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ヨーロッパの最古の茶に関する記述は、ヴェネツィアのジョヴァンニ・ラムージオによるもので、1550年代の著書『航海と旅行』第2巻で、ペルシャ人からの伝聞として「カタイのチャイ」(Chiai Catai)の効能について記している[注釈 14]。16世紀にはほかにもいくつかの文献が中国や日本の茶について「chia, chaa」などの名で紹介している。

本格的にヨーロッパに茶がもたらされたのは、1609年、オランダが日本の平戸島に商館を設け、翌年、日本茶と中国茶がジャワ経由でヨーロッパに輸出されてからである[139]。薬屋で量り売りされる高価なもので、聖職者が眠気覚ましの薬に用いたとも言われる。17世紀前半には、オランダの医師が、茶は万病に効き、長生きの妙薬だと述べたのに対し、ドイツフランスの医師が、茶の害を説いた文章を発表している[140]

イギリスでも茶について賛否両論があったが、1640年に初めてティールームが開業されるなど、徐々に浸透していった。当初はイギリスでも緑茶で飲んでいた。清教徒革命の後にオリバー・クロムウェルイングランド共和国の実権を握った時、その頃に流行り始めていた茶に課税することを思いつき、実行した[141][142]。この抑制が国王政府への反抗心に作用し、茶の密輸が横行した[143]。聖職者が密輸業に加担していたことが茶の普及に拍車をかけた。クロムウェルの時代が終わったとき、イギリス国民に喫茶の習慣が確立していた[144][145]

17世紀後半には、「午後の茶」(アフタヌーン・ティー)の習慣が定着した[146]。同じ頃、緑茶よりも紅茶が優勢となった。これは、中国や日本と異なり、イギリスでは軟水ではなく硬水を使っていたためである。サミュエル・ジョンソンは、1757年、喫茶否定論に反論して「私の湯沸かしは、ほとんど冷める暇はない。晩に茶で楽しみ、夜でも茶で慰み、朝でも茶で目が覚める。」と書いている[147]。イギリスでは、他のヨーロッパ諸国に比べて喫茶の風習が広く浸透したが、その理由として、イギリスの水が茶に合ったこと、フランス、イタリアのワインや、ドイツのビールに当たるような飲み物がイギリスになかったことなどが挙げられている[148]

茶貿易もオランダではなくイギリスが主導権をとり、中国産の茶がヨーロッパで主役となった[149]。中国貿易を独占していたのがイギリス東インド会社であったが、その三角貿易がアヘン戦争につながった(前述清代)。19世紀の半ばには、茶を運ぶ「クリッパー」と呼ばれる高速帆船による速度記録競争が過熱した[150]。殊勲を上げた海運業者には報奨金とブルーリボンが与えられた。この競争に世界中の港と賭け屋が夢中になったと言われる[151]
アメリカ

アメリカのイギリス植民地でも中国産の茶が飲まれていたが、フランスやオランダの商人がイギリスの課税を免れて安い密輸茶を運んでいた。イギリス本国政府は、1773年、茶法(茶税法)を制定し、密輸茶を取り締まり、東インド会社の市場独占を確立しようとした。しかしこれがアメリカ市民の反発を招いて同年、ボストン茶会事件が起こり、アメリカ独立戦争につながった[152]。この時代に茶法の反対運動が激化し、不買運動にまでつながった。代わってアメリカではコーヒーを飲む文化が広まることになった。

アメリカ合衆国は独立後、自前で中国貿易に参入。アメリカ人参、ラッコアザラシ毛皮綿花胡椒、羽紗などを清に輸出して、見返りに茶などを買った[153]。このことが太平洋航路の開発につながった。
産業
生産2017年における世界生産量に占める割合(色が濃いほど生産割合が高い)。 .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}   20% 以上    10 から 20%.    5 から 10%.    1 から 5%.    0.5 から 1%.    0.5% 未満

国連食糧農業機関 (FAO) の統計によれば、2010年における世界の茶葉生産量は、約452万トンである。地域別では、アジアが生産量の約84%、アフリカが約14%、南北アメリカが約2%を占める。上位5か国は中国インドケニアスリランカトルコであり、国別生産量は次表のとおり[154]

国200820092010
 中国1,274,9841,375,7801,467,467
 インド987,000972,700991,180
 ケニア345,800314,100399,000
 スリランカ318,700290,000282,300
 トルコ198,046198,601235,000
 ベトナム173,500185,700198,466
 イラン165,717165,717165,717
 インドネシア150,851146,440150,000
 アルゼンチン80,14271,71588,574
 日本96,50086,00085,000
合計4,211,3974,242,2804,518,060

日本の茶の生産量は静岡県が1位である(2020年統計)[155]。続いて鹿児島県が2位、三重県が3位、宮崎県が4位である[155][156]。産出額においては静岡県が2019年に鹿児島県に抜かれ、1970年から49年間続いた首位の座から陥落した[157][158]
販売

世界での茶類の販売額は454億ドルと推計され(イギリスの調査会社ユーロモニターインターナショナルによる)、「リプトン」ブランドを有するユニリーバが10%強のシェアを持つ最大手である[159]
成分と効能酸化成分が異なるお茶

色々な茶(浸出液)100 g中の主な成分の比較[160]玉露煎茶ほうじ茶番茶玄米茶紅茶ウーロン茶
タンパク質1.3 g0.2 g0 g0 g0 g0.1 g0 g
ビタミンB20.11 mg0.05 mg0.02 mg0.03 mg0.01 mg0.01 mg0.03 mg
葉酸(ビタミンB9)150 μg16 μg13 μg7 μg3 μg3 μg2 μg
ビタミンC19 mg6 mg0 mg3 mg1 mg0 mg0 mg
カフェイン16 mg20 mg20 mg10 mg10 mg30 mg20 mg
タンニン23 mg70 mg40 mg30 mg10 mg10 mg30 mg

茶(instant, unsweetened, powder)100 gあたりの栄養価
エネルギー1,320 kJ (320 kcal)

炭水化物58.66 g
糖類5.53 g
食物繊維8.5 g


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