1939年4月28日にアドルフ・ヒトラーはこの協定の破棄を通告した。 この協定は、ドイツ海軍の軍艦の総トン数を英海軍の総トン数の35%、潜水艦の総トン数を英海軍の総トン数の45%以下とする比率を定め[3][6]、また特別の状況では、しかるべき通告さえすれば、100パーセントまで建造を許され、その分だけ他の艦船は削減されることになった[7]。1935年7月12日に国際連盟条約集に登録された[8]。 潜水艦はUボートも含むのだが、デビッド・メイソン著「Uボート: 海の狼、あの船団を追え」において著者は このUボート兵力の取決めは、イギリスの好意的な意図に基いたものではなく、もちろん、イギリスに犠牲をしいるものでもなかった。 イギリスは全世界の海軍のどこでも、潜水艦は将来それほど希望のもてる兵器ではなく、とくにイギリスではその能力を低く評価していたからであった。 英海軍の主要任務は、数世紀にわたる伝統のもとで考え方がねられ、「英帝国の海上交通路の確保」にあるということにかたまったのである。 そして将来の戦略も、この考えにもとづくものであった。 それはむしろ防衛的な任務であり、攻撃的な性格がとくに強い潜水艦は、この任務にむいていなかった。 その結果、英海軍の潜水艦は保有量を低くおさえられていた。 一九三九年〔昭和十四年〕になっても、英海軍はわずか五七隻の潜水艦を保有したにすぎなかった。 と述べている。 この協定は、同年3月にアドルフ・ヒトラー総統が行ったドイツ再軍備宣言(ひいては、1919年に調印されたヴェルサイユ条約で定められた、海軍艦艇に関する制限規定の破棄)を、イギリスが事実上追認したものとみなされた。また、英仏伊によるストレーザ戦線も足並みがそろわなくなり、潜水艦も許可されたことによりUボートの再保有にも道ができる結果となった。 当時、イギリス議会のほとんどのメンバーは、この協定によってイギリスが世界で最も支配的な海軍大国としての地位を維持できると考えていた。しかし、彼らの多くは、自分たちが世界帝国を守らなければならないのに対し、ドイツの海軍艦隊は自国の港を守るだけでよいという事実を見落としていた[5]。 ちなみに、この結果や、反宥和政策派であったことからウィンストン・チャーチルはこの協定を批判している[9]。以下は、著書においてチャーチルが英独海軍協定を批判している文である。 「凡そ軍人が政治に口出しすることは常に危険なことである。・・・しばらく前から、イギリスとドイツの両海軍省のあいだに、両国海軍の比率に関する交渉が行われていたのである。ヴェルサイユ条約によって、ドイツは六千トンを越えない軽巡洋艦六隻と、一万トンの戦闘艦六隻以上を建造することを許されていなかった。最近イギリス海軍省が発見したところによると、ドイツが最近建造中の二隻のポケット戦艦――シャルンホルスト号とグナイゼナウ号は、条約によって認められたよりも、はるかに大型であり、しかも全く異った型のものであった。...この周到な計画の下に、少なくとも二年前(一九三三年)に着手された、厚かましい詐欺的な平和条約の侵犯に直面して、イギリス海軍省は現実の上に立って、英独海軍協定を結ぶ必要があると考えた。イギリス政府はこれを同盟国のフランスにも相談せず、国際連盟にも通告せずに実行した。イギリス自身が連盟に提訴し、ヒトラーが平和条約(ヴェルサイユ条約)の陸軍条項を侵犯したのに対して抗議するために、連盟加盟国の支持を求めつつあったちょうどそのときに、イギリスは同じ条約の海軍条項を放棄するための、ひそかな協定を進めていたのである。」
内容
結果
?チャーチル『第2次世界大戦1』より p.119
注訳^ しかしすでにイギリスは英独海軍協定を示唆していたので、この抗議も口先だけのものにすぎなかった。
脚注[脚注の使い方]^ Jackel, Eberhard (1981). Hitler's World View A Blueprint for Power.. ハーバード大学出版局. p. 20
^ Maiolo, Joseph (1998). The Royal Navy and Nazi Germany, 1933?39 A Study in Appeasement and the Origins of the Second World War.. マクミランプレス. p. 22. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 0-312-21456-1
^ a b 三訂版,百科事典マイペディア,デジタル大辞泉,日本大百科全書(ニッポニカ),世界大百科事典内言及, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,旺文社世界史事典. “英独海軍協定(えいどくかいぐんきょうてい)とは? 意味や使い方
^ 『ヒトラーの外交官―リッベントロップは、なぜ悪魔に仕えたか』サイマル出版会、1995年、99,102頁。
^ a b c d e f primeo (2013年5月26日). “Anglo-German Naval Agreement (June 18, 1935) - Summary & Facts
^ Maiolo 1998, pp. 35?36.
^ ベビット・メイソン 寺井義守訳 (1971). Uボート “海の狼、あの船団を狙え”. サンケイ新聞社出版局
^ League of Nations Treaty Series, vol. 161, pp. 10?20.
^ 日経ビジネス電子版. “安倍さんでなくチャーチルが今の首相だったら
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ドイツ国会議事堂放火事件
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