船長
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船長は船舶の運行責任者として船舶指揮権を有する[11]。船舶指揮権は船主から授権されたものではなく船舶共同体の安全確保のために法律によって国から授権された権限である[11]

船舶指揮権の内容は以下参照。


指揮命令権

船長は指揮命令権を有し、海員を指揮監督し、かつ、船内にある者に対して自己の職務を行うのに必要な命令をすることができる(船員法第7条)。


懲戒権

船長は、海員が船員法21条の事項を守らないときは、これを懲戒することができる(船員法22条-24条)。


危険に対する処置

船長は、海員が凶器、爆発又は発火しやすい物、劇薬その他の危険物を所持するときは、その物につき保管、放棄その他の処置をすることができる(船員法25条)。

船長は、船内にある者の生命若しくは身体又は船舶に危害を及ぼすような行為をしようとする海員に対し、その危害を避けるのに必要な処置をすることができる(船員法26条)。

船長は、必要があると認めるときは、旅客その他船内にある者に対しても、前二条に規定する処置をすることができる(船員法27条)。


強制下船

船長は、雇入契約の終了の届出をした後当該届出に係る海員が船舶を去らないときは、その海員を強制して船舶から去らせることができる(船員法28条)。


行政庁に対する援助の請求

船長は、海員その他船内にある者の行為が人命又は船舶に危害を及ぼしその他船内の秩序を著しくみだす場合において、必要があると認めるときは、行政庁に援助を請求することができる(船員法29条)。


水葬

船長は、船舶の航行中船内にある者が死亡したときは、国土交通省令の定めるところにより、これを水葬に付することができる(船員法15条)。


司法警察権

遠洋区域、近海区域又は沿海区域を航行する総トン数20トン以上の船舶の船長は、他の一定の海員と共に特別司法警察職員に指定されている(司法警察職員等指定応急措置法(昭和23年法律第234号)第1条及び司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ關スル件 (大正12年勅令第528号))。


船長の義務

善管注意義務

旧商法では、船長は善管注意義務を負い、船長はその職務を行うにつき注意を怠たらなかったことを証明しなければ船舶所有者、傭船者、荷送人その他の利害関係人に対して損害賠償責任を免れることができないとされ(旧商法705条1項)、また、船長は船舶所有者の指図に従ったときであっても船舶所有者以外の者に対しては前項に定めた責任を免れることができないとされていたが(旧商法705条2項)、この規定は改正商法では削除された。ただし、当該規定が削除されても、傭船者や荷送人は、運送人に対し契約上の債務不履行責任を追及できる(商法575条)。 


商法上の書類備置義務

船長は属具目録及び運送契約に関する書類を船中に備え置くことを要する(旧商法709条1項・改正710条)。


発航前の検査

船長は、発航前に次に掲げる事項を検査しなければならない。ただし、当該発航の前12時間以内に1.に掲げる事項のうち操舵設備に係る事項について発航前の検査をしたとき並びに当該発航の前24時間以内に1.(操舵設備に係る事項を除く。)、4.及び5.に掲げる事項について発航前の検査をしたときは、当該事項については、検査を行わないことができる(船員法8条、同施行規則2条の2)。


船体、機関及び排水設備、操舵設備、係船設備、揚錨設備、救命設備、無線設備その他の設備が整備されていること。

積載物の積付けが船舶の安定性をそこなう状況にないこと。

喫水の状況から判断して船舶の安全性が保たれていること。

燃料、食料、清水、医薬品、船用品その他の航海に必要な物品が積み込まれていること。

水路図誌その他の航海に必要な図誌が整備されていること。

気象通報、水路通報その他の航海に必要な情報が収集されており、それらの情報から判断して航海に支障がないこと。

航海に必要な員数の乗組員が乗り組んでおり、かつ、それらの乗組員の健康状態が良好であること。

前各号に掲げるもののほか、航海を支障なく成就するため必要な準備が整っていること。


航海の成就

船長は、航海の準備が終ったときは、遅滞なく発航し、かつ、必要がある場合を除いて、予定の航路を変更しないで到達港まで航行しなければならない(船員法9条)。


甲板上の指揮

船長は、船舶がを出入するとき、船舶が狭い水路を通過するときその他船舶に危険のおそれがあるときは、甲板にあって自ら船舶を指揮しなければならない(船員法10条)。


在船義務

船長は、やむを得ない場合を除いて、自己に代わって船舶を指揮すべき者にその職務を委任した後でなければ、荷物の船積及び旅客の乗込の時から荷物の陸揚及び旅客の上陸の時まで、自己の指揮する船舶を去ってはならない(船員法11条)。


航海当直の実施

以下の船舶以外の船舶の船長は、航海当直の編成及び航海当直を担当する者がとるべき措置について国土交通大臣が告示で定める基準に従って、適切に航海当直を実施するための措置をとらなければならない(船員法施行規則3条の5)。

平水区域を航行区域とする船舶

専ら平水区域又は船員法第一条第二項第三号の漁船の範囲を定める政令(昭和三十八年政令第五十四号)別表の海面において従業する漁船



巡視制度

旅客船(平水区域を航行区域とするものにあっては、国土交通大臣の指定する航路に就航するものに限る。)の船長は、船舶の火災の予防のための巡視制度を設けなければならない(船員法施行規則3条の6)。


旅客に対する避難の要領等の周知

船長は、避難の要領並びに救命胴衣の格納場所及び着用方法について、旅客の見やすい場所に掲示するほか、旅客に対して周知の徹底を図るため必要な措置を講じなければならない(船員法施行規則3条の10)。


船舶に危険がある場合における処置

船長は、自己の指揮する船舶に急迫した危険があるときは、人命の救助並びに船舶及び積荷の救助に必要な手段を尽くさなければならない(船員法12条)。

なお、旧船員法第12条では「船長は船舶に急迫した危険があるとき、人命、船舶および積荷の救助に必要な手段をつくし、かつ、旅客、海員、その他船内にあるものを去らせた後でなければ、自己の指揮する船舶を去ってはならない。
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