菱形動物
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1974年にLapanとMorowitzはDicyemennea 属ニハイチュウのGC含量の比較による系統解析を行ったところ、ニハイチュウのGC含量は23%で、それまで知られていた他の生物のGC含量は原生動物である繊毛虫類の22-35%、鞭毛虫類の45-60%、縮小条虫 Hymenolepis diminuta (Rudolphi1819)では36%、タコの肝臓に寄生する四吻目の条虫では47%であったため、繊毛虫類との類縁性を示唆した[13][8][19][9]。また、1987年には、堀寛大澤省三による5SrRNA塩基配列の比較による系統解析が行われ、もっとも原始的な多細胞動物とされ、前者の説を支持した[9][8]。しかしこれらの手法は今日では系統解析に適さないと考えられており、逆に1995年の片山らによる18SrDNAに基づく研究[20]では扁形動物の一員に位置付けられ[9]、1999年の小林らによるHox遺伝子の分子系統学的解析[21]ではニハイチュウは三胚葉動物の、特に螺旋卵割動物であると示された[8][9]。2017年のLuらによる解析では、直泳動物門の姉妹群であることが示された。[22]この2門はMesozoaと呼ばれるクレードを構成し、このクレードは吸啜動物(腹毛動物門+扁形動物門)の姉妹群、もしくは側系統腹毛動物門から分岐していることが示唆された。一方で、2018年のSchifferらによる解析では、直泳動物門環形動物門の一部であり、二胚動物門姉妹群ではないことが示唆され、謎は深まるばかりである。[23]
下位分類各種の蠕虫型幼生。(a)-(c):Microcyema vespa, (d)-(f):Conocyema polymorpha, (g)-(i):Dicyema apalachiensis, (j)-(l):Pseudicyema nakaoi[24]

現在の二胚動物門の下位分類は以下の通りとなっている[2]。ニハイチュウ類の分類は、外形や頭部形態の特徴などの形態的な指標に加え、極帽の細胞数、体皮細胞数や幼生の細胞数といった体を構成する細胞数の違いを指標としている[2]。これはニハイチュウが種によって一定の細胞数を持っていることを利用している[2]。特に属を分類する指標は極帽を構成する細胞数とその配列、種を分類する指標は極帽の形態、体皮細胞の総数、滴虫型幼生の細胞総数、芽胞嚢細胞の核数とされる[9]。このうちディキエマ属はニハイチュウ類最大のグループで、全種数の約6割を占めている[25]。次いでDicyemennea 属が多く、2属を合わせると全ニハイチュウ類の9割を超える種数となる[25]

Phylum Dicyemida 二胚動物門

Family Conocyemidae コノキエマ科

genus Conocyema van Beneden, 1882[26]

genus Microcyema van Beneden, 1882[26]


Family Dicyemidae van Beneden, 1882[27] ニハイチュウ科

genus Dicyema von Kolliker1849[27] ディキエマ属[28]

genus Dicyemennea Whitman, 1883[27]

genus Dicyemodeca (W. M. Wheeler, 1897) Bogolepova, 1957[29]

genus Dodecadicyema Kalavati & Narasimhamurti, 1979[27]

genus Pseudicyema Nouvel, 1933[27]


Family Kantharellidae Czaker, 1994[30] カンタレラ科

genus Kantharella Czaker, 1994[30]


これらの科は、極帽を構成する細胞の特徴によって分けられており、コノキエマ科は極帽を構成する細胞は1層なのに対し、ニハイチュウ科とカンタレラ科は極帽を構成する細胞は2層である[2]
生態

ニハイチュウは底生の頭足類(特にタコ類とコウイカ類)の腎嚢に取り付き、寄生生活を行っている[4][2]。ニハイチュウの有無による宿主の頭足類の形態上の違いは見受けられず、宿主はニハイチュウの寄生による害を被っていないと考えられる[2]。また、逆にそれにより利益を得ているわけでもないようであるため、ニハイチュウは頭足類に対し片利共生の関係にあると考えられる[2]。宿主の腎嚢内で頭部あるいは体全体を腎臓細尿管の間の腔所に挿入し、頭足類が排出する尿の成分を体表から摂取する[28]。また、体皮細胞の表面にある繊毛の繊毛運動により尿中を遊泳したり腎嚢内の腔所を移動する[4]

また、底生の頭足類にニハイチュウが見られるのに対し、外洋性の頭足類にはニハイチュウは少なく、代わりに原生動物繊毛虫であるクロミディナ Chromidina が見られる[31]コウイカ類では、ニハイチュウ類はクロミディナ類と共存することが普通で、小型のものではクロミディナのほうが優勢である[25]。例外的に遊泳性アオリイカスルメイカなどのツツイカ類にもニハイチュウがみられることがある[25]
生活環

ニハイチュウの生活環には無性生殖有性生殖のサイクルが見られる[2]。無性的に発生する幼生を蠕虫型幼生(ぜんちゅうがたようせい、vermiform larva, vermiform embryo、蠕虫型胚[13])、有性生殖により受精卵から発生する幼生滴虫型幼生(てきちゅうがたようせい、infusoriform larva[32], infusoriform embryo、滴虫型胚[13])と呼ぶ[2]。ニハイチュウの名はこの2種類の幼生(胚)をもつことから名付けられている[2]。いずれの幼生も成体の体の内部にある1個の軸細胞の中で発生し、体が完成すると生体から抜け出す[3]。成体のうち、体内に蠕虫型幼生を生じる個体をネマトジェン(nematogen、通常無性虫[13](つうじょうむせいちゅう))、滴虫型幼生を生じる個体をロンボジェン(rhombogen、菱形無性虫[13](りょうけいむせいちゅう))と呼び、これらの成体と蠕虫型幼生はともに長虫状をなし、蠕虫型個体(ぜんちゅうがたこたい)としてまとめられ、滴虫型幼生と形態的に大別される[2]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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