そのほか、貴腐ワインの生産には果実につくハイイロカビが必要であるなど、カビが関わる食品は様々である。
菌類には様々な有機化合物を生産するものがいる。例えば、アオカビの一種は抗生物質のペニシリンを生産する[26]。また他にもシクロスポリン[27]、クレスチン[28] などが菌類に由来する薬品として用いられてきた。 ベニテングタケは猛毒のアルカロイド、アミノ酸を含んでいる。マジックマッシュルームのように動物の中枢神経に作用し、幻覚症状を引き起こす成分を含んでいる菌類もある。 様々な植物に寄生する菌類が知られている。中には農作物に重大な被害を与えるものも多々ある。植物に寄生する菌類は様々な群に含まれる。代表的なものを以下に挙げる。
病原体としての菌類
植物病原菌
ツボカビ門:サビフクロカビ
接合菌門:コウガイケカビ(Choanephora コウガイケカビ病など)
子嚢菌門:タフリナ(Taphrina 桜のテング巣病など)・ウドンコカビ(Erysiphe うどんこ病)、ハイイロカビ(Botrytis 各種植物の灰色カビ病など)
担子菌門
サビキン綱:サビキン(Puccinia 各種植物のさび病など)
クロボキン綱:クロボキン(Ustilago コムギ・オオムギの裸黒穂病など)、(Tilletia 小麦・大麦のなまぐさ黒穂病など)
なお、卵菌類にも植物寄生菌があり、アブラナ科の白さび病など菌類の起こすものと似た病気が知られる。
真菌症詳細は「真菌症」を参照
菌類によって、ヒトやその他の動物が感染する病気(感染症)として、白癬菌による白癬(水虫、たむし、およびしらくも)やカンジダによるカンジダ症、マラセチアによる脂漏性湿疹、クリプトコックスによるクリプトコックス症、アスペルギルスによるアスペルギルス症、プネウモキスチス(ニューモシスチス)によるニューモシスチス肺炎があり、臨床的に問題となっている。
医学及び獣医学領域においては、菌類を『真菌』と呼び、その学問を医真菌学と称する。真菌による感染症は一般に真菌症と呼ばれ、患部が皮膚の角質に止まり真皮に及ばない表在性真菌症と、患部が真皮以降の皮下組織におよぶ深部表在性真菌症や、脳、肺、心臓などの内部臓器まで及ぶ深在性真菌症(全身性真菌症、内臓真菌症)に大別される[13]。主に皮膚科領域で扱う前両者と、内科系で扱う後者では、病気の性質が大きく異なり、治療法および、使用可能な薬剤(抗真菌薬)も異なる。
これらの病原菌は、多糖類からなるキチン質の強固な細胞壁を持っているのみならず、人体と同じ真核生物であるため、菌類の細胞だけに損傷を与えて人体組織に害の少ない薬物は、非常に限られたものとなる。そのため、原核生物であり、非対称的に細菌のみに大きな損傷を与えることのできる抗生物質が多く発見されている細菌による感染症に比べ、治療が困難である[13](白癬菌による水虫の抗真菌薬を開発すれば「ノーベル賞が取れる」と言われるのはこのため)。
また、深在性真菌症は日和見感染症の色彩が強く、診断も困難であることから症例は増加の一途にあり、致命率も高い。また世界における風土病が、重篤な輸入感染症として日本で発症する事例も増加している。医学医療の高度化、国民の高齢化、および国際交流の普遍化を背景に、真菌症の教育、研究、および臨床を充実させることが期待される。 動植物への寄生を利用して、害虫や雑草を防ぐ生物農薬として使われる菌類がある。 この他に、菌類の生産する毒素(毒キノコやカビ毒)による中毒症や、アレルギー症といった病気の原因でもある[13]。
生物農薬
その他
出典[脚注の使い方]^ Moore RT. (1980). “Taxonomic proposals for the classification of marine yeasts and other yeast-like fungi including the smuts”. Botanica Marine 23: 361?73.
^ “卵菌類(きんるい)とは
^ “菌類(きんるい)とは
^ (Webster 1985, p. 1)、変形菌関連を除いて記述
^ Cavalier-smith,2001,p3
^ a b Hibbett et al. (2018). “Phylogenetic taxon definitions for Fungi, Dikarya, Ascomycota and Basidiomycota”. IMA Fungus 9: 291-298. doi:10.5598/imafungus.2018.09.02.05.
^ 柿嶌 & 徳増 2014, p. 197.