴虫型幼生、そして退化中の蠕虫型幼生が混在する[13]。しかし個体群密度上昇による相転換が何により引き起こされているかは明らかになっていない[4]
形態ニハイチュウ Dicyema sp. (ロンボジェン)の頭部のスケッチと、各部の名称

生活環の項で記述の通り、形態的に成体(ネマトジェン・ロンボジェン)と蠕虫型幼生からなる蠕虫型個体と、滴虫型幼生に区別でき[34]、どちらも組織器官と呼べる構造を持たない[4]
成体の体制

成体(あるいは蠕虫型個体)の形態はネマトジェン、ロンボジェンに拘らずほぼ共通で、極帽と呼ばれる頭部とそれに続く胴部を持つ[13]。また、体の構造は内外2層で非常に単純であり、内部は1個の軸細胞 (じくさいぼう、axial cell)と呼ばれる1個の円筒形の細胞、外側は繊毛を持つ体皮細胞 (たいひさいぼう、peripheral cell)と呼ばれる1層の細胞群に覆われている[4]極帽 (きょくぼう、calotte)は通常8ないし9個の体皮細胞からなり、繊毛を密生している[13][4]。極帽の体皮細胞は前極細胞 (ぜんきょくさいぼう、propolar cell)と後極細胞 (こうきょくさいぼう、metapolar cell)と呼ばれ、前者は通常4個、後者は4-5個存在する[4]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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