英語
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訛りは比較的強いが[46]、アメリカ英語ほど変化は激しくなく、オーストラリアの映画などは他の英語圏でもイギリス英語を理解できるものなら分かる。地域間の言語差異は非常に小さい一方で、社会階層により「洗練された」(Cultivated)、「一般的な」(General)、「訛りの強い」(Broad)の3種の社会方言が存在する。かつては容認発音に近いとされるCultivated方言が標準語とされて社会上層や放送などで使用されていたが、20世紀末以降使用が激減し、General方言が標準語としての地位を確立した。Broad方言は地方や労働者階級などで使用者が多いが、こちらの話者も20世紀末以降減少が続き、General方言への一本化が進みつつある[47]

ニュージーランドで使用される英語は、オーストラリア英語とほぼ類似しており、綴りや発音もイギリス英語の傾向だが、同国のもう1つの公用語であるマオリ語(先住民族マオリの言語)の影響も受けている。オーストラリアと同様、地域差が非常に少ない一方でCultivated、General、Broadの3方言が存在する[48]
母語圏以外の英語事情
南アフリカの英語事情詳細は「南アフリカ英語」を参照

南アフリカは大きな英語母語話者の集団が存在するものの多数派ではなく、2011年時点で英語母語話者人口は総人口の約9.6%を占めるに過ぎず、ズールー語コサ語アフリカーンス語に次ぐ規模にとどまっている。公用語としても唯一のものではなく、11ある公用語のうちの一つに過ぎない。一方で第二・第三言語として英語を使用する人口は非常に多く、事実上国内の共通語となっている。もともとアパルトヘイト期においては白人系の言語であるアフリカーンス語と英語の2言語のみが公用語となっており、なかでも政府や社会の主導権を握るアフリカーナーの言語であるアフリカーンス語の利用が積極的に進められたものの、この政策は差別される側である黒人の強い反発を招き、その反動からアパルトヘイト撤廃後は英語の共通語化が急速に進んだ[49]
インドの英語事情詳細は「インド英語」を参照

インドでは英語はヒンディー語と並んで公用語の地位にあるが、現状に至るまでには紆余曲折が存在した。インドには英語の母語話者がほぼ存在せず、一方で北部を中心にヒンディー語が広大な共通言語圏を形成していたため、憲法制定時にはヒンディー語の単独公用語化が目指され、英語は「1965年までは公用語として併用される」との規定が定められていた[50]。しかしまったく言語圏の違う南部のドラヴィダ諸語圏からの反発が非常に強く、1965年に憲法における英語併用期限が切れると同時に激しい反対運動が巻き起こり、2週間後には事実上公用語2言語制の継続が決定した[51]。一方で、ヒンディー語話者を中心に英語公用語化への反発も存在する[52]
日本の英語事情「日本における英語」も参照

日本では、学校教育の場合、文部科学省が定める学習指導要領により、義務教育である中学校3年間と小学校5・6年生で英語が必修教科となっているが、「受験英語」という言葉があるように読解力が特に重視されていて、会話(英会話)があまり教えられていないため、受験(入学試験)が終わると英語に接する機会が少なく、非英語圏の先進国アジア域内諸国と比べても通用度は低い(全く話せず、聞き取れず、という人がほとんど)。

江戸時代末期にアメリカイギリスからの使節と交渉する必要が生じ、日本での英語の歴史が始まった。ジョン万次郎が著した日本最初の英会話教本には、(日本語とは語順の違う)英文の意味を取りやすいよう、漢文のような返り点が打たれていた。英国外交官ミットフォードは1866年から4年間日本に滞在し貝原好古の『諺艸』など和書の一部を英訳して本国で紹介しており、初めて英訳された日本の文書はこれであろうと述べている[53][注釈 1]

島村盛助など英文学者らが和英辞書を編纂したが、英語は第二次世界大戦中は、敵性語として排斥されていた時期もあった。今日、日本における英語は依然第一外国語であり、科学技術や諸制度の吸収のための手段や通商の道具(商業英語)という位置付けである。

高校受験大学受験各種学校の必修・選択単位取得においては、英語を読解する能力が重視され、英文和訳を中心とした授業(いわゆる受験英語の学習)が行われている。日本語での出版活動が盛んで、多くの英語の書籍が日本語へ翻訳されることから、日常生活で英語の読解に迫られることはあまりないが、職種によっては英文文献の読解が必要となることは少なくない。そのため、専門分野の英文の理解はできるが、日常会話の経験はなく、英会話に苦手意識を持っている日本人は多い。

日本では、非都市部を中心に英語会話能力を特殊技能と見なす傾向が認められる。日本では大学の講義を英語ではなく日本語で受けることができること、すなわち日本の高等教育は母語だけで十分に享受できるということ、英語を母語とする人が1%未満であり日本語だけで日常生活に支障をきたさないことなど複合的な要素によって、日本国内では特定の業界や職種を除き、英会話の必要性が乏しいためである。一方、東京・大阪・神戸・名古屋・福岡などの都市圏では英語話者のコミュニティが形成されている他、英語放送局も存在する。日本の案内標識は英文併記が多い。
英語に関する資格試験詳細は「英語検定」を参照

実用英語技能検定

国際コミュニケーション英語能力テスト

TOEFL

IELTS

ケンブリッジ英語検定試験

英語に関する辞典

英英辞典 - オックスフォード英語辞典

英和辞典

和英辞典

脚注[脚注の使い方]
注釈^ ミットフォード貝原好古『諺艸』の他、佐倉惣五郎を描いた悲劇『東山桜荘子』なども英訳した。

出典^ “English”. エスノローグ26版 (2023年). 2023年11月29日閲覧。
^ Hammarstrom, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). ⇒“英語”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. ⇒http://glottolog.org/resource/languoid/id/stan1293 
^ 例えば、青木輔清 編『英吉利語学便覧 初編』(明治5年刊)など。
^ kotobank「米語」(kotobank)
^ 「英語の歴史」p97-100 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
^ 「言語世界地図」p197-199 町田健 新潮新書 2008年5月20日発行
^ 「英語の歴史」p137 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
^ 「世界の英語ができるまで」p239-241 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
^ 「世界の英語ができるまで」p247-249 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
^ 「英語の歴史」p146 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
^ 「よくわかる社会言語学」(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)p81 田中春美・田中幸子編著 ミネルヴァ書房 2015年9月20日初版第1刷発行
^ 「英語の歴史」p24-25 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
^ 「英語の歴史」p38 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
^ 「世界の英語ができるまで」p20-21 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行


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