菱形動物
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[22]この2門はMesozoaと呼ばれるクレードを構成し、このクレードは吸啜動物(腹毛動物門+扁形動物門)の姉妹群、もしくは側系統腹毛動物門から分岐していることが示唆された。一方で、2018年のSchifferらによる解析では、直泳動物門環形動物門の一部であり、二胚動物門姉妹群ではないことが示唆され、謎は深まるばかりである。[23]
下位分類各種の蠕虫型幼生。(a)-(c):Microcyema vespa, (d)-(f):Conocyema polymorpha, (g)-(i):Dicyema apalachiensis, (j)-(l):Pseudicyema nakaoi[24]

現在の二胚動物門の下位分類は以下の通りとなっている[2]。ニハイチュウ類の分類は、外形や頭部形態の特徴などの形態的な指標に加え、極帽の細胞数、体皮細胞数や幼生の細胞数といった体を構成する細胞数の違いを指標としている[2]。これはニハイチュウが種によって一定の細胞数を持っていることを利用している[2]。特に属を分類する指標は極帽を構成する細胞数とその配列、種を分類する指標は極帽の形態、体皮細胞の総数、滴虫型幼生の細胞総数、芽胞嚢細胞の核数とされる[9]。このうちディキエマ属はニハイチュウ類最大のグループで、全種数の約6割を占めている[25]。次いでDicyemennea 属が多く、2属を合わせると全ニハイチュウ類の9割を超える種数となる[25]

Phylum Dicyemida 二胚動物門

Family Conocyemidae コノキエマ科

genus Conocyema van Beneden, 1882[26]

genus Microcyema van Beneden, 1882[26]


Family Dicyemidae van Beneden, 1882[27] ニハイチュウ科

genus Dicyema von Kolliker1849[27] ディキエマ属[28]

genus Dicyemennea Whitman, 1883[27]

genus Dicyemodeca (W. M. Wheeler, 1897) Bogolepova, 1957[29]

genus Dodecadicyema Kalavati & Narasimhamurti, 1979[27]

genus Pseudicyema Nouvel, 1933[27]


Family Kantharellidae Czaker, 1994[30] カンタレラ科

genus Kantharella Czaker, 1994[30]


これらの科は、極帽を構成する細胞の特徴によって分けられており、コノキエマ科は極帽を構成する細胞は1層なのに対し、ニハイチュウ科とカンタレラ科は極帽を構成する細胞は2層である[2]
生態

ニハイチュウは底生の頭足類(特にタコ類とコウイカ類)の腎嚢に取り付き、寄生生活を行っている[4][2]。ニハイチュウの有無による宿主の頭足類の形態上の違いは見受けられず、宿主はニハイチュウの寄生による害を被っていないと考えられる[2]。また、逆にそれにより利益を得ているわけでもないようであるため、ニハイチュウは頭足類に対し片利共生の関係にあると考えられる[2]。宿主の腎嚢内で頭部あるいは体全体を腎臓細尿管の間の腔所に挿入し、頭足類が排出する尿の成分を体表から摂取する[28]。また、体皮細胞の表面にある繊毛の繊毛運動により尿中を遊泳したり腎嚢内の腔所を移動する[4]

また、底生の頭足類にニハイチュウが見られるのに対し、外洋性の頭足類にはニハイチュウは少なく、代わりに原生動物繊毛虫であるクロミディナ Chromidina が見られる[31]コウイカ類では、ニハイチュウ類はクロミディナ類と共存することが普通で、小型のものではクロミディナのほうが優勢である[25]。例外的に遊泳性アオリイカスルメイカなどのツツイカ類にもニハイチュウがみられることがある[25]
生活環

ニハイチュウの生活環には無性生殖有性生殖のサイクルが見られる[2]。無性的に発生する幼生を蠕虫型幼生(ぜんちゅうがたようせい、vermiform larva, vermiform embryo、蠕虫型胚[13])、有性生殖により受精卵から発生する幼生滴虫型幼生(てきちゅうがたようせい、infusoriform larva[32], infusoriform embryo、滴虫型胚[13])と呼ぶ[2]。ニハイチュウの名はこの2種類の幼生(胚)をもつことから名付けられている[2]。いずれの幼生も成体の体の内部にある1個の軸細胞の中で発生し、体が完成すると生体から抜け出す[3]。成体のうち、体内に蠕虫型幼生を生じる個体をネマトジェン(nematogen、通常無性虫[13](つうじょうむせいちゅう))、滴虫型幼生を生じる個体をロンボジェン(rhombogen、菱形無性虫[13](りょうけいむせいちゅう))と呼び、これらの成体と蠕虫型幼生はともに長虫状をなし、蠕虫型個体(ぜんちゅうがたこたい)としてまとめられ、滴虫型幼生と形態的に大別される[2]。蠕虫型段階は宿主の腎嚢内で成長と増殖が完結するのに対し、滴虫型段階は新宿主への到達と感染に関わる[9]

宿主内のニハイチュウの個体数が多くない段階ではロンボジェンはほとんど存在せず、ネマトジェンが無性生殖により蠕虫型幼生を生じ、個体数を増やす[9]。個体群密度が増大すると、蠕虫型個体はロンボジェンに相転換し、有性生殖のサイクルに移行すると考えられている[3][9][2]。ロンボジェンはインフゾリゲン(infusorigen)と呼ばれる両性腺を備え、そこから形成された卵と精子で自家受精を行い、滴虫型幼生を生じる[9]。滴虫型幼生は宿主の尿とともに外界の海水中へ放出されるが、どのようにして新宿主の腎嚢に達するのかはわかっていない[9]。また、滴虫型幼生はネマトジェンに変態する際、軸細胞を3個持つステムネマトジェン(stem nematogen、幹蠕虫型無性虫(かんぜんちゅうがたむせいちゅう))を生じるとされているが、その形成過程やその後の発生についても未だ分かっていない[13]
生理

ニハイチュウには組織や器官と呼べる構造はなく、飲作用や細胞膜を介しての能動輸送や拡散により栄養摂取や老廃物の排出等を行っていると考えられる[4]
環境と生存率

宿主から尿を抽出し、濾過滅菌したものと、天然海水を濾過した海水を用意し、ともに14℃で各ステージのニハイチュウを入れると、滴虫型幼生はどちらでも2日間以上生存した個体が少なかった[4]


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